お前、名前はなんて言うんだ?
夢の始まり
「お前の名前は?」
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
びくっと、私の全身が固まる。
勢い良く振り返ると、そこには湯上りした様子のルシファーが立っていた。
「ルシファー……」
ベールがつぶやく。
「ふぇえ?! る、ルシファー?! い、いつの間に?!」
恥ずかしさがどんどん増してきて、顔に血が上るのを感じる。
離れようと試みるも、むしろベールは抱きしめる力を強めた。
「べ、ベール……?」
「邪魔して悪かったな。
すぐ立ち去るから、続けてくれ」
口元を歪め、からかう口調で喋ってはいるが、どこかその声色に棘を感じた。
「ルシファー……?」
「ああ。 風呂上りだろうから、食堂で水でも飲んできたらどうだ?」
「そうだな。 お前に言われなくても、そうするつもりだ」
数秒、ルシファーとベールの間に重苦しい空気が流れる。
私も言葉を失ってしまい、気まずくてルシファーから目を逸してしまった。
そして彼はベールと私の隣をすり抜け、奥の扉へ入っていった。
私に1度も目をくれることもなく。
ルシファーが扉に入ったことを確認すると、ベールは抱きしめる力を弱め、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「すまない。 痛くなかったか?」
その声に、私は首を左右に振った。
「ううん、大丈夫……」
なんでベールは抱きしめたのか。
そして、ルシファーが声を掛けた途端、なぜ力を強めたのか。
疑問が残る一方だが、今のこの空気で聞くには少しはばかられた。
「立ち話が長くなってしまったな」
ベールの瞳が一瞬揺らぐ。
「湯冷めしてしまうだろうから、なにか温かいものでも飲むといい」
どこか苦しそうな笑顔で、それを誤魔化すように私の頭に大きな掌を乗せた。
「あ、う、うん……そうするね! ベールも私の話に付き合ってくれてありがとう!」
「そんなのお互い様だ。 ああ、そうだ。 また美味しそうな店を見つけたから、今度の放課後、食べに行かないか?」
いつもの調子に戻り、よだれを垂らすベール。
私はホッと安堵し、普段の調子で返した。
「うん! すっごく楽しみにしてる!」
ベールも微笑みながら、手を左右に振り、私に背を向けて部屋へと戻っていった。
「……なん、だったんだろう」
少し歩いて気持ちが落ち着いてきたのか、先程の記憶が蘇ってくる。
「……いや、でも、あれだよね、外国のドラマとかだと、挨拶にハグをするなんて普通みたいだし……あれも悪魔流のなにか、なんだよね」
あの時のことを思い出し、なぜか胸が締め付けられるような、背徳感に近い謎の感覚に襲われ、言い訳のような独り言が溢れ出て来る。
「べ、別にベールが私に特別な感情があるとかではなくて、ベールは素直だからスキンシップも素直っていうか……。
アスモなんか普通に抱き着いてくるわけだし」
「そ、そうだよ。
特別な理由とかじゃない。
シャンプーの良い香りで食欲が刺激されたとか言っていたし、もしかしたら私を頭からがぶりと食べるつもりだったと「なにぶつぶつ言ってるんだ?」
俯いて歩く私の額に、熱い何かが当たる。
「あっつう?!」
「下を向いて独り言とは。一瞬レヴィかと思ったぞ?」
熱の帯びた額をかばうように両手で隠し犯人を確かめると、挑発的な視線を送るルシファーの姿があった。
両手には湯気の立つコップがあり、私の額にあたったのは、どうやらそれのようだ。
「い、いきなりびっくりするじゃない! いるなら声をかけてくれればいいのに!」
「お前が前も見ず、独りで会話してる方が悪い。
正直、悪魔の俺でも怖かったぞ」
と、顔を左右に振りながら困り顔で溜息を吐いた。
とはいいつつも、絶対からかってる……。
「な、なによ。 そんな日があってもいいじゃない」
「そんな日に出くわした俺が可哀そうだな」
肩をすくめるその彼の様子から、先程の出来事は全く気にしていない、といったふうに感じた。
「それはそうと、これを取りに来たんだろう?」
ルシファーが右手に持つコップを私の目の前に差し出した。
嗅いだことのある、懐かしい良い香りが、私の鼻孔をくすぐる。
「良い匂い……。 牛乳みたいな匂いする……」
「まさしくそうだが?」
コップを受け取った後、びっくりしてルシファーを見る。
「……へ?」
その様子を楽しそうに眺めながら、ルシファーが左手のコップを少し上げた。
「この間、人間界の「牛乳」というものを温めたものが安眠効果にいいという話ししていただろう? 大掃除を始める前に、少し人間界に入用があったものでな。 そのついで、だ。」
言いながらも、香りを楽しむルシファー。
「……どうだ。 時間があるなら、俺の部屋で少し温まらないか。 寝るまでにまだ少しばかり暇だろう」
その艶めかしい薔薇のような深紅の瞳とは裏腹に、優しい声色を向けられ、私は素直にこくんとうなずいた。
勢い良く振り返ると、そこには湯上りした様子のルシファーが立っていた。
「ルシファー……」
ベールがつぶやく。
「ふぇえ?! る、ルシファー?! い、いつの間に?!」
恥ずかしさがどんどん増してきて、顔に血が上るのを感じる。
離れようと試みるも、むしろベールは抱きしめる力を強めた。
「べ、ベール……?」
「邪魔して悪かったな。
すぐ立ち去るから、続けてくれ」
口元を歪め、からかう口調で喋ってはいるが、どこかその声色に棘を感じた。
「ルシファー……?」
「ああ。 風呂上りだろうから、食堂で水でも飲んできたらどうだ?」
「そうだな。 お前に言われなくても、そうするつもりだ」
数秒、ルシファーとベールの間に重苦しい空気が流れる。
私も言葉を失ってしまい、気まずくてルシファーから目を逸してしまった。
そして彼はベールと私の隣をすり抜け、奥の扉へ入っていった。
私に1度も目をくれることもなく。
ルシファーが扉に入ったことを確認すると、ベールは抱きしめる力を弱め、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「すまない。 痛くなかったか?」
その声に、私は首を左右に振った。
「ううん、大丈夫……」
なんでベールは抱きしめたのか。
そして、ルシファーが声を掛けた途端、なぜ力を強めたのか。
疑問が残る一方だが、今のこの空気で聞くには少しはばかられた。
「立ち話が長くなってしまったな」
ベールの瞳が一瞬揺らぐ。
「湯冷めしてしまうだろうから、なにか温かいものでも飲むといい」
どこか苦しそうな笑顔で、それを誤魔化すように私の頭に大きな掌を乗せた。
「あ、う、うん……そうするね! ベールも私の話に付き合ってくれてありがとう!」
「そんなのお互い様だ。 ああ、そうだ。 また美味しそうな店を見つけたから、今度の放課後、食べに行かないか?」
いつもの調子に戻り、よだれを垂らすベール。
私はホッと安堵し、普段の調子で返した。
「うん! すっごく楽しみにしてる!」
ベールも微笑みながら、手を左右に振り、私に背を向けて部屋へと戻っていった。
「……なん、だったんだろう」
少し歩いて気持ちが落ち着いてきたのか、先程の記憶が蘇ってくる。
「……いや、でも、あれだよね、外国のドラマとかだと、挨拶にハグをするなんて普通みたいだし……あれも悪魔流のなにか、なんだよね」
あの時のことを思い出し、なぜか胸が締め付けられるような、背徳感に近い謎の感覚に襲われ、言い訳のような独り言が溢れ出て来る。
「べ、別にベールが私に特別な感情があるとかではなくて、ベールは素直だからスキンシップも素直っていうか……。
アスモなんか普通に抱き着いてくるわけだし」
「そ、そうだよ。
特別な理由とかじゃない。
シャンプーの良い香りで食欲が刺激されたとか言っていたし、もしかしたら私を頭からがぶりと食べるつもりだったと「なにぶつぶつ言ってるんだ?」
俯いて歩く私の額に、熱い何かが当たる。
「あっつう?!」
「下を向いて独り言とは。一瞬レヴィかと思ったぞ?」
熱の帯びた額をかばうように両手で隠し犯人を確かめると、挑発的な視線を送るルシファーの姿があった。
両手には湯気の立つコップがあり、私の額にあたったのは、どうやらそれのようだ。
「い、いきなりびっくりするじゃない! いるなら声をかけてくれればいいのに!」
「お前が前も見ず、独りで会話してる方が悪い。
正直、悪魔の俺でも怖かったぞ」
と、顔を左右に振りながら困り顔で溜息を吐いた。
とはいいつつも、絶対からかってる……。
「な、なによ。 そんな日があってもいいじゃない」
「そんな日に出くわした俺が可哀そうだな」
肩をすくめるその彼の様子から、先程の出来事は全く気にしていない、といったふうに感じた。
「それはそうと、これを取りに来たんだろう?」
ルシファーが右手に持つコップを私の目の前に差し出した。
嗅いだことのある、懐かしい良い香りが、私の鼻孔をくすぐる。
「良い匂い……。 牛乳みたいな匂いする……」
「まさしくそうだが?」
コップを受け取った後、びっくりしてルシファーを見る。
「……へ?」
その様子を楽しそうに眺めながら、ルシファーが左手のコップを少し上げた。
「この間、人間界の「牛乳」というものを温めたものが安眠効果にいいという話ししていただろう? 大掃除を始める前に、少し人間界に入用があったものでな。 そのついで、だ。」
言いながらも、香りを楽しむルシファー。
「……どうだ。 時間があるなら、俺の部屋で少し温まらないか。 寝るまでにまだ少しばかり暇だろう」
その艶めかしい薔薇のような深紅の瞳とは裏腹に、優しい声色を向けられ、私は素直にこくんとうなずいた。