とある本丸の日常生活


立冬を過ぎ、毎朝毎晩の冷え込みに冬の気配を感じて山茶花が開花を始めている。

本丸を囲う山肌も枯草色へと染まり、冬枯れの様相を見せているが、不思議と今日は温かい日和となっていた。
まるで春のようだ、と思いながら一期一振は本丸内の廊下を歩く。向かう先は玄関脇にある とある一室だ。

「藤代。失礼するよ」

襖の開いているその部屋に顔を覗かせればそこには本丸の記録役である藤代の姿があった。
ここは記録役の仕事部屋である。
六畳の和室のほとんどを幅広の炬燵に占領されているがあまり物を置かないためか手狭ではあるが窮屈さはない。

「?」

声は十分に届くはずだが何の反応もない。炬燵の向こう側でじっと手元を見て動かない青年に一期は目をまたたかせた。
普段付けることのない狐の面をしている。
その異様さもそうだが、それ以前に

「これは、どういう状況…なんだろうか」

一期は眼前の光景に自然と笑みを浮かべながら、誰かに説明を求めたい気持ちだった。
取り敢えず部屋に足を踏み入れてみれば、何処かから白い狐がぴょんと飛び出して一期の足元に寄ってくる。誤って当たらないように注意して炬燵へと近寄れば、藤代の手元には一振りの短刀があるのが見えた。
素手で触らぬよう布越しに慎重に扱い、かなり集中して刀身を見ているようだ。一期が目の前にいることにも気付いていない。

そんな彼の隣には一振りの刀剣男士の姿がある。
炬燵に入りうたた寝をしていて、こちらも一期が部屋を訪れた事には気付いていないようだ。

「気付いたのはお前だけか」

こそっと声をかければ白い狐はふさっと尻尾を軽く振る。
さてどうするか、と一期が出直すことも考えた時にうとうととしていた短刀が赤い瞳を開いて顔を上げた。

「…ん」

と、眠そうに少しぼんやりとしていたその短刀は一期の姿を認めると大きな瞳をさらに大きく見開いた。

「あ、あなたは一期一振さま?嫌だ、わたくしったら…いつの間に…!人前でうたた寝など、はしたない…」

醜態を晒したとばかりに赤らんだ頬を隠すのは短刀の刀剣男士である京極正宗であった。
可憐な令嬢のような姿で顕現された京極はその見た目に違わず自身を律することに長けた刀剣男士である。そのため、うたた寝をした自身に驚き、恥ずかしさで狼狽えているようだが、一期からしたら微笑ましいものだった。

「今日は麗らかな陽気ですからな。心地良い風に眠気を誘われるのは仕方のないものです」

穏やかな口調で、京極が落ち着くようにと小さく笑う。
開けられた窓から入る風は室内を優しく包み込むように流れて一期の髪も揺らしていた。

「休める時に休むよう…それは主の願いでもあります。本丸にいる間は私の弟達も一眠りして、次の戦に備えておりますな」

「…そう、なのですね」

説く一期の言葉に京極は納得してくれたようで、頬に赤みを残しながらも頷いて話を聞いている。そのタイミングを見計らって一期はその場に腰をおろした。

「いつまでも上から失礼致しました。京極殿には感謝を申し上げたく」

「え?」

そう言って座して姿勢を正した一期が頭を下げれば、突然のことに京極が驚くのが分かる。

「頼まれたのでしょう?短刀を見せてほしいと」

どれほどの集中力か、未だ短刀一一京極正宗を見続けている記録役に目をやる。それに京極は頷いた。

「はい…おっしゃる通りです。わたくしを見るのは初めてだから、少し見せてほしいとお願いされまして」

「しかし、主でもない者に預けるのは躊躇したことでしょう。だからこの子の我儘に協力してくれたことに感謝を申し上げたいのです」

「そんな…わたくしは新参者です。一期さまが頭を下げる必要はありません。確かに…このような申し出をされたことには驚きましたが」

固い表情の京極は三月程前に本丸が迎えた刀剣男士で、同じ頃に赤羽が藤代を連れて帰って来た際の騒ぎに、事情が分からず置いていかれた者の一人だった。

この青年がかつて本丸の主を代行していたことや記録役として六年近く本丸にいたことを知らない京極にとって、彼はあくまで外部の人間だ。その為あまり親しくはしていないはずで、その不躾な願いに大人しく付き合ってくれている京極には一期としても感謝の気持ちがあった。

「一期一振さま。あなたのご兄弟である白山吉光さまにこの者は信用していいと諭され、その信頼をわたくしは信じたのです」

「そうでしたか」

さっと見たところ当の白山吉光の姿は見当たらない。お供の白い狐はいるから少し席を外しているだけだろうか。

「それに刀剣鑑賞を嗜むとは…お若いのにとても豊かな感性をお持ちだと、わたくし感心致しました」

そう言って笑みを浮かべる京極に一期も「そうですな」と頷き返す。

「この子は本部では手入のみを行う場所にいたそうです。手入で大事となるは刀剣を知ること。刀剣を観ることは興味であり、義務…信条のようなものなのかもしれませんな」

「まぁ…ふふ、素敵なこと。一一一あら?」

可憐に微笑む京極の視線が一期より頭上へと移動する。
何を見ているのか振り向けば、そこには空色の瞳をした剣が静かに佇んでいた。

「一期一振。あなたも、来ていたのですね」

静かな声と共に室内に上がると、手にしていた盆が炬燵の天板に置かれた。急須と3つの丸い湯呑みがカチャと音を鳴らす。

「少し藤代に用があってね。しかし取り込み中のようだ。急ぎでもないからまた今度にしようと思うよ」

藤代に付き合ってくれている京極に感謝も伝えられたことだし、そろそろお暇しようと立ち上がろうとすればそれを白山に止められる。

「なぜ退席されるのです。急ぎでないのなら、待てば良いのです」

そう言われて一期は目を丸くした。
兄弟とも遠慮して距離を置きたがる白山からまさかそのように言われるとは予想だにもしていなかった。

「…私が同席しても構わないのかな」

「正宗の短刀…京極正宗に観察の依頼をおこないながら、そのもてなしも不十分に、この者を放置した藤代に責があると、わたくしは考えます」

「うん?」

答えになってない返答に一期は首を傾げる。
話しながら湯呑みに茶を注ぎ入れ、京極と一期の手元へと運ぶ動きは随分と慣れたものだ。

「白山さまのお心遣いに感謝申し上げます」

「私まで貰ってしまっていいのかな。これはこの子の分として持ってきたんじゃ…」

京極が受け取るのは当然として、元は数に入っていなかった一期は受け取るのを躊躇した。

「問題ありません。こうなると外部からの刺激に、いっさいの反応を示さなくなります。気が付かない、藤代が悪いのです」

「えぇ…そうなのかな」

「そうです」

はっきりと言う兄弟に一期は、ふふっと笑ってしまう。
恐らくは、これが彼の言う「藤代の責」なのだろう。

「ではありがたく、いただこうか」

そう言って一期が出された茶に手を付ければ、表情も変えずに「どうぞ」と白山は頷いた。

顕現したばかりの頃は、他の者のように話せないと口下手なことに悩み、剣の刀剣男士は兄弟達には不気味に映ると関わることに遠慮をしていたが、本丸で"役目"を得てからは一期の思っていた以上に現し世に馴染むことが出来るようになったらしい。

その役目が本部からやって来た「記録役の監視」だとしても、兄弟が一人にならないことに長兄としては安心していた。

(監視される側は、嫌がっていたけどね)

これだけ目の前で話していても全くこちらを見ない狐面に、一期はこっそりと頭を下げた。

「少し、お待ちください」

そう言って立ち上がる白山を一期は目で追う。
彼が近くの襖へと向かい、そこを開くと隣の部屋が見えた。仕事部屋と続き間になっているそこは四畳半の部屋があり、記録役の寝床となっている。つまりは私室というわけで、何の躊躇いもなく入り込もうとする兄弟に一期は慌てた。

「え!待ちなさい。勝手に入ってはいけないよ」

「問題ありません。過去に何口もの刀剣男士が、無断で入り込んでいます」

「それは問題のない理由にはならないけどね!」

「一期一振。わたくしは、本丸の刀剣男士をみて学んだことがあるのです」

振り返り感情の薄い目でこちらを見る白山に、一期はぎこちない笑みを向ける。

「な…んだろうね。話しの流れ的にあまり良くないことを学んでいそうだけど」

「藤代は、我々からの要求に嫌だとごねても、最終的には折れる性質にあります。つまり、押しに弱い」

「聞きたくなかったなぁ。兄弟からそんな悪知恵を聞きたくなったなぁ」

口下手な兄弟は何処へやら。本丸から多くを学び吸収した剣は、良くも悪くも様々な知恵を付けていた。

「ふふ。有益な情報を得てしまいましたね」

「京極殿。どうかお手柔らかにお願いしたい」

「一期さまがおっしゃるのでしたら、今一時は大人しくしておりましょう」

「随分怖い言い回しをされる」

まさに可憐な薔薇にも棘がある。
京極のような一見おしとやかな者ほど腹の内では何を考えているものやら。巻き込まれ体質気味な藤代は格好の餌食ではないかと一期は心配になった。

「なんか悪どい刀剣男士が増えたって感じですか?」

その声は京極でも白山でもないもので、声の方へ顔を向ければ狐面がこちらを見ていた。
どこから話しを聞いていたのか、若干京極から距離を取っているように見える。

「あら。お気付きになられたみたい」

「それはどっちの意味で…。じゃなくて、すみません。その、どうしても刀を見ると集中し過ぎてしまうもので、京極さん、ありがとうございました」

そう言って藤代は刀身を鞘に戻すと丁重に京極の短刀を返した。刀剣男士への態度は雑でも、刀剣の扱いは意外と丁寧なところは変わらないなと思う。

「…一期さまの仰っしゃる通り、あなた仕事熱心なのね。審神者としての力は弱くともわたくし達を知ろうとする。その意欲的なところはわたくし嫌いではありません」

「え?あ、ありがとうございます…?」

「これからも、あるじさまを支える記録役として精進なさいませ」

「!…それはもう赤羽様のためにがんばります!」

本丸の主である赤羽のこととなると張り切る藤代は京極からの応援に力強く応える。

「だが、頑張りすぎは体に毒だよ。その面も何か曰く付きのようだね?」

「面…?あ、これか。お守りみたいなもんですよ。本部に返さずじまいになってしまいましたけど、付けると視界が狭まってより集中出来るんですよね」

一期が指摘すれば、藤代はあっさりと狐の面を外す。
いつもと変わらない色白の顔に眠そうな目をした記録役は京極の方を見て、普段は見せない温かな笑みを浮かべる。

「でも本当にありがとうございました。本部では新しく顕現した刀剣男士に会う機会が殆どなかったもので、こうして見せていただけるのは本当に有り難いです」

頭を下げてきちんと礼を述べる藤代だったが、顔を上げた時には何故か遠い目をしていて、

「…うん。ホント…久しぶりにここへ来て十振りほど知らないのがいた時は、自分でも驚くほど知りたい欲が出てしまいましたから」

「仕事中毒、ですね」

「いやいや、そこまでじゃ…」

白山の指摘に何か言おうとして藤代は言葉をとめた。
何でもない顔で人の部屋から出てくる剣を見て、色々言いたいことはあるが言うだけ無駄か…と諦めたような、そんな顔をしていた。

「京極正宗。こちらをどうぞ」

そんな思いを知ってか知らずか白山は京極の傍に来ると何かを差し出す。それは白い包装紙にどら焼きのようなイラストの描かれた洋菓子だった。

「まぁ。いただいても、よろしいのですか?」

「はい。貴重な時間をいただいたこと、感謝いたします。細やかですが、お礼とさせてください」

「しかし…それなら白山さまからいただくわけには」

短刀の観察は藤代からの頼みであって白山は関係ない。
京極は遠慮しようとするが、

「藤代は、礼を尽くすことを知りません。わたくしが、代わりを担っているのです」

そう言って首を横に振る兄弟が、無表情にすっと目を細めるのを見て、視線を受けたわけではない一期の背中も寒くなる。視線を受けている当人は尚の事で、すでに土下座をするのではというほどに頭を下げていた。

「すみません!すべてお任せしてしまってすみません。今度万屋でお菓子買い足しときますのでそんな怒らないでっ」

「それで手を打ちましょう」

誠心誠意の謝罪と提案に白山も納得してうなずく。

「監視というか見守りというか」

「監視です」

見張るだけでなく、行き届かない部分を手助けしている姿に一期は苦笑してしまうが白山は心外そうだ。

「いつもこんなことをしているのかな」

「中に菓子箱があります。不義理を働いた際の、袖の下です」

「言い方ぁ」

文句を言える立場でもないためか藤代が小さくツッコむのが聞こえた。
もてなしに慣れている様子から察するに、今までにも何度か同じようなことがあったのだろう。となるとさっきの謝罪も毎回やってる光景か、と何となくそう思った。

「そう言えば一期さんいつの間にかいましたけど、何か用でもありましたか?」

「あぁ、うーん…お前に聞きたいことはあったのだけど、こうして様子を見る限り杞憂そうだと思ってきてね」

「あ、俺に用だったんですね。聞くだけ聞きますけど?」

藤代に促されるも、仕事部屋でのやり取りを見ただけでもここへ来た目的はほぼ一期の中で解決してしまい話すかどうか悩んだ。
少し考えたのちにやはり聞くだけ聞いてみるか、と一期は藤代に問いかける。

「ずっと聞きたかった…お前は、私達が怖くはないか?」

「・・・」

表情を固くする藤代には質問の意図が通じたらしい。
けれど一期が敢えて言葉を続けようと思ったのは京極がいるからだ。京極はきっと細やかな内情までは知らない。

「お前の夢の中にいるという化け物は、元は我々の同胞。刀剣男士として形を保てないほど神格の下がった刀の付喪神と聞いているよ」

「まぁ…!そんな…」

驚く京極に一期はうなずく。
藤代が本丸にいる理由は、療養のためとされている。
数年前に斬り伏せ解決したはずの夢の化け物が復活してしまい、その原因と解決策を見つけることを本部ではなく本丸に丸投げされたのは、本丸が化け物の正体を知っていることが要因のひとつだろう。

「化け物の正体は刀剣男士。その刀剣男士と暮らすことが、怖くはないのだろうか…?」

今さらと言えば今さら。
最初に夢の中で化け物の干渉を受けた時から、藤代はその正体に勘づきながら知らない風を装って本丸で過ごし、時に本部から任務を受けて外部の本丸へと赴けば多くの刀剣男士と関わってきた。
それは本丸を離れていた間も変わらないはずだ。
しかし、本人の口から気持ちを聞いたことはなかった。

「そー…ですね。今まさに白さんが怖かったけど」

「は…?」

「嘘です すみません。えー…まず怖かったらこんな風に刀見せてもらったりとかしないですし、何よりこの本丸の皆さんは赤羽様の刀です。清らかな魂を持つ審神者の力で顕現を保たれている皆さんを怖がる必要はないというかそんなの赤羽様を疑っているようで失礼。万死に値します」

「そんなに?」

どんな言葉が出てくるかと思えば、一期の予想とは違うが、ある意味藤代らしい理由で呆気に取られてしまう。

「それに夢の中にいるのは多分、よその別個体の刀剣男士であって皆さんではない。怖がる対象が違いますよね」

「…なるほど。私が思っていた以上に、お前は事態を冷静に受け止めているようだ。…そもそもお前は化け物自体も怖がっていないように見えるね」

聞いた話では藤代は一度夢の中に閉じ込められている。その時に顕現前の桑名江(何故そこにいたのか当人も分からないらしい)が現れなければ最悪命を奪われていた。そんな存在が自分の中にいるというのに、平気な顔でいられる胆力が不思議だった。

「そりゃあ…人のテリトリーに入り込まれるのも、いつ取り殺されるかもしれない状況も普通に嫌だなとは思いますけど、それ以上に赤羽様が!俺を助けるためだけにこうして本丸に置いて化け物の対処に尽力してくださっているという現実に感動が上回ってしまって怖がる暇なんかないんです!」

「とても「嫌だ」で済む話ではないと思うのだけど…ふふ、あるじさまへの愛が深いのかしら」

敬虔な赤羽信者である藤代は、その思考や行動原理が主中心となることが時々ある。一期や白山は慣れたものだが京極も少しずつ理解してきているようだ。

「あ、てか京極さん。今さらですけど待っている間、退屈でしたよね。すみません、だいぶ待たせてしまって」

「いえ…お気になさらず。秘蔵とされていた期間と比べたら瞬きの間でしたから」

「そりゃ歴史的な時間と比べたらそうでしょうね」

隣で居眠りをしていたことなどおくびにも出さず、急に話を振られても楚々として応える京極がちらっと一期を見る。
その瞳は居眠りのことは内緒にしてほしいと訴えているようで、一期は気持ちを汲んで微笑みを返した。

「…一期一振、よろしいのですか?話を逸らされています」

京極と話している藤代に聞こえないように白山が小声で忠告をしてくる。それに一期はうなずいた。

「聞きたかったことは聞けたからね。それに、あの子が自分から我々と関わろうとする内は大丈夫だろう」

「そうですか」

「とは言え、あの子は本心を語らないからね。どこか辛そうだったり違和感があったら主に話してほしいな。私か弟達にでもいい」

「わかりました。監視の目を強化します」

そう言って白山は傍らに座る白い狐を撫でた。
それに通信機とも呼ばれる狐はひとつ尾を振って応える。協力して見守ろうとしてくれるらしい。

「今なんか不穏な会話が聞こえてきたんですけど?!監視強化とかやめてください!俺もう子供じゃないんです。ツラいけどだんまりとかそんな赤羽様の迷惑にしかならないことしませんから。おかしいって思ったらすぐ赤羽様に言いますから」

「おっと聞かれてたようだね」

「この距離で聞こえないと思いますか」

炬燵で対面している距離は内緒話をするには近い。
そして仕事部屋は狭い。
物が少ないおかげで4人いても窮屈さはないが密集感はあり、声は届いてしまっていた。

「聞かれてしまったら仕方ないか。藤代、何かあったら主だけでなく粟田口わたしたちも頼りなさい。末弟のお前を皆心配しているのだからね」

「うわぁ鳥肌。刀の神様が人間を身内に引き込もうとしてくるとか普通にホラーじゃないですか!」

「お前の兄達はいつでも傍にいるよ」

「怖い怖い怖い」

遠慮のない物言いをする藤代を一期は何も気にしない。
白山の言葉ではないが、この記録役は押しに弱い。そして普段の態度からは意外に思われるが、刀剣男士に非常に甘い。
そのため要求を拒否しても、関わりを拒絶しないことを一期は知っている。

「仲がよろしいのね」

二人のやり取りを穏やかな表情で京極が眺めていた。

「でも不思議。一期さまの中では、刀と人の間に垣根がないのですね」

こてんと首を傾げる京極の言葉に、「あぁ、それは」と一期は一度藤代の方へ目をやると、春風のような穏やかな笑顔で答えた。

「前の主の影響ですな」

18/18ページ
スキ