とある本丸の日常生活
蝉の鳴き声が盛んに聞こえてくる青天白日の下、
本丸の道場からはカンカンカンッと木刀が打ち合う音にビュッと素早く振り払う音、ダァンと踏み込む足音などがあちこちから騒がしく聞こえてくる。
多くの刀剣男士が一対一や集団での戦いを想定した稽古に勤しんでいるようだ。
「でやっ」
陸奥守吉行もその一人で、今は太刀の刀剣男士である大包平と手合わせしている。
長身の大包平から繰り出される一打は重く、受けるだけでも手が痺れそうになる力を受け流し、時には回避しながら陸奥守は打ち込む隙を狙っていた。
陸奥守は小柄ではないものの身軽に動き、しっかりと相手の動きを見ている。大包平に隙はない。であれば作るしかない。
「ふっ!」
力強い上段の振り下ろしからの返しを避けたタイミングで陸奥守は思い切り身を沈めた。その勢いで大包平の足を払いにかかるも、一瞬よろけた大包平はダンと足踏みをして耐えきり右手の木刀を陸奥守に振り下ろした。
だがそう来ると読んでいた陸奥守の方が速かった。
足払いした際に回転させた体を浮き上がらせて渾身の回し蹴りを食らわせる。
「ぐっ!」
「どうじゃ!」
陸奥守は振り下ろし下がった大包平の頭を狙ったつもりだったが実際に当たったのはその腕だった。振り下ろしたはずの右腕で陸奥守の蹴りを受けたらしい。何と言う瞬発力だろうか。迫り来る一瞬の蹴りを察知し防御した。
「うへぇ~!それを防ぐんか!?」
岩のように頑丈で、その一振りは重く、その癖隙がなく俊敏と来たものだ。大胆なようで繊細。そんな大包平の剣捌きに陸奥守は舌を巻いた。
「はいっ!そこまで~っ」
その時、二人を止めたのは大包平と同じ古備前の太刀、八丁念仏だった。
「時間で~す」
手にしたストップウォッチからピッピッピと高い音がして手合わせの時間の終了を告げていた。
「くそっ。決着を付けられなかったか」
「いや~っ冷や汗かいたぜよ」
「陸奥守!お前、何をへらへらと笑っている!もっと本気で掛かってこい!」
「いやいやいや本気だったわ!おんしに隙がなさすぎて何も出来んかっただけじゃ」
手合わせの終わった安心感から軽口混ざりに本音を溢せば大包平に叱られた。心外だとばかりに言い返してやれば、
「むっ・・・そ、そうか?」
褒められたことに吝かでもなさそうに大包平は照れている。真面目な故に面倒臭いところもあるが素直であるためそれ以上は突っかかってこなかった。
「やっぱ大包平の兄さんパないわ~。俺なんか瞬殺されそ~…かもっ」
「ぱない…??」
「超すごいってことっ。それを凌いだむっちゃんもちょ~すごい!」
「がははっ!そうじゃろそうじゃろ」
八丁の若者言葉に大包平は「?」を飛ばし、掛け値なしの褒め言葉を陸奥守は素直に受け取り喜んだ。
古備前の刀に比べたら陸奥守は新刀も新刀だが、ここでは来歴どうこうは関係ない。刀としての実力があるかどうかが重要なのだ。
陸奥守としては戦わずに話し合いで済めばそれに越したことはないが、そう考えないのが歴史修正主義者というもので戦いは避けられない。
その為、日々の鍛練は欠かせないのだった。
「確かに陸奥守の体術はなかなかのものだったな」
「だねっ。軽業師みたい」
「豪快な言動の多い割に猪突猛進にならず、俺の力を利用しようとする思慮深さ…侮れん!」
「それをおんしが言うがか」
称賛のブーメランに陸奥守は目を細める。
それと同時に自身をそう評価されることにくすぐったく思った。
「よし稽古を続けるぞ!八丁、次はお前が俺の相手をしろ!」
「無理、ですっ!…じ、実休さ~んっ」
大包平からのご指名にそそくさと逃げる八丁の先にはほんわかと微笑む太刀の刀剣男士、実休光忠がいた。
「実休さんど~だった?二人の手合わせを見て何か参考になりまくり?」
「うん。凄すぎて、僕では手も足も出ないことが分かったよ」
「だよね~。わかるっ」
二人の手合わせを見学していた実休の感想に八丁も同意の意味を込めて激しくうなずく。
ひと月程前に本丸に来たばかりの実休はまだ誰かと手合わせをしたことがない。記憶があやふやということもありまずは本丸に馴染むことを優先させて、同派の者と道場を訪れても木刀の素振りをして感覚作りに集中していた。
そんな実休が何を思ったのか手合わせを見学させてほしいとやってきたので、陸奥守達は快諾したのだった。
「ふっ。それが分かれば一歩前進と言うもの!次は頭ではなく体に覚えさせるべきだな。…よしっ、二人同時に掛かってこい!」
「いや「よしっ」じゃないって。実休さんはまだ雇い主から手合わせの許可下りてないんだよ」
「む?許可が必要なのか。では直談判してくるか」
「えぇっ?!今からとか…そ、そんな急に契約変更出来ないんじゃないかな…っ」
「あぁ…噂をすれば影、と言うやつかな。主が来たみたいだ。僕もお願いしてみようかな」
実休の声にそちらを見れば、遠目でも分かる赤い髪の主が道場の出入口付近に立ち止まり、こちらに背中を向けて何かを見ていた。
「実休さん手合わせにノリ気だった!」
「ハハハッ。やる気があるのはいいじゃないか!では行ってくる」
大包平との手合わせに腰の引けてる八丁を残して、大包平と実休は本丸の主である赤羽の方へと向かっていってしまう。
「大包平は元気じゃな~」
自分と手合わせをしたばかりなのにもう次の相手を求めている大包平を見送りながら、陸奥守は頭から流れてくる汗を手拭いでわしわしと拭く。
大包平を相手に動き回ったのもあるが、道場内は何もしてなくても汗が出るほど暑かった。全ての窓と出入り口を開け放ち風を取り入れているが真夏の暑さの中では蒸し暑さが軽減される程度で、あちこちに扇風機が回っているが無いよりはマシといったものだった。
「むっちゃ~ん。なにか兄さん攻略法ない~?」
「そんなもんあったらわしが使うちょる」
「だよね~」
「ところで」
「ん?」
「おんし…戦うんは苦手じゃったか?戦場ではそんな素振り見せんから、手合わせを嫌がるんは意外っちゅうか、まぁわしの勝手な思い込みやけど」
扇風機に当たりながら陸奥守は聞いてみる。
"刀剣男士"と呼ばれ戦士の姿で顕現した刀剣の付喪神だが、歴史を守る役目はあれど他者を傷つけることを是としない者は少なからずいる。
刀を振るうことを厭う者、傷つけられることを怖がる者。心がある以上それはあって当然の感情とも言えるだろう。陸奥守とて好きで刀を抜くわけではない。
「あ~。そのぉ、苦手と言うか~…古備前の兄さん方には絶対敵わないから戦いたくないって感じ、かなっ」
垂れてくる汗は暑さからか冷や汗か。
頬をかきながら八丁は苦笑いをしていた。
「いや分かってんだよ?!それでも対等に戦えるくらい強くなって活躍しなくちゃ契約延長してもらえなくなるかも~ってことは!ただ、ただねっ!むっちゃんも手合わせして分かるでしょ?兄さん方強すぎ!強くなる前に心が折れるってゆ~か…そのぉ、ね?」
強者との手合わせで何を学び次に活かせるかは刀それぞれだ。しどろもどろに話す八丁は半年前に顕現したばかりで、強さを学ぶ前に力量の差に尻込みを覚えてしまったようだ。
けれどそれが悪いわけではない。
臆病は力に変えられる、と陸奥守はにかっと笑う。
「がはは!そんじゃおんしを強くするためにわしが一肌脱いでやろうかのう。大包平は加減を知らんがわしならうまく鍛えてやれる。期待していいぜよ」
「うーん!むっちゃんはむっちゃんでずるいんだよなー」
「ずるいってなんじゃあ、ずるいって!」
強くなるために胸を貸してやろうと意気込んで誘えば八丁は乗ってこず、陸奥守は肩透かしをくらって口を尖らせた。
「むぅ」
そんなことを話していると大包平だけが大股で戻ってくるのに二人は気がつく。その表情は何とも渋いものだった。
「どうしたんじゃ?」
「あぁ…その、主からもう手合わせをやめて休憩しろと言われてしまった。陸奥守お前もだ。俺はまだやれるんだが」
「…駄目だよ」
不服そうな大包平の後ろから小柄な女がひょっこりと顔を出す。
「な…っ、主!何故着いてきている!」
「室温と湿度が高い。君達でも、熱中症の危険があるよ。適度に休憩してほしい…」
驚きの声を上げる大包平には応えず、赤羽は淡々と注意をする。
彼女が道場へ来たのは室温と湿度のチェックをするためで、危険だと判断すれば手合わせを中止させるのも審神者の仕事だった。
「主がこう言っているからな、今日の手合わせはここまでだ。陸奥守、異論はないな?」
「わしはもう十分だからええが、八丁は」
「ナイス判断雇い主っ!熱中症は怖いからねっ。休も休も」
陸奥守が何か言うより速く、八丁はそそくさと出入口の方へと向かって行ってしまう。
「速いのー」
八丁は手合わせの立ち会いをしていただけなのだが、まぁいいかと陸奥守もその後に続いた。
「見学のお礼に薬草茶を振る舞いたいのだけど、どうかな」
そう言って実休にお茶に誘われたのは、道場出入口の下駄箱前だった。
「薬草茶?」
首を傾げる陸奥守に大きめなボトルを手にしている実休はにこりとする。
趣味のひとつだと言うそれに、何とも優雅なと陸奥守は思う。見学の礼までわざわざ用意しているなど思わず、この礼節を弁えたところは長船らしいと感じた。
「僕がブレンドしたんだ。飲み慣れていないと、変な味がするなぁって思うかもしれないけど」
「ドクダミ茶みたいなもんかの」
確かに薬草茶なるものは陸奥守はもちろん大包平や八丁も口にしたことはない。
何年か前に本丸に自生したドクダミの葉を乾燥させて作ったものを陸奥守は飲んだことがあったが、それと似たようなものだろうか。
「そうだね。ドクダミも入ってる。僕なりに飲みやすくしてはあるんだけど、薬草だから匂いや味の違和感はどうしても…ね?」
どうやら様々な薬効成分のある材料が配合されたものらしく飲み慣れた緑茶や棒茶、麦茶などにはない違和感を実休は懸念しているようだった。そのため無理にとは言わないけど…と言葉を付け足す。
しかし陸奥守にそれを断る選択肢は持ち合わせていなかった。せっかく用意してくれたものを無下に出来ない気持ちもあるが、知らないものに探究心が擽られたのだ。
「その好意、有り難くいただくとしよう」
「そうじゃな。わしも飲んでみたい!」
「俺も俺もっ」
ずいと一歩出る大包平に続いて陸奥守と八丁も「はい!」と手を上げて欲しいとアピールする。
「本当に?嬉しいなぁ。用意するから待っていて」
三人の言葉に安心したように手に持っていた袋から紙コップを取り出すと、下駄箱を台代わりにして3つ置く。そこへボトルの中の薬草茶を注いでいった。
「あ。主」
注ぎ終えて振り向いた時に道場から出てくる主が見えたらしい。その声に陸奥守達も振り向けば、赤羽もちょうどこちらに気付いて顔を向けたタイミングだったようだ。しずしずと歩く動きが一瞬止まった。
一斉に向けられた4人分の視線に驚いているようにも思えたが、残念ながら表情からそれは読み取れない。
「主もどうかな。薬草茶、飲んでいかない?」
黙したまま歩み寄ってくる赤羽に声をかけたのは実休で、赤羽は少しだけ実休の目を見てから、
「ありがとう。いただくよ」
そう静かな声で言ってうなずいた。
それに実休は嬉しそうにして、1人分追加された紙コップにも注ぎ終えると薬草茶を一人一人に手渡していった。
「へ~これが薬草茶。匂いは…意外と普通かもっ。香ばしい匂いがしてなんか美味しそう!」
「そうだな。薬草と言うから薬くさいものを想像していたが、これは良さそうだ」
八丁と大包平がうなずき合うように香りは悪くなく、漢方のような薬くささもなかった。
見た目も少し濃いめの麦茶のような色で、見慣れた茶の色には安心感がある。
「ちょうど飲みやすい温度になってるよ。冷たいものは飲みすぎると体に良くないからね」
「あ~…確かにのう」
実休の言うように確かに夏は暑さ凌ぎに冷たいものを摂りがちで、それは体を内部から冷やすため良くない。
刀剣男士は人より体は頑丈に出来ているし、怪我は手入で直ってしまうが病や疲労感は手入で拭えるものではなく日々の生活で回復させるしかない。それは低下した内臓機能も同じこと。
だからだろうか。ここにいる実休の他、薬研藤四郎や五月雨江など薬学に秀でた者や関心を持つ者が時々現れるのも、手入だけでは行き届かない刀剣男士の心身のメンテナンスのためなのかもしれない。
と、そこまで陸奥守が想像したわけではないが頻繁に冷たい水に頼っている自身に少しだけ反省して、実休秘伝の薬草茶で内臓を労ろうではないかと今だけ意識を高く持ってついでに紙コップも高く掲げた。
「それじゃあいただくとするぜよ!」
それが乾杯の音頭となり陸奥守達は一様に薬草茶をぐいと飲み込んだ。そして、
「「「 にっっっっが!!! 」」」
全員がこれまでに味わったことのない苦味に襲われた。
陸奥守はあまりの苦みに悶絶し膝から崩れ落ち、大包平と八丁も口やら喉やら抑え込ん目を白黒させている。
「実休!?」
「実休っ!!」
「実休さん?!」
三人は息を荒くしてこの激苦を振る舞った張本人に詰め寄った。この人畜無害な顔をした太刀が親切なふりをして一服盛ったと言うのか。陸奥守は信じられない思いで事情を聞き出したかった…のだが、
「なんでおんしもポカンとしとるんじゃあ…!」
当の実休もこの状況に首を傾げているから、陸奥守は問い詰める気持ちもなくして脱力した。
どうやら彼にも予想外な反応だったらしい。
眉をハの字にしながら自分でも薬草茶を飲んでみるが何でもなく飲みきってしまう。まばたきを繰り返しながら手にしたコップと陸奥守達とを交互に見て首を傾げた。
「ごめんね。僕にもわからないのだけど、もしかしたら僕は苦味に慣れてしまっているのかもしれない」
そう言って困ったように微笑む実休をもう陸奥守達は責めようとは思わなかった。
「き、気にするな…!先程は面食らったが分かっていればこのくらい、どうと言うことはない!」
「そうそう。それに初めて飲むもんを喉の渇きに任せて飲み込んだわしらの落ち度ぜよ」
それは仲間を信頼してるからこそひと息に飲み込めたわけなのだが、今は実休を責めないようどうにか自身の警戒のなさが招いた結果だということにしたかった。
「てか実休さんすごすぎっ。あれを平気で飲めるとか…俺まだ舌がおかしいよ~」
おどけてみせる八丁の言うとおり、一口飲んだだけなのに舌が痺れるような苦味はしつこく残っていた。
そして陸奥守ははっとして主の姿を探した。
苦味で忘れていたが赤羽もこれを振る舞われていたのだ。
「主飲んだか!?」
「苦い」
「そうじゃろうなぁ!」
端的に味の感想を述べる赤羽は苦いと言いながら表情も変えずに、その赤い瞳を実休に向けていた。
その視線の間に陸奥守は素早く入り込んで、「良薬口に苦しと言うやつじゃろうなあ!」と無理して豪快に笑ってみせた。
そんな陸奥守の隣に大包平も立ち並び、ぐっと奥歯を噛み締めながら真剣な眼差しで主を見据える。
「主!こいつに悪気はないんだ。だから今回は許してやってほしい!」
「なんか急に兄さん方が慌て始めた!そ、そんな実休さん守るようにしてどうしたの?!」
両手を広げて実休を守るようにする陸奥守と頭を下げる大包平の様子に、この急展開についていけない八丁はうろたえた。
「八丁、お前はまだ主の怪物的な一面を知らないらしいな。覚えておけ。主はやられたらやり返す人だ。軽薄にイタズラなどしようものなら絞められるから絶対にやるな!」
「えぇ!?何それ想像出来ない!」
どんな強敵を前にしても豪快に笑ってみせる大包平の真剣な表情と言葉に八丁は怖じ気づく。
「大丈夫。実休がわざとやったことじゃないのは、分かってる。何もしないよ」
「わざとだったらホントに締めるつもりなんだこの雇い主!」
大丈夫と言いながら大包平の言葉を否定しない赤羽にツッコミを入れながら八丁はうろたえた。
「実休は信頼してる。でも、次はどんな物か言うように」
「実休次は気をつけろ!さもないとこう…されるぞ!」
大包平は実休に振り返ると、自分の右手を広げて顔の高さまで上げるとそのまま下に振り下ろした。まるで掴んだ何かを地面に叩きつけるかのように。
「主にイタズラは厳禁だからのう」
通称"顔面砕き"のジェスチャーに陸奥守はわざとらしく震え上がった仕草をして実休に笑いかけた。
ちなみに陸奥守もこの技をくらった一人である。
若気の至り…と言うには最近すぎるが仲間と悪ノリして主にちょっかい出した結果である。
「ふふ…信頼されているのは嬉しいな」
「聞いているのか!?」
ほんわかと笑う実休に大包平は心配そうだ。
ちなみに大包平は主に悪ふざけするような真似はしないため彼女から制裁をくらった経験はない。だがその様を目の当たりしたことがあるため被害者を増やしたくないらしい。被害者は主なのだが。
「実休、ありがとう。ご馳走さま」
そんなことを話してる間に赤羽は薬草茶を飲みきり、実休に礼を言うと紙コップをゴミ箱に捨てて立ち去って行った。
「マジで!?飲みきったっ??まっったく苦そうにしなかったんだけど!てかなんでうちの雇い主ってあんなに感情ないの?!」
「それはわしも知らん」
残された陸奥守達は自分の手の中の物を見て、一口しか減っていない茶色の液体に苦い顔をする。
「大丈夫だ。もうあの苦みは覚えた。苦いと分かっていれば耐えられないわけがない。主は顔色変えずに飲んだのだ。大丈夫だ、大丈夫だ俺。大包平は刀剣の横綱。最も美しいとされる…」
コップの中を凝視しながらぶつぶつと自分に言い聞かせている大包平に実休は「そんなに無理して飲まなくてもいいんだけど」と声を掛けるがそれが大包平の腹をくくらせた。
「俺に出来ないことはない!!」
「うおおっ行ったぁぁぁ!!」
「大包平の兄さんカッケェェェッ!!」
ぐいっと一気にあおる大包平に陸奥守も八丁もテンション爆上がりである。
その後、苦みとの戦いで虚無顔となる大包平に続いて陸奥守と八丁も覚悟を決めて薬草茶を飲みきった。
もんどりを打つ陸奥守がどうしてこんなに苦いのか実休に聞いてみれば、
「あぁ…多分センブリが入ってるからかなぁ。あれはすごく苦いんだけど胃腸の働きを良くするそうだよ。夏場は食欲が落ちるみたいだから、少しでも役に立てるといいなって思って混ぜてみたんだ」
などと言うありがた迷惑な返答を聞くことになるが本人は良かれと思って用意してくれたのだ。
「この苦みのおかげで暑さを忘れられたわけやし、結果オーライと言うやつじゃな」
だから今日のことは笑い話として流してしまおう、と実休の両肩をガシッと掴んで笑って見せた。
「あとマジで主に変なもん飲ませたらいかんぜよ」
実のところそこが一番肝の冷えた陸奥守は、いつかとんでもない天然ボケをかましそうな新刃の身の安全のために、割とガチめに注意した。
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