お前、名前はなんて言うんだ?
ルシファー生誕特別版2021【完結】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「その汚らしい手を放せ。下等な生き物風情が」
凛としていて、背筋が反射的に伸びるような重低音。
その声はとても冷たく、残忍さを感じる。
しかし。
その声の主はどうしてこんなにも温かく、包み込むように私を抱きしめてくれるのか。
私は縋るように、声の正体の名前を必死に呼ぶ。
「……ルシファー!!」
ルシファーは私をすぐさま後ろへ隠すと、オスカーさんと対峙する。
「……ケッ。本家様ご登場ってか」
オスカーさんが今まで見せたことのない、卑屈な笑みを浮かべる。
二人の異様な雰囲気に私も飲み込まれ、ごくりと大きな音を立てて唾を飲みこんだ。
「わざわざ下等な生き物が棲みつく人間界に足をお運びいただき、誠にありがとうございます。高等な……堕天使様?」
挑発するように深々とお辞儀をするオスカーさん。
一触即発な雰囲気に、息苦しくなる。
助けを求めるようにルシファーを見るも、彼は面白そうににやりと口元を歪めていた。
「ほう……。そういうことだったのか。なるほど。大方この話が読めてきた」
「へぇ。この姿でも分かるんですね。さすがは高等な悪魔様だなー」
オスカーさんがケラっと笑いながら両肘を曲げ、手のひらを外側に向けて呆れた素振りをする。
「耳を塞げ」
「え?」
訓練されてしまったもので、頭で理解するより早く私は自分の両耳を塞ぐ。
すると、ルシファーがすかさずパチン、と指を鳴らした。
ドゥン……。
鼓膜が破れそうな重低音が私の鼓膜を叩き、空間が歪む感覚に襲われる。
びっくりして辺りを見回すと、まるで写真のように、人々も、川も、静かに揺らめいていた木の葉も動きを止めていた。
「それで?お前の望みはなんだ」
私が言葉も出ずに口をパクパクとさせていると、そんな私にお構いなくオスカーさんに話し続ける。
「俺の望み?んなもん、この状況で言ってどうしてくれるってんです」
オスカーさんは全く動じない。
むしろ、当たり前かのように後頭部の後ろで腕を組み、飄々としている。
「お前とは話が合いそうだ」
その様子に満足げに笑うと、ルシファーがオスカーさんに向き直った。
「言っておきますけど。二対一の状況、しかも水の合わない場所で満足に力も出せないあんたが、俺たちに勝算あると思いますか?」
「……その口、邪魔だな」
ルシファーがオスカーさんに向かって手のひらを向ける。
瞬間、真黒い薔薇のツタのようなものが、凄まじい勢いでオスカーさんの首元へめがけて飛んでいく。
「……ッ!」
その先が恐ろしくて無意識に目を閉じる。
しかし、恐れていたような音は聞こえず、パラパラと乾いた粉のような音が聞こえてきた。
「……ここまで計算済みか」
ゆっくりと目を開けると、禍々しい薔薇のツタはオスカーさんの鼻先で止まり、徐々に黒い砂と化して床に落ちていく。
「そりゃーそうっすよ。ここまでやるんすから」
心底見下しているような瞳。
もう、あの時感じていた温かみが無く、
今目の前にいる彼は、悪魔よりも悪魔に感じた。
「俺さ。本当はしたいことあったんすけど」
両手をポケットに入れて、ルシファーから視線をずらす。
声に反応して覗き込んだ私と視線が合う。
「残念だったなぁ。あと少し、だったんだけど」
軽薄そうに笑うも、そのすべてに隙が無い。
常にけん制しつつ、心のない笑みを浮かべていた。
「どうします?このままドンパチしますか?」
「そうだな。かなり」
ルシファーは静かに目を閉じると、カッと瞳を開いた。
「目障りだ」
まずい。
この目は。
「二人とも、いい加減にしなさい!!」
パリン、とガラスが割れるような音が響いた。
一瞬の虚空。
空気が割れ、音が割れ、……まるで、空間が割れたような、不思議な感覚。
ハッ、と気付くと、ルシファーは頭を抱え、オスカーさんは胸の辺りを苦しそうに握りしめていた。
「……、ば、馬鹿じゃねぇの……。契約した悪魔の力をここでフル活用するなんてよ……」
ルシファーが膝から崩れ落ちた。
「はぁ……はぁ……」
「ルシファー?!」
頭が真っ白になり、急いでルシファーの上体を支える。
少し目が虚ろなルシファーが、視線をさ迷わせたあと、私の頭を引き寄せる。
「お前……。あとで説教だ」
少し(いや、かなり?)お怒り気味な声に血の気が引いていく。
そしてカク、とそのまま床に倒れた。
「ルシファー?!ルシファー!!」
なんとか頭は支えられたものの、成人男性の体を支えることはできず、どさっと痛そうな音を立てて床に倒れた。
「る、る、る……!!」
勢い良く肩を揺さぶるも、反応はない。
「いやぁ……。こりゃ想定外だ。今回はあきらめた方がいいかなぁ……」
掠れた声でオスカーさんが笑うも、口元から、赤い液体が流れだしている。
「今の力……本当にあんただけで使ったの?」
その声に、私はルシファーの容態に慌てふためいていたので、反応できなかった。
「ハッ……。聞いちゃいねぇ。馬鹿馬鹿しい……。命いくつあってもたんねぇよ」
オスカーさんは吐き捨てるように呟く。
「俺はもうこれで幕引きだ!! 帰るぜ!!」
上に向かって叫ばれた声に振り向き視線をやると、オスカーさんがふらふらと立ち上がった。
「おい。変わった女。その力、いずれ手に入れてやる。それまで、生き延びてろよ」
そのまま胸を押さえながら、細い路地の中へと消えていった。
オスカーさんの姿が消えた途端、写真から解放されたかのようにガヤガヤとにぎわう声が響き渡り、街中の人々が歩き出した。
「……」
頭に何も入ってこない。
少し放心状態になったあと、ハッと周りの目に気が付き、その視線を追う。
「る、ルシファー……!」
慌ててルシファーの頭を膝の上に乗せ、口元に耳を近づけると、わずかに息の音が聞こえた。
「よ、よかった……。まだ息がある……」
仕組みはわからないが、今のルシファーは人間の姿になっている。
このままだと……。
待って……。
嫌だ……。
怖い……!!
目をぎゅっと閉じると、とめどなく涙が頬を伝う。
神様に祈るように、ルシファーの冷たくなった両手を握った。
「お困りかな?」
凛としていて、背筋が反射的に伸びるような重低音。
その声はとても冷たく、残忍さを感じる。
しかし。
その声の主はどうしてこんなにも温かく、包み込むように私を抱きしめてくれるのか。
私は縋るように、声の正体の名前を必死に呼ぶ。
「……ルシファー!!」
ルシファーは私をすぐさま後ろへ隠すと、オスカーさんと対峙する。
「……ケッ。本家様ご登場ってか」
オスカーさんが今まで見せたことのない、卑屈な笑みを浮かべる。
二人の異様な雰囲気に私も飲み込まれ、ごくりと大きな音を立てて唾を飲みこんだ。
「わざわざ下等な生き物が棲みつく人間界に足をお運びいただき、誠にありがとうございます。高等な……堕天使様?」
挑発するように深々とお辞儀をするオスカーさん。
一触即発な雰囲気に、息苦しくなる。
助けを求めるようにルシファーを見るも、彼は面白そうににやりと口元を歪めていた。
「ほう……。そういうことだったのか。なるほど。大方この話が読めてきた」
「へぇ。この姿でも分かるんですね。さすがは高等な悪魔様だなー」
オスカーさんがケラっと笑いながら両肘を曲げ、手のひらを外側に向けて呆れた素振りをする。
「耳を塞げ」
「え?」
訓練されてしまったもので、頭で理解するより早く私は自分の両耳を塞ぐ。
すると、ルシファーがすかさずパチン、と指を鳴らした。
ドゥン……。
鼓膜が破れそうな重低音が私の鼓膜を叩き、空間が歪む感覚に襲われる。
びっくりして辺りを見回すと、まるで写真のように、人々も、川も、静かに揺らめいていた木の葉も動きを止めていた。
「それで?お前の望みはなんだ」
私が言葉も出ずに口をパクパクとさせていると、そんな私にお構いなくオスカーさんに話し続ける。
「俺の望み?んなもん、この状況で言ってどうしてくれるってんです」
オスカーさんは全く動じない。
むしろ、当たり前かのように後頭部の後ろで腕を組み、飄々としている。
「お前とは話が合いそうだ」
その様子に満足げに笑うと、ルシファーがオスカーさんに向き直った。
「言っておきますけど。二対一の状況、しかも水の合わない場所で満足に力も出せないあんたが、俺たちに勝算あると思いますか?」
「……その口、邪魔だな」
ルシファーがオスカーさんに向かって手のひらを向ける。
瞬間、真黒い薔薇のツタのようなものが、凄まじい勢いでオスカーさんの首元へめがけて飛んでいく。
「……ッ!」
その先が恐ろしくて無意識に目を閉じる。
しかし、恐れていたような音は聞こえず、パラパラと乾いた粉のような音が聞こえてきた。
「……ここまで計算済みか」
ゆっくりと目を開けると、禍々しい薔薇のツタはオスカーさんの鼻先で止まり、徐々に黒い砂と化して床に落ちていく。
「そりゃーそうっすよ。ここまでやるんすから」
心底見下しているような瞳。
もう、あの時感じていた温かみが無く、
今目の前にいる彼は、悪魔よりも悪魔に感じた。
「俺さ。本当はしたいことあったんすけど」
両手をポケットに入れて、ルシファーから視線をずらす。
声に反応して覗き込んだ私と視線が合う。
「残念だったなぁ。あと少し、だったんだけど」
軽薄そうに笑うも、そのすべてに隙が無い。
常にけん制しつつ、心のない笑みを浮かべていた。
「どうします?このままドンパチしますか?」
「そうだな。かなり」
ルシファーは静かに目を閉じると、カッと瞳を開いた。
「目障りだ」
まずい。
この目は。
「二人とも、いい加減にしなさい!!」
パリン、とガラスが割れるような音が響いた。
一瞬の虚空。
空気が割れ、音が割れ、……まるで、空間が割れたような、不思議な感覚。
ハッ、と気付くと、ルシファーは頭を抱え、オスカーさんは胸の辺りを苦しそうに握りしめていた。
「……、ば、馬鹿じゃねぇの……。契約した悪魔の力をここでフル活用するなんてよ……」
ルシファーが膝から崩れ落ちた。
「はぁ……はぁ……」
「ルシファー?!」
頭が真っ白になり、急いでルシファーの上体を支える。
少し目が虚ろなルシファーが、視線をさ迷わせたあと、私の頭を引き寄せる。
「お前……。あとで説教だ」
少し(いや、かなり?)お怒り気味な声に血の気が引いていく。
そしてカク、とそのまま床に倒れた。
「ルシファー?!ルシファー!!」
なんとか頭は支えられたものの、成人男性の体を支えることはできず、どさっと痛そうな音を立てて床に倒れた。
「る、る、る……!!」
勢い良く肩を揺さぶるも、反応はない。
「いやぁ……。こりゃ想定外だ。今回はあきらめた方がいいかなぁ……」
掠れた声でオスカーさんが笑うも、口元から、赤い液体が流れだしている。
「今の力……本当にあんただけで使ったの?」
その声に、私はルシファーの容態に慌てふためいていたので、反応できなかった。
「ハッ……。聞いちゃいねぇ。馬鹿馬鹿しい……。命いくつあってもたんねぇよ」
オスカーさんは吐き捨てるように呟く。
「俺はもうこれで幕引きだ!! 帰るぜ!!」
上に向かって叫ばれた声に振り向き視線をやると、オスカーさんがふらふらと立ち上がった。
「おい。変わった女。その力、いずれ手に入れてやる。それまで、生き延びてろよ」
そのまま胸を押さえながら、細い路地の中へと消えていった。
オスカーさんの姿が消えた途端、写真から解放されたかのようにガヤガヤとにぎわう声が響き渡り、街中の人々が歩き出した。
「……」
頭に何も入ってこない。
少し放心状態になったあと、ハッと周りの目に気が付き、その視線を追う。
「る、ルシファー……!」
慌ててルシファーの頭を膝の上に乗せ、口元に耳を近づけると、わずかに息の音が聞こえた。
「よ、よかった……。まだ息がある……」
仕組みはわからないが、今のルシファーは人間の姿になっている。
このままだと……。
待って……。
嫌だ……。
怖い……!!
目をぎゅっと閉じると、とめどなく涙が頬を伝う。
神様に祈るように、ルシファーの冷たくなった両手を握った。
「お困りかな?」