お前、名前はなんて言うんだ?
夢の始まり
「お前の名前は?」
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ブブッ。
眠れない。
ブブッ。
ベッドにうつ伏せに横たわり、顔を枕に押し付けたままの姿勢で、何時間経ったか。
ブブッ。
ぐるぐるぐるぐる。延々と、もやもやした気持ちと後悔ばかりが押し寄せてきて、自分にずっと言い訳をし続けて。
ブブッ。
「……あぁ、もううるさいなぁ!」
どこかに投げ出したD.D.D.を探そうと、手であちこちまさぐる。
「…あっ」
やっとベッドの隅に投げ出されたD.D.D.を発見したが、手を伸ばしたところでガシャンと派手な音を立てて滑り落ちる。
「……はぁ」
私は深い溜め息を吐いた後、ゆっくりとベッドから降りてD.D.D.を拾い上げた。
その瞬間、ドキッと心臓が一瞬高鳴る。
『美香夜。起きてるのは分かってる。ふてくされてないで、ベールに何があったのか教えてよ』
D.D.D.の画面にはベルフェから数十件ほどの新着通知が表示されていた。
だが、その通知内容よりも、ベルフェが数十件もメッセージを送ってくることのほうが、より一層緊迫した状況であることを物語っていた。
ブブッ。
『例の場所で待ってる。お願いだから、来てほしい』
「やっと来たね。 まぁ、美香夜が来てくれるまで、ここでずっと待っているつもりだったけど」
ベルフェが気怠けにあくびをする。その仕草も、取り繕っているようなぎこちなさを感じた。
「……」
「ねぇ。 いつまでそこに突っ立ってるつもり?」
お気に入りのクッションを胸に抱きかかえ直しながら、その目は獲物を逃さないと言わんばかりの威圧感を放つ。
本能的に逆らえないことを悟った私は、ベルフェの視線がある場所まで、ゆっくりと移動して腰掛けた。
「「……」」
無音が、私の心臓をギュッと鷲掴みしてくる。
いつもなら心地いいこの時間も、今は喉元にナイフを当てられているような感覚が身体を支配して、息も上手く吸えない。
「……カストールとポリュデウケース」
「……え?」
「ほら、見て。 上」
ベルフェが天井を指差す。
満天の星空。
そしてその指先は、2つの星が寄り添った、彼の愛する星座を示していた。
「覚えてる? 僕は、ベールといつも繋がっていて、そしていつも分かち合いたいと思ってる。 おいしい食べ物も、楽しい出来事も、面白いことも、苦しいことも」
ベルフェが私の顔を覗き込む。
「そして、死ぬときも」
「……そう、だね」
反射的に目を伏せる。
「だから僕は、ベールが愛したものも、愛したい」
ポン、と頭に優しい手のひらの感触が伝わる。
「正直、僕はルシファーが嫌いだからベールを選べばいいのにって思ってる」
反面、その声は冷たくて。
「そしてベールを傷つけたあんたが、ルシファーと同じくらい嫌い」
「……ッ」
「あんたも馬鹿だよね。
そもそも悪魔に恋をするなんてコト自体、馬鹿だよ」
胸が詰まる。
私がずっと、悩んでいたことだったから。
でも。
「……そんな」
「え?」
やっぱり、否定されたくない。
「……そんなコト、ない」
私は自然と、ベルフェの重たい瞼から覗く青紫色の瞳をしっかりと見つめた。
「みんなに出会えたことも。 ……好きになったことも。 私は後悔していないし、馬鹿だとも思っていない」
心からの想い。
私が、私という人生を歩んできて初めて他人に抱いた強い感情。
そして、守りたい感情。
「それは、この先も……。
絶対揺るがない」
2つの瞳は激しく揺れ、そして長いまつげにすぐ隠された。
「……ふぅん。
やっぱ、変わってない。
あんたは、根っからの馬鹿だ」
最初とは違う、優しい声色。
「……あーぁ。 どうでもいいや。
あんたが馬鹿だろうが、どうでも」
そして、ゆっくりと私の肩に頭を預ける。
「どっちにしろ。
僕は、やっぱあんたが好き」
その言葉に、ブワッと鳥肌が立つ感覚がして、視界が滲んでくる。
「ルシファーも結局、根本は馬鹿で不器用なんだよ。
なのに取り繕って、兄貴だの殿下の右腕だのっていう肩書をすべて全うしようとして。
あんたら、似た者同士なんだよ」
目をつむりながら、まるで寝言のように呟く。
「好きなら好き、ってルシファーに言えば?
いつも正直なくせに、そこだけ隠したってうまくいくわけ無いじゃん。
あんたは馬鹿正直がお似合いだよ」
「……バカバカ言い過ぎ、この睡眠バカ」
生意気な、でも不器用な優しい家族の鼻を指でつまむ。
「いたっ!
ホントのこと言っただけなのに……。
ふぁ……。
もう、眠くなってきちゃった。
僕はここで寝る。
あんたはベールを泣かせた罰として、しばらく僕の枕になってて」
もう一度クッションを強く抱きしめる。
本格的に寝るようだ。
「……風邪、引いちゃうからね?
知らないよ……もう」
恥ずかしくて、気付かれないように鼻をすすって、天井を見上げた。
今の私には星が全部混ざって、どれがふたご座かもわからなくなった。
肩に感じる重みが、また私の心臓を鷲掴みする。
でも、この感覚は、とても大好きだ。
眠れない。
ブブッ。
ベッドにうつ伏せに横たわり、顔を枕に押し付けたままの姿勢で、何時間経ったか。
ブブッ。
ぐるぐるぐるぐる。延々と、もやもやした気持ちと後悔ばかりが押し寄せてきて、自分にずっと言い訳をし続けて。
ブブッ。
「……あぁ、もううるさいなぁ!」
どこかに投げ出したD.D.D.を探そうと、手であちこちまさぐる。
「…あっ」
やっとベッドの隅に投げ出されたD.D.D.を発見したが、手を伸ばしたところでガシャンと派手な音を立てて滑り落ちる。
「……はぁ」
私は深い溜め息を吐いた後、ゆっくりとベッドから降りてD.D.D.を拾い上げた。
その瞬間、ドキッと心臓が一瞬高鳴る。
『美香夜。起きてるのは分かってる。ふてくされてないで、ベールに何があったのか教えてよ』
D.D.D.の画面にはベルフェから数十件ほどの新着通知が表示されていた。
だが、その通知内容よりも、ベルフェが数十件もメッセージを送ってくることのほうが、より一層緊迫した状況であることを物語っていた。
ブブッ。
『例の場所で待ってる。お願いだから、来てほしい』
「やっと来たね。 まぁ、美香夜が来てくれるまで、ここでずっと待っているつもりだったけど」
ベルフェが気怠けにあくびをする。その仕草も、取り繕っているようなぎこちなさを感じた。
「……」
「ねぇ。 いつまでそこに突っ立ってるつもり?」
お気に入りのクッションを胸に抱きかかえ直しながら、その目は獲物を逃さないと言わんばかりの威圧感を放つ。
本能的に逆らえないことを悟った私は、ベルフェの視線がある場所まで、ゆっくりと移動して腰掛けた。
「「……」」
無音が、私の心臓をギュッと鷲掴みしてくる。
いつもなら心地いいこの時間も、今は喉元にナイフを当てられているような感覚が身体を支配して、息も上手く吸えない。
「……カストールとポリュデウケース」
「……え?」
「ほら、見て。 上」
ベルフェが天井を指差す。
満天の星空。
そしてその指先は、2つの星が寄り添った、彼の愛する星座を示していた。
「覚えてる? 僕は、ベールといつも繋がっていて、そしていつも分かち合いたいと思ってる。 おいしい食べ物も、楽しい出来事も、面白いことも、苦しいことも」
ベルフェが私の顔を覗き込む。
「そして、死ぬときも」
「……そう、だね」
反射的に目を伏せる。
「だから僕は、ベールが愛したものも、愛したい」
ポン、と頭に優しい手のひらの感触が伝わる。
「正直、僕はルシファーが嫌いだからベールを選べばいいのにって思ってる」
反面、その声は冷たくて。
「そしてベールを傷つけたあんたが、ルシファーと同じくらい嫌い」
「……ッ」
「あんたも馬鹿だよね。
そもそも悪魔に恋をするなんてコト自体、馬鹿だよ」
胸が詰まる。
私がずっと、悩んでいたことだったから。
でも。
「……そんな」
「え?」
やっぱり、否定されたくない。
「……そんなコト、ない」
私は自然と、ベルフェの重たい瞼から覗く青紫色の瞳をしっかりと見つめた。
「みんなに出会えたことも。 ……好きになったことも。 私は後悔していないし、馬鹿だとも思っていない」
心からの想い。
私が、私という人生を歩んできて初めて他人に抱いた強い感情。
そして、守りたい感情。
「それは、この先も……。
絶対揺るがない」
2つの瞳は激しく揺れ、そして長いまつげにすぐ隠された。
「……ふぅん。
やっぱ、変わってない。
あんたは、根っからの馬鹿だ」
最初とは違う、優しい声色。
「……あーぁ。 どうでもいいや。
あんたが馬鹿だろうが、どうでも」
そして、ゆっくりと私の肩に頭を預ける。
「どっちにしろ。
僕は、やっぱあんたが好き」
その言葉に、ブワッと鳥肌が立つ感覚がして、視界が滲んでくる。
「ルシファーも結局、根本は馬鹿で不器用なんだよ。
なのに取り繕って、兄貴だの殿下の右腕だのっていう肩書をすべて全うしようとして。
あんたら、似た者同士なんだよ」
目をつむりながら、まるで寝言のように呟く。
「好きなら好き、ってルシファーに言えば?
いつも正直なくせに、そこだけ隠したってうまくいくわけ無いじゃん。
あんたは馬鹿正直がお似合いだよ」
「……バカバカ言い過ぎ、この睡眠バカ」
生意気な、でも不器用な優しい家族の鼻を指でつまむ。
「いたっ!
ホントのこと言っただけなのに……。
ふぁ……。
もう、眠くなってきちゃった。
僕はここで寝る。
あんたはベールを泣かせた罰として、しばらく僕の枕になってて」
もう一度クッションを強く抱きしめる。
本格的に寝るようだ。
「……風邪、引いちゃうからね?
知らないよ……もう」
恥ずかしくて、気付かれないように鼻をすすって、天井を見上げた。
今の私には星が全部混ざって、どれがふたご座かもわからなくなった。
肩に感じる重みが、また私の心臓を鷲掴みする。
でも、この感覚は、とても大好きだ。