とある本丸の日常会話 [完結]

小話その47「続・刀剣男士は未知の究明に乗り出したようです」

一一小話開幕前の注意点一一
※小話その1の解決編です
※刀剣男士の扱いに不穏な表現があります
※何でも許せる人向け
一一一一一一一一一一一一一





一縁側一
藤代「虫の鳴き声がしますね。夜は涼しいし、もう秋なんですねー」

桑名「そうだね。禊萩を飾るには遅すぎると思うけど、どうしたの?それ」

藤代「干される前に薬研さんから一本だけ貰いました。…先祖の供養とか、そうゆうの、俺にはよく分かりませんが亡くなったモノの為に飾るんですよね?」

桑名「うん。盆花として飾られるようだね。…誰か、亡くなったの?」

藤代「いや…まぁ、今さらですけどね。それに見頃の時期を外してるからか若干萎れてますし、一本だけですし、自己満ですけど」

桑名「・・・」

藤代「・・・」

桑名「・・・それは…さぁ、昼間の話に関係してる?南海先生や姫鶴さんの話に納得して、僕の話を信じてもらえたと思っていいの?」

藤代「・・・」

桑名「君はさ、最初から刀剣男士が原因ってわかってたんじゃないの?僕が、それを斬ったって知ったら困惑すると思って黙ってたんじゃないの?」

藤代「・・・」

桑名「夢の中の化物はとうに人の形はしていなくて、付喪神としての神気も失われていた。アレは刀剣の付喪神ではなくて、成り下がりだよ。だから、それを斬ったところで僕は一一」

藤代「・・・ふふ」

桑名「?」

藤代「いや桑名さんの為とか、俺はそんなお優しい人間じゃないですよ。…初めて夢の話しを聞かされた時からその可能性も十分にあり得るとは思いましたが…まぁ、正直なところ「だから?」と思いました。いえ、怪異の脅威から救っていただけたことは感謝しています。ですが、これ以上関わりたくないと言うのが本音でした」

桑名「・・・」

藤代「あはは、怒っていいとこですよ。俺は「怖い」と言ってあんたを避けてきましたが、本当に怖いと思っていたかどうか。「怖い」と言えばだいたい必要以上に踏み込まれないから、言い訳の為に使ってきたような気がします」

桑名「・・・。ううん、怒らないよ。君は今、「関わりたくないのが本音でした」って言ったよね?
"でした"ってことは、前はそうだったけど今は違うってことだよね」

藤代「・・・そんな言葉尻に反応せんでください」

桑名「それにね、君は禊萩の花で誰かを供養しようとしているよね。作法を知らないけど、そうしたいと思う心の変化は大事だよ」

藤代「・・・」

桑名「人払いしてまで僕をここへ呼んだんだから、話したいことがあるんだよね。何でも思いの丈を吐き出していいよ」

藤代「・・・、・・・はぁぁ。怒られんの覚悟で話したのに予想外に懐が広い」

桑名「あはは。怒るどころか、今は嬉しいよ。君がようやく僕の話に耳を傾けてくれるようになったんだからね。長かったなぁ…なかなか信じてくれないからもう…信じるしかないくらい話し聞かせるか、証拠を差し出すかしかないと色々手を尽くしたからね」

藤代「う、うん…桑名さんも諦めが悪いと言うか頑固者と言うか…理詰めで来る姿勢には狂気すら感じました」

桑名「ありがとう」

藤代「褒めてはないです」

桑名「一一それで、話したいことがあるんじゃない?」

藤代「・・・」

桑名「・・・」

藤代「夢の化物…のことです。夢のことは本当に覚えてないので分かりませんが、怪異になってまで俺を恨みたい刀剣男士なら覚えがあります」

桑名「それは」

藤代「・・・俺の、本職の方で、救えなかった刀剣男士の皆さんです」




藤代「一一正直、任務先は地獄です。政府内の刀剣男士は激しい戦いに傷つくことが多いので手入れの頻度も自然と高くなりますが、そこの男士は軍隊のように鍛えられてますから、手入れ頻度はあっても文句を言われないだけやりやすい。ですが・・・」

桑名「放棄された、問題のある本丸一一」

藤代「そこは怨念が酷いです。手入れに行くので血が流れているのは当たり前なんですが、それだけでなく吐瀉物や汚物などから発生した虫、黴、病原菌などなど…臭いも酷く、そんな環境の中で怪我を治してもらえず苦しみ悶える刀剣男士に最早理性なんかあるわけもないんです。そんな状態にして放置している審神者を恨み、引いては人間そのものを恨んでます。それをね…どうにかこうにか治してやんのがホンッット骨が折れる…」

桑名「よくそんなところに行って無事だよね…」

藤代「命冥加とは、よく言われます。物心つく頃からやってるんで病気なんかの耐性…免疫って言うのかな、それのおかげで人間には毒となる刀剣男士の病も罹りにくいようです」

桑名「いやぁ…無事と言うのは、体のこともそうだけど心のほうがさ、しんどくない?」

藤代「・・・、心はすでに死んでいます」

桑名「え?」

藤代「あはは、冗談です。慣れとは恐ろしいものです。治しに行っても、救えない人たちもたくさんいます。それも割と当たり前になっていて、その状況に慣れてしまった俺の心を恨んで憑いてきたのが夢の化物の正体ではないかと、俺は考えています」

桑名「・・・」

藤代「でももういないんですよね?桑名さんが斬ってくれた」

桑名「うん・・・」

藤代「それに当時はいなかった鬼丸さんが今はこの本丸にいます。鬼に執着しているので、何かあれば対処してくれるそうです。だから、もう心配しなくても大丈夫ですよ」

桑名「・・・藤代は、強いなぁ」

藤代「?…俺は弱いですよ」

桑名「心が擦りきれても、そこから逃げないんだから強いよ。救えなくても、救えたモノもある。恨まれても、感謝してくれてるモノもいる。それにきっと守られてるんだよ。命冥加というなら、守ってくれてる神仏もきっと刀剣の付喪神だね」

藤代「・・・。どうでしょうね。そうであれば、桑名さんが俺の夢に現れたというのもその付喪神のお導きでしょうか」

桑名「あ・・・どうだろう。そうは考えなかった」

藤代「顕現前ですし、まだ自由が利く状態だったんじゃないですか?正解はわかりませんが」

桑名「うん。そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれないけど・・・それでいいのかもね。全部、僕らの推測でしかなくて正解がない。君のその理屈っぽい考えは、つい賛同したくなるよ」

藤代「えぇ…?理屈っぽいのは桑名さんだけで、俺のはデタラメですよ」

桑名「あはは。でも君はどこか僕に似ている気がする。だから君のもとに引き付けられて、君の傍は居心地がいいのかな」

藤代「・・・男士に言われても嬉しくないなぁ」(ボソッ)

桑名「え、なに?」

藤代「近い近い。急に距離詰めてこないでください」

桑名「・・・」

藤代「?」

桑名「南海先生が、言ってたんだよね。刀剣男士の魂は何処へ行くのかなって。・・・審神者の技で励起された僕らの魂は、物語に還るのかな」

藤代「どうでしょうね」

桑名「願わくは、彷徨わないで在るべきところへ行けるといいよね」

藤代「一一そうですね」



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小話その1の解決編終了です。
本当のところは分からないけど、ふたりが納得できる答えを出してくれたらいいなと思います。
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