お前、名前はなんて言うんだ?
ルシファー生誕特別版2021【完結】
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「やぁ! 美香夜、いらっしゃい!」
「! お、お邪魔します!」
ソロモンに案内され、部屋に入ると、人懐っこい笑みでシメオンが出迎えてくれた。
「よく来てくれたね! ソロモンから突然君を部屋に連れてくると連絡をもらったときは、びっくりしたよ!」
「え、シメオンも知らなかったの?!」
驚きで少し声が大きくなってしまい、部屋に私の声が響く。
「はは、あーまぁ。善は急げ、ていうからね?」
ソロモンは悪びれもせず軽く肩をすくめると、清潔感溢れる品の良い椅子を引き、慣れた手つきで私を座らせてくれた。
「ありがとう」
男性にエスコートされることに慣れていない私は、少し恥ずかしくなりながら小さな声でお礼を伝える。
「どういたしまして」
そんな私を察してか、ソロモンもまたささやくように答えてくれた。
「はい。どうぞ」
カチャン、と静かに置かれたティーカップの中を覗くと、エーゲ海のような美しい世界が広がっていた。
ホカホカと立った湯気は、ハーブティーに近い爽やかな香りを運んでくれる。
「うわぁ! すっごく良い香り! 頭がすっきりして、それでいていつまでも包まれていたいような……」
「そう言ってくれて嬉しいよ。今日は天界から送ってもらったアンゲロスティーを入れてみたんだ」
シメオンがソロモンにもそっとティーカップを置きながら、嬉しそうに説明をしてくれる。
「ありがとう、シメオン。気を遣わせてしまったね」
「気にしないでくれ。僕も久々に来客が来てくれて嬉しいしね。 あぁ、美香夜も気にせず温かいうちに飲んで」
「ありがとう! それではお言葉に甘えて……頂きます!」
ワクワクしながら一口飲むと、香りからイメージしていた味と大きく違った。
「うわっ!! すごい味!」
「ははは! アンゲロスティーでそんなに表情コロコロ変わる人、初めてだよ!」
シメオンが口元に手を押さえながら楽しそうに笑う。
「あ、ご、ごめん! 決してまずかったわけじゃないよ! 想像していた味と違って、びっくりしちゃって!」
「謝ることはないよ。とても新鮮な反応だったから、つい面白くって」
「確かに俺も最初頂いたとき、頭が混乱しちゃったよ。人間界にはここまで情報量の多い茶葉はないからね」
ソロモンもゆっくりとティーカップを口につけ、味をたしなむ。
そしてちらりと横目でシメオンが座ったことを確認すると、私に視線を移した。
「突然連れてきてしまってごめんね。さっきも伝えたとおり、君に協力してほしいことがあるんだ」
「協力?」
「そう。シメオンにも相談に乗ってもらったんだけど、ルシファーが正常な判断ができない状況にまず追い込んで、衝動で決断するシチュエーションを作りたいんだ」
「せ、正常に判断できない……? 追い込む……?」
ソロモンの言っていることが理解できず、オウム返しに繰り返す。
「ただ、そんな状態に追い込むなんて至難の業だから、実は今回の計画に彼をよく知るシメオンと、もう一人強力な助っ人の力を借りることになったんだ」
「は、はぁ……」
「あと足りないのは……彼を突き動かす大事な事柄」
ソロモンは肩ひじをテーブルに乗せ、頬づえをついて私にほほ笑む。
「そこで、君だ」
「わ、私……?」
その色気のあるしぐさにあてられながらも、真意がわからず聞き返す。
ソロモンはゆっくりとティーカップを回し、静かに照明の光を浴びて輝く世界をじっと見つめていた。
「……という計画なんだけど」
ソロモンが話を終えても、私は口をあんぐり開けたままフリーズしていた。
「……彼をだますようにはなってしまうと思う。もし君が嫌だったらこの計画は止める」
ソロモンはそんな私の様子を気にかけてか、小さな子どもをなだめるような優しい声色で聞いてくれた。
「ただ、この計画がうまくいけば、きっと二人にとっていいきっかけになるはずなんだ」
「……」
私はシメオンに助けを求めるように、視線を送る。
シメオンは困った、という風に眉を下げる。
「僕も最初に聞いたとき、どうかなとは思ったんだ。誕生日が近いのに、彼を一度傷つけるなんて、一歩間違えれば信頼関係にひびが入るからね」
ただ、とシメオンは続ける。
真剣みを帯びた瞳に、私は目を離せなくなる。
「僕たちが1分に感じていることも、君たち人間には1年経っている、なんてよくあることだ。
ルシファーは頑固な性格だ。
そんな彼が気付くころには、「遅すぎる」結果になっているだろう」
力強い声色から感じる、にじんだ深い悲しみ。
「美香夜と話しているルシファーは、本当に良い表情になった。今まで見たことがないくらいに。だから、君たち二人には、少しでも長く幸せを感じてほしいんだ」
誕生日プレゼントにしては、あまりにも刺激的すぎる計画だけど。
彼らは決して、ルシファーをおとしめようなんて思っていない。
心から認めてもらっている関係性に改めて深く感謝し、私は意を決するようにアンゲロスティーを飲み干す。
「わかりました。私にも、協力させてください」
口の中に広がるアンゲロスティーは、パクチーのような独特な強い苦味だが、飲み込むと舌が痺れる程の甘い蜂蜜みたいな味だった。
「! お、お邪魔します!」
ソロモンに案内され、部屋に入ると、人懐っこい笑みでシメオンが出迎えてくれた。
「よく来てくれたね! ソロモンから突然君を部屋に連れてくると連絡をもらったときは、びっくりしたよ!」
「え、シメオンも知らなかったの?!」
驚きで少し声が大きくなってしまい、部屋に私の声が響く。
「はは、あーまぁ。善は急げ、ていうからね?」
ソロモンは悪びれもせず軽く肩をすくめると、清潔感溢れる品の良い椅子を引き、慣れた手つきで私を座らせてくれた。
「ありがとう」
男性にエスコートされることに慣れていない私は、少し恥ずかしくなりながら小さな声でお礼を伝える。
「どういたしまして」
そんな私を察してか、ソロモンもまたささやくように答えてくれた。
「はい。どうぞ」
カチャン、と静かに置かれたティーカップの中を覗くと、エーゲ海のような美しい世界が広がっていた。
ホカホカと立った湯気は、ハーブティーに近い爽やかな香りを運んでくれる。
「うわぁ! すっごく良い香り! 頭がすっきりして、それでいていつまでも包まれていたいような……」
「そう言ってくれて嬉しいよ。今日は天界から送ってもらったアンゲロスティーを入れてみたんだ」
シメオンがソロモンにもそっとティーカップを置きながら、嬉しそうに説明をしてくれる。
「ありがとう、シメオン。気を遣わせてしまったね」
「気にしないでくれ。僕も久々に来客が来てくれて嬉しいしね。 あぁ、美香夜も気にせず温かいうちに飲んで」
「ありがとう! それではお言葉に甘えて……頂きます!」
ワクワクしながら一口飲むと、香りからイメージしていた味と大きく違った。
「うわっ!! すごい味!」
「ははは! アンゲロスティーでそんなに表情コロコロ変わる人、初めてだよ!」
シメオンが口元に手を押さえながら楽しそうに笑う。
「あ、ご、ごめん! 決してまずかったわけじゃないよ! 想像していた味と違って、びっくりしちゃって!」
「謝ることはないよ。とても新鮮な反応だったから、つい面白くって」
「確かに俺も最初頂いたとき、頭が混乱しちゃったよ。人間界にはここまで情報量の多い茶葉はないからね」
ソロモンもゆっくりとティーカップを口につけ、味をたしなむ。
そしてちらりと横目でシメオンが座ったことを確認すると、私に視線を移した。
「突然連れてきてしまってごめんね。さっきも伝えたとおり、君に協力してほしいことがあるんだ」
「協力?」
「そう。シメオンにも相談に乗ってもらったんだけど、ルシファーが正常な判断ができない状況にまず追い込んで、衝動で決断するシチュエーションを作りたいんだ」
「せ、正常に判断できない……? 追い込む……?」
ソロモンの言っていることが理解できず、オウム返しに繰り返す。
「ただ、そんな状態に追い込むなんて至難の業だから、実は今回の計画に彼をよく知るシメオンと、もう一人強力な助っ人の力を借りることになったんだ」
「は、はぁ……」
「あと足りないのは……彼を突き動かす大事な事柄」
ソロモンは肩ひじをテーブルに乗せ、頬づえをついて私にほほ笑む。
「そこで、君だ」
「わ、私……?」
その色気のあるしぐさにあてられながらも、真意がわからず聞き返す。
ソロモンはゆっくりとティーカップを回し、静かに照明の光を浴びて輝く世界をじっと見つめていた。
「……という計画なんだけど」
ソロモンが話を終えても、私は口をあんぐり開けたままフリーズしていた。
「……彼をだますようにはなってしまうと思う。もし君が嫌だったらこの計画は止める」
ソロモンはそんな私の様子を気にかけてか、小さな子どもをなだめるような優しい声色で聞いてくれた。
「ただ、この計画がうまくいけば、きっと二人にとっていいきっかけになるはずなんだ」
「……」
私はシメオンに助けを求めるように、視線を送る。
シメオンは困った、という風に眉を下げる。
「僕も最初に聞いたとき、どうかなとは思ったんだ。誕生日が近いのに、彼を一度傷つけるなんて、一歩間違えれば信頼関係にひびが入るからね」
ただ、とシメオンは続ける。
真剣みを帯びた瞳に、私は目を離せなくなる。
「僕たちが1分に感じていることも、君たち人間には1年経っている、なんてよくあることだ。
ルシファーは頑固な性格だ。
そんな彼が気付くころには、「遅すぎる」結果になっているだろう」
力強い声色から感じる、にじんだ深い悲しみ。
「美香夜と話しているルシファーは、本当に良い表情になった。今まで見たことがないくらいに。だから、君たち二人には、少しでも長く幸せを感じてほしいんだ」
誕生日プレゼントにしては、あまりにも刺激的すぎる計画だけど。
彼らは決して、ルシファーをおとしめようなんて思っていない。
心から認めてもらっている関係性に改めて深く感謝し、私は意を決するようにアンゲロスティーを飲み干す。
「わかりました。私にも、協力させてください」
口の中に広がるアンゲロスティーは、パクチーのような独特な強い苦味だが、飲み込むと舌が痺れる程の甘い蜂蜜みたいな味だった。