【1】始まり

いつものように、電車に揺られながら帰宅する。

その時、カバンに入っていたスマホがブルリと震えた。

一体なんだろうとスマホの画面に視線を落とすと、そこには久々に見掛けた親友の名前が映し出されていた。


レム<今週末うちでハロパするんだけど、久々に来ない?今新宿に住んでるんだけど



レム、という少女は、私の中学の頃の同級生であり親友の藍原玲夢。

中学の頃は何かとつるんでいたけれど、高校生になってからレムは東京の高校に進学し、あまり関わることはなくなった。

久しぶりの連絡に思わず頬が蕩ける。

すぐさま既読をつけた私は、二つ返事で答えた。


##NAME##<行く!









そんなこんなで、あっという間に週末はやってきた。

小さめのバッグにハロパ用のお菓子と仮装用の黒猫のカチューシャと暇つぶし用の小説を入れる。

東京までは電車で約1時間半かかるので、小説を読むには丁度いい空き時間だ。

最寄り駅につき、新宿行きの電車に乗る。

無事席に座れた私はほっとしてリュックから小説を取り出した。

その名は“デュラララ‼”。

少し前の小説だ。

もともと、私はニコニコ動画の声真似から折原臨也というキャラを知った。

そこからアニメにハマり、イッキ見をしてしまった。

(いや、だって、思った以上に面白かったんだもん)

自分だって、まさかここまでこのアニメにハマるとは思ってもいなかった。

(折原臨也がかっこよすぎて……)

そこまで思って、一つだけ訂正したくなった。

かっこいい、というのはあくまで客観視、自分がアニメを見る側だから抱く感想である。

現実にいたら絶対に関わりたくないし、恋人なんざになろうとも思わない。

(遠目から見ているだけで十分だ)

そうして私は小説を開く。

私はアニメを見て話の内容は知っているが、小説を1巻だけ買った。

その理由は、折原臨也の話がアニメと原作では違うから、という一つだけ。

どうやら、マゼンダさんのお話ではなく、自さ……心中オフ会のお話らしいのだ。

ネットで調べて軽く内容はわかっているのだが、どうしても原作を読みたくなってしまった。

読むに連れて、やっぱり思う。

(この男、怖い)

心中オフ会にやってきた女性二人がスーツケースに詰められて……結局今回はなんともなかったけれど。

それにしても。

("死ぬってのは―――無くなるってことさ。消えるのは苦しみじゃない、存在だ"、か)

たまに名言残すよね、この人。
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