とある本丸の日常会話 [完結]

小話その38「本丸の住人は高みを目指すようです」


一道場一
赤羽「・・・・・・」

獅子王「よっ。監督!選手の調子はどうだ?」

赤羽「・・・監督?」

獅子王「なんてな!へへっ、じょーだんだぜ。ほら、主はいつも壇上で俺たちを見てっからさ。なんか監督みてーだよな」

赤羽「そう…」

獅子王「そうそう。・・・さってと、主。隣座ってもいいか?」

赤羽「うん。いいよ」

獅子王「よっしゃ。・・・で?」

赤羽「?」

獅子王「じっと見てたが、気になる奴でもいたのか?」

赤羽「そうだね…。今は、祢々切丸を見ていたよ」

獅子王「祢々切丸か~。ちょうど手合わせ終えて休憩入ったとこだな。うーん、改めて見てもあの体格は羨ましいぜ。大太刀でもって山の神!だからな。体はでけーし筋肉量も半端ねぇ!」

赤羽「うん。体格というのは大事」

獅子王「だよなぁ・・・俺も太刀だが、他の連中と比べてちょーっと小せぇんだよなぁ。体も細いし・・・や、いいんだぜ?黒漆太刀拵ってカッコいいし。な!主」

赤羽「そうだね」

獅子王「・・・、・・・あー、でも主もさ、やっぱ筋骨隆々な方がいいのか?ほら、頼れる感じというか、守られたいというか」

赤羽「そうだね…憧れる」

獅子王「そうかぁー」

赤羽「…祢々切丸には、前にしただけで圧倒される絶対的な強さがある。敵に畏れを抱かせる。味方には安心感を与える」

獅子王「あぁー・・・うん。そうだな」

赤羽「…私にはないもの。だから、憧れる」

獅子王「え?」

赤羽「私も体が小さい。鍛えるにも限界はある。鍛えても、祢々切丸のようにはなれない」

獅子王「え、憧れるってそっちの意味?・・・って、いやいやいや!いくら憧れても主はあれ目指しちゃダメだかんな!?」

赤羽「うん。この体では無理。私が男なら、目指せたかもしれない」

獅子王「う、うーん・・・祢々切丸みたいな主ってのは想像つかねーけど、なんか嫌一一」

小烏丸「一一これ、二人とも。見た目で相手を量ってはいけないぞ(すとーん)」

獅子王「ぅおわぁっっっ!!あんたどっから降ってきてんだよ!?」

小烏丸「なに、天井にちょうど良い止まり木があってな。そこから話を聞かせてもらったわ」

獅子王「止まり木って、どこよ」

赤羽「身軽」

小烏丸「ほほ…そうだろう。我は太刀の刀剣男士であり、この国のすべての刀剣の父であるが、同時に日本刀が今の形となる過渡期にあたる刀剣でもある。故にこのように童の姿で励起された」

赤羽「うん…」

小烏丸「この姿は小さい細いと嘆いておったそこな子よりも更に小さい。が、剣技の冴えは子らには負けぬよ。この体故の身軽さもある。強さとは見た目からは量れぬものなのだぞ?」

獅子王「それは、わかるけどよ~」

赤羽「・・・」

小烏丸「侮られるのは嫌か?」

赤羽「見た目で戦意を削ぐのは、大事」

小烏丸「だが見た目で欺けば、相手の油断も誘えよう」

赤羽「それも、道理」

小烏丸「ほほ…主は物分かりが良い一一・・・というよりもこれは、いくさ場を知っている者の目だの(ブツブツ)」

赤羽「・・・」

獅子王「?(なんかブツブツ言ってんな)」

小烏丸「獅子王も」

獅子王「え?!なに、俺??」

小烏丸「鵺がいるのだからそれを上手く使役し立ち回れ。使える物は使う。それが戦よ。持てぬものに憧れるより、己に出来る最大限の活躍をするのだぞ?父から言えることは、それだけよ」

獅子王「そんなの、言われなくても分かってる・・・って、どこ行くんだ?とつぜん降ってわいて、説教垂れたらもう本丸に戻んのか?」

小烏丸「いやいや。せっかくだから持てぬものと少し戯れてこようかと思うてな。なに、子との触れあいも父の勤めよ」

獅子王「ふれあい・・・って!まさか!?」

小烏丸「ほほほ」

獅子王「おい、待てって!迷惑になるからやめろ・・・って聞いちゃいねぇ!!あ~、もうっ」

赤羽「…いこうか」


・・・・・・・・・・・・


獅子王「・・・、あんた、なにしてんだよ」

小烏丸「新たな止まり木の居心地の確認よ。なに、鳥としての本能よな」

獅子王「いやあんた鳥じゃねぇから!!…ホント、鶴丸といいあんたといい、鳥太刀は何しでかすか予想もつかないよ…」

小烏丸「これ、偏見はよさぬか。真面目にしている山鳥毛がかわいそうであろう」

獅子王「いやあの人はあの人で…ってそう思うならやめてやれよ!!そんでもって、祢々切丸もなんでそいつ肩に乗せてんの!?」

祢々切丸「うむ?この肩に乗りたがる者も多いのでな、日常と化していた」

獅子王「マジかーい」

小烏丸「獅子王。お主もこの祢々切丸の肩を借りると良い」

獅子王「いやあんた何言って一一一」

小烏丸「己にないものの視点がわかるというのも、また学びよ。この視点から気付くこともたくさんあろう」

獅子王「・・・て、さもそれっぽいこと言ってるけど楽しみたいだけじゃねーの?そもそも祢々切丸の意見なにも聞いてねぇじゃん。イヤならイヤって言っていいんだぜ?」

祢々切丸「我に異論はない。この肩に乗りたいのであればいつでも応じよう」

獅子王「体だけじゃなくて器もでけー」

赤羽「祢々切丸。私も乗せてほしい」

獅子王「主っ??」

祢々切丸「相分かった。屈むので、少し待たれよ」

赤羽「うん」

小烏丸「では、我は下りるとしよう」

赤羽「ありがとう」

獅子王「主、本気か?本気なのか。ときどき妙な行動力があるよな。豆まきの時とかさ」

赤羽「大太刀の視点は滅多に体験出来ない。小烏丸の言うように視点の違いは知っておきたい」

獅子王「そこ同調しちゃったかー」

祢々切丸「一一・・・うむ。では主、立ち上がる。しっかり掴まっているのだぞ」

赤羽「うん」

獅子王「・・・、・・・おー!こうして改めて見上げると、確かに圧がすげぇな。巨人だわ。主が小人に見えるな!」

小烏丸「主は我とそう変わらぬ背丈よな?」

赤羽「うん。だから、この景色は新鮮。これが、大太刀の世界」

小烏丸「高きところは何処までも見渡せるようで、壮快よな。そうは思わぬか、主」

赤羽「そうだね。鳥になった気分。…祢々切丸」

祢々切丸「うむ?」

赤羽「祢々切丸は背後にも目がある?」

祢々切丸「む・・・問い掛けの意図が分からぬが、我の背後に目はないな」

赤羽「さっきの手合わせ、見てた。背中に目があるみたいだった。こうしてこの高さにいて、改めて大太刀の弱点は足元や背後だと分かる。この体格では死角も多くなる」

祢々切丸「む・・・」

赤羽「これは、誰もが予想すること。だから、誰もがそこを突く。でも、祢々切丸は背中に目があるように見えた。すごい」

祢々切丸「己が弱点は己が一番分かっている。数多の戦場へと赴き、経験を積み、対応する術を構築してきたつもりではある。だが、やはり背後の事ははっきりとは分からぬな」

赤羽「勘がいいんだね…経験則は大事。いいね」

祢々切丸「ふっ・・・いや、こうも主から誉められるのは些かむず痒いな。この感覚だけは人の身を得て幾許経とうと慣れぬものよ」

赤羽「…多分、祢々切丸と対峙した敵は、この巨体に怯む。それは、一秒足らずの、わずかな時間。そこを突く」

祢々切丸「うむ。我もそこは意識している。なるべく隙をなくすよう動き、我に意識が向く間に他の者らが背後から討ち取ってくれたりな。戦場では一筋縄では勝てぬ場面が多いものだ」

赤羽「うん。祢々切丸は、ちゃんとしてる。この調子で、これからもよろしく・・・」

獅子王「主がホントに監督してるわ」

小烏丸「・・・ふむ」

赤羽「祢々切丸は、私にないものを持っている。この体格に、憧れる。…羨ましい」

獅子王「はっ!!…あ、主!あんた諦めてねーな!?だからダメだって言ってんだろー!ムッキムキの主なんてイヤだからな!!」

赤羽「分かってる。祢々切丸は物理的に、無理」

獅子王「そ、そうか」

赤羽「だから同田貫を目指す」

獅子王「だから同田貫を目指す?!・・・だ、ダメだーーーッ!!!なんでそんなムキムキを目指そうとすんだよ!?」

赤羽「?…小烏丸も、自分の最大限の努力をするべきと、言っていた」

獅子王「そこでどうして同田貫になるんだよっ」

赤羽「・・・、・・・なるほど。目指すなら背丈の近い厚にした方がいいと一一一」

獅子王「じゃなくてぇ!アドバイスしたいわけじゃなくてぇー!!だからずっと言ってるけどムキムキの主を見たくないんだってば~~!」


一一一一一一一一一一











祢々切丸の肩に乗っている主を見た山鳥毛が「小鳥が本当に小鳥になっている」と呟いたとか呟かなかったとか・・・
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