お前、名前はなんて言うんだ?
夢の始まり
「お前の名前は?」
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はぁぁ……おいしかった」
私は椅子の背もたれに体を預けながら、満たされた心で両手を合わせる。
「ごちそうさまでした!」
その私の様子に、ベールも「ごちそうさまでした」と両手を合わせた。
あれから、ベールが気になっていたお店を転々と食べ歩くグルメ旅が始まり、足が疲れてきたところで純喫茶のようなお洒落なカフェへと足を運んだ。
「ありがとう、ベール! すっごく楽しいし、おいしかった!」
嬉しさのあまり、つい身を乗り出しながらお礼を伝える。
ベールも満足そうに笑っている。
「俺も楽しかった。 付き合ってくれてありがとな」
ふと時間が気になり、D.D.D.を確認すると帰宅するいい頃合いの時間になっていた。
「もうこんな時間か……。 あっという間だね。 じゃあ、そろそろ帰ろうか」
少ししょんぼりしながら、D.D.D.を鞄にしまう。
少し、普段なら無い妙な間があることに気づき、ベールを見る。
すると、真剣で、そして不安そうな眼をしたベールが私を見つめていた。
「……ベール?」
びっくりして名前を呼ぶ。
ベールはハッと我に返った様子で、慌ててお冷を飲み干す。
「すまない。 時間のことをすっかり忘れていた」
その様子は、明らかにどこかおかしかった。
帰路の途中も、会話がどこか上の空。
私はいつもと違うベールの様子に、何かやらかしてしまったかな……と必死に記憶を辿って一人反省会を開いていた。
嘆きの館の入り口に着いて、扉を開けようとしたベールの手がピク、と止まる。
「ベール……さっきからどうしたの?」
我慢ならず、声をかける。
「会話も上の空だし……さっきのカフェを出てから、なんだか様子が変だよ?」
ベールは少し瞳が揺らぎ、そして意を決したように勢いよく私のほうへ振り向いた。
そして片膝を折り、どこかかしこまった様子で私の右手をそっと握る。
まるでおとぎ話の王子様のように。
「え、え、え?」
動揺を隠せない私を気にも留めず、ベールはそのまま続ける。
「美香夜」
「は、はい?!」
「ルシファーじゃなくて、俺にしないか」
その言葉に、頭が真っ白になる。
「……え」
「お前がルシファーを好きなのはわかってる。 わかってるんだ……」
ベールは一瞬顔を曇らせる。
フッ、と軽く息を吐くと、でも、と力強く私の瞳を射抜くように見つめる。
「俺は、お前と一緒にいると満たされるんだ。 本当に、満腹以外で満たされるのは初めてで……。 よく、わからないが……。 多分、ヒトはこれを「幸せ」と言っているのかもしれない」
一生懸命、言葉を選んで伝えようとしてくれているのがひしひしと伝わってくる。
「もしくは……」
「ベール」
私はそれ以上の言葉を聞く勇気がなかった。
どんな感情かわからない。
だけど、胸が詰まったように苦しくなり、勝手に頬が濡れていく。
「ベール……。 それ以上は、言わないで……」
視界がにじむ。
もう今の私に、まともにベールの表情を見ることができない。
「……ごめん。 先に部屋へ戻ってるね」
一番辛いのはベールに決まっている。
そんなの、わかってる。
なのに、今の私にはベールを心配できる気持ちの余裕がなかった。
振り返ることもできず、声をかけることもできず、私はその場から逃げるように自分の部屋へと向かった。
私は椅子の背もたれに体を預けながら、満たされた心で両手を合わせる。
「ごちそうさまでした!」
その私の様子に、ベールも「ごちそうさまでした」と両手を合わせた。
あれから、ベールが気になっていたお店を転々と食べ歩くグルメ旅が始まり、足が疲れてきたところで純喫茶のようなお洒落なカフェへと足を運んだ。
「ありがとう、ベール! すっごく楽しいし、おいしかった!」
嬉しさのあまり、つい身を乗り出しながらお礼を伝える。
ベールも満足そうに笑っている。
「俺も楽しかった。 付き合ってくれてありがとな」
ふと時間が気になり、D.D.D.を確認すると帰宅するいい頃合いの時間になっていた。
「もうこんな時間か……。 あっという間だね。 じゃあ、そろそろ帰ろうか」
少ししょんぼりしながら、D.D.D.を鞄にしまう。
少し、普段なら無い妙な間があることに気づき、ベールを見る。
すると、真剣で、そして不安そうな眼をしたベールが私を見つめていた。
「……ベール?」
びっくりして名前を呼ぶ。
ベールはハッと我に返った様子で、慌ててお冷を飲み干す。
「すまない。 時間のことをすっかり忘れていた」
その様子は、明らかにどこかおかしかった。
帰路の途中も、会話がどこか上の空。
私はいつもと違うベールの様子に、何かやらかしてしまったかな……と必死に記憶を辿って一人反省会を開いていた。
嘆きの館の入り口に着いて、扉を開けようとしたベールの手がピク、と止まる。
「ベール……さっきからどうしたの?」
我慢ならず、声をかける。
「会話も上の空だし……さっきのカフェを出てから、なんだか様子が変だよ?」
ベールは少し瞳が揺らぎ、そして意を決したように勢いよく私のほうへ振り向いた。
そして片膝を折り、どこかかしこまった様子で私の右手をそっと握る。
まるでおとぎ話の王子様のように。
「え、え、え?」
動揺を隠せない私を気にも留めず、ベールはそのまま続ける。
「美香夜」
「は、はい?!」
「ルシファーじゃなくて、俺にしないか」
その言葉に、頭が真っ白になる。
「……え」
「お前がルシファーを好きなのはわかってる。 わかってるんだ……」
ベールは一瞬顔を曇らせる。
フッ、と軽く息を吐くと、でも、と力強く私の瞳を射抜くように見つめる。
「俺は、お前と一緒にいると満たされるんだ。 本当に、満腹以外で満たされるのは初めてで……。 よく、わからないが……。 多分、ヒトはこれを「幸せ」と言っているのかもしれない」
一生懸命、言葉を選んで伝えようとしてくれているのがひしひしと伝わってくる。
「もしくは……」
「ベール」
私はそれ以上の言葉を聞く勇気がなかった。
どんな感情かわからない。
だけど、胸が詰まったように苦しくなり、勝手に頬が濡れていく。
「ベール……。 それ以上は、言わないで……」
視界がにじむ。
もう今の私に、まともにベールの表情を見ることができない。
「……ごめん。 先に部屋へ戻ってるね」
一番辛いのはベールに決まっている。
そんなの、わかってる。
なのに、今の私にはベールを心配できる気持ちの余裕がなかった。
振り返ることもできず、声をかけることもできず、私はその場から逃げるように自分の部屋へと向かった。