お前、名前はなんて言うんだ?
ルシファー生誕特別版2021【完結】
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「……久しぶりに、消耗しすぎたな……」
ルシファーの搬送後、重たい体を無理やり動かして魔王城を出ようと扉の取っ手を握る。
「ルシファーのサプライズ、どうだったかい?」
音もなく現れる、次期魔王。
そして、いつか使役したい俺の研究対象。
とっさに俺は返事をするべきだ、と判断してくるりとディアボロの方へと向き直る。
「ディアボロ!君の協力のお陰で二人の絆が深まったようだ。だが、少し人間界でアクシデントがあったようで、ルシファーが傷ついてしまった……。俺がいながらも、申し訳ない」
俺は深々と謝罪する。
「いいや。そんな謝らなくていい。頭を上げてくれ」
ディアボロは俺の肩を優しく上に押し上げ、顔を上げさせる。
普段目を合わせないようにしているが、この時ばかりは油断した。
彼の目を、見てしまった。
「ソロモン。君の目的は、果たせたかい?」
「……いいや。目的は達成できなかった」
口が勝手に動く。
「正直、彼女がルシファーと契約をしたことを知った時から計画していたんだ。彼女を交渉材料にすれば、きっと俺と契約すると」
まずい。
背筋に冷や汗が流れる。
俺の視線が落ち着かなくなる。
「そのまま、続けて?」
「……しかし一方で彼女がルシファーに取られてしまうことが怖かった。だから、少し計画を変更して、自然と互いの記憶からかき消すよう呪いをかけたんだ」
ディアボロは笑みを浮かべたままだ。
「あのままうまくいけば、彼女の記憶を書き換えて傍にいるつもりだった。
そのはずだったのに……」
俺は動揺して口元に手を押さえる。
しかしそんな小さな抵抗も虚しく、ディアボロが俺の手を降ろす。
「取引先が、彼女に惹かれてしまった。ほんの一瞬の本性で、彼女の違和感を引き出してしまい、呪いが解かれてしまった。ましてや、ルシファーの力を人間界で使うなど……」
俺は勝手に動く口を放置して、このままディアボロの様子を観察しつつ次なる手を考えていた。
「計画が、台無しだ」
「そうか。話してくれて、ありがとう」
トン、と肩を叩かれると、俺の体は解放されたかのように軽くなる。
とっさに呪文を唱える準備をしたが、ディアボロが俺の口を人差し指で塞ぐ。
「!!」
「君が話してくれたこと、大体わかっていたよ。そして、君が動いた理由も、あらかた、ね。
だからといって、君をどうこうするつもりはない。
ソロモン、君は魔界の大切な留学生だから」
まだ笑みを崩さないディアボロに、ぞっとする。
距離を取ればいいのに、体が動かない辺り、まだ解かれてなかったのだろう。
「魔力を消耗しきっているのだろう? 普段の君なら、こんな隙を見せないからな」
そして、ふ、と短く息を吐く。
「ソロモン。君の動機はわかる。少しばかり、君の計画が成功していれば……と思う自分もいる」
だがな、と区切ったディアボロは、その目を悪魔の目に変えた。
「やりすぎると、身を亡ぼすよ? ここは、魔界だからね」
喉元に、長く鋭い爪が突き当てられる。
いつでもできるのだ、と。
「君の研究心は高く買っているんだ。だからこそ、次の行動は俺を幻滅させないでくれ。
もし……、また、俺の身内を傷つけるようなら」
そのまま爪が体を這い、心臓の位置へ止まる。
「俺も考えなければならない」
「……それは、彼女も入っているのかな?」
悪魔に弱いところを見せてはいけない。
俺は過去の経験から必死に悪態をつく。
「ああ。そうだ」
彼はにこりと微笑み、爪をひっこめた。
「俺は君がルシファー目的だけで動いたように思えなかったのだよ。今回の行動はあまりにも、慎重すぎて、人を介しすぎた」
「……」
「それに、取引先、などと言っている割には、最後の魔力を振り絞って体を治していたじゃないか」
「……?! なぜ、それ、を」
「君が力尽きているのは、ルシファーの搬送でも、彼女の魔力のはねっ返りでもない。人体に作用する魔力を使ったからだ」
「……なるほどな。 バルバトスを寄こしたのも、君だったんだね」
動けない俺を反対に向かせると、ディアボロは体を支えるように自分の肩を俺の肩に組ませた。
「?! なにを」
「何って……。 君を送り届けるんだよ。メゾン煉獄へ」
一連の流れがリセットされたかのように、彼は今までどおりに接してくる。
「そんな体じゃ、道中ほかの悪魔に食われてしまう。 俺が一緒なら大丈夫だろう」
この気配と話の流れからして、今、ではないらしい。
確かにこのまま放置されてしまった方が不利だと判断し、俺は無言で彼に体を預けた。
「彼女が一番、悪魔かもしれないね」
~Fin~
ルシファーの搬送後、重たい体を無理やり動かして魔王城を出ようと扉の取っ手を握る。
「ルシファーのサプライズ、どうだったかい?」
音もなく現れる、次期魔王。
そして、いつか使役したい俺の研究対象。
とっさに俺は返事をするべきだ、と判断してくるりとディアボロの方へと向き直る。
「ディアボロ!君の協力のお陰で二人の絆が深まったようだ。だが、少し人間界でアクシデントがあったようで、ルシファーが傷ついてしまった……。俺がいながらも、申し訳ない」
俺は深々と謝罪する。
「いいや。そんな謝らなくていい。頭を上げてくれ」
ディアボロは俺の肩を優しく上に押し上げ、顔を上げさせる。
普段目を合わせないようにしているが、この時ばかりは油断した。
彼の目を、見てしまった。
「ソロモン。君の目的は、果たせたかい?」
「……いいや。目的は達成できなかった」
口が勝手に動く。
「正直、彼女がルシファーと契約をしたことを知った時から計画していたんだ。彼女を交渉材料にすれば、きっと俺と契約すると」
まずい。
背筋に冷や汗が流れる。
俺の視線が落ち着かなくなる。
「そのまま、続けて?」
「……しかし一方で彼女がルシファーに取られてしまうことが怖かった。だから、少し計画を変更して、自然と互いの記憶からかき消すよう呪いをかけたんだ」
ディアボロは笑みを浮かべたままだ。
「あのままうまくいけば、彼女の記憶を書き換えて傍にいるつもりだった。
そのはずだったのに……」
俺は動揺して口元に手を押さえる。
しかしそんな小さな抵抗も虚しく、ディアボロが俺の手を降ろす。
「取引先が、彼女に惹かれてしまった。ほんの一瞬の本性で、彼女の違和感を引き出してしまい、呪いが解かれてしまった。ましてや、ルシファーの力を人間界で使うなど……」
俺は勝手に動く口を放置して、このままディアボロの様子を観察しつつ次なる手を考えていた。
「計画が、台無しだ」
「そうか。話してくれて、ありがとう」
トン、と肩を叩かれると、俺の体は解放されたかのように軽くなる。
とっさに呪文を唱える準備をしたが、ディアボロが俺の口を人差し指で塞ぐ。
「!!」
「君が話してくれたこと、大体わかっていたよ。そして、君が動いた理由も、あらかた、ね。
だからといって、君をどうこうするつもりはない。
ソロモン、君は魔界の大切な留学生だから」
まだ笑みを崩さないディアボロに、ぞっとする。
距離を取ればいいのに、体が動かない辺り、まだ解かれてなかったのだろう。
「魔力を消耗しきっているのだろう? 普段の君なら、こんな隙を見せないからな」
そして、ふ、と短く息を吐く。
「ソロモン。君の動機はわかる。少しばかり、君の計画が成功していれば……と思う自分もいる」
だがな、と区切ったディアボロは、その目を悪魔の目に変えた。
「やりすぎると、身を亡ぼすよ? ここは、魔界だからね」
喉元に、長く鋭い爪が突き当てられる。
いつでもできるのだ、と。
「君の研究心は高く買っているんだ。だからこそ、次の行動は俺を幻滅させないでくれ。
もし……、また、俺の身内を傷つけるようなら」
そのまま爪が体を這い、心臓の位置へ止まる。
「俺も考えなければならない」
「……それは、彼女も入っているのかな?」
悪魔に弱いところを見せてはいけない。
俺は過去の経験から必死に悪態をつく。
「ああ。そうだ」
彼はにこりと微笑み、爪をひっこめた。
「俺は君がルシファー目的だけで動いたように思えなかったのだよ。今回の行動はあまりにも、慎重すぎて、人を介しすぎた」
「……」
「それに、取引先、などと言っている割には、最後の魔力を振り絞って体を治していたじゃないか」
「……?! なぜ、それ、を」
「君が力尽きているのは、ルシファーの搬送でも、彼女の魔力のはねっ返りでもない。人体に作用する魔力を使ったからだ」
「……なるほどな。 バルバトスを寄こしたのも、君だったんだね」
動けない俺を反対に向かせると、ディアボロは体を支えるように自分の肩を俺の肩に組ませた。
「?! なにを」
「何って……。 君を送り届けるんだよ。メゾン煉獄へ」
一連の流れがリセットされたかのように、彼は今までどおりに接してくる。
「そんな体じゃ、道中ほかの悪魔に食われてしまう。 俺が一緒なら大丈夫だろう」
この気配と話の流れからして、今、ではないらしい。
確かにこのまま放置されてしまった方が不利だと判断し、俺は無言で彼に体を預けた。
「彼女が一番、悪魔かもしれないね」
~Fin~
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