とある本丸の日常会話 [完結]
小話その34「本丸の住人が足止めをくらったようです」
一執務室一
藤代『一一この大雪の影響で山間部は通行止め、本丸への道も閉ざされていて帰還には時間がかかりそうです。市街は除雪されていたので加賀国支部までは雪の影響も少なかったのですが・・・しばらくはこちらで待機せよとのことです。こんな状況とは言え赤羽様の側に居られないことが残念でなりません』
赤羽「しーちゃん、大変だったね。こちらは大丈夫。みんなで雪かきをして、里までの道は確保している。心配しないで、しーちゃんは体を休めてほしい」
藤代『!!…あ、赤羽様の慈悲深いお言葉が、あたたかすぎて、身に染み入りすぎて、・・・ヤバイ、泣きそう』
水心子「大袈裟な・・・」
清麿「でもホントにちょっと泣いてるかも。ろく太くん、心身共に相当まいってるみたいだね」
藤代『・・・、・・・はぁぁ。ろく太くんやめて』
水心子「反論する気力はまだありそうだな」
赤羽「しーちゃん、大丈夫?」
藤代『大丈夫です!今ので元気が出ました!今なら走って本丸まで行けそうな気がしますっ!』
赤羽「ううん。待機して」
藤代『はいっ!』
水心子「記録役はこんな時でも相変わらずなのだな。真面目なのかふざけているのか」
藤代『俺は赤羽様に"だけ"は全力で真面目です』
水心子「だけ、を強調するな記録役!・・・まったく、刀剣の付喪神たる私達も敬うべき相手であろう」
藤代『キヨえも~ん。どこでも行けるドアで迎えにきてよー』
水心子「人の話を聞かないか、記録役!」
清麿「ごめんね、ろく太くん。あれは問題があって回収されてしまったんだ」
水心子「何故すぐ順応出来るのだ、清麿・・・!」
清麿「ははっ、この子は「ろく太くん」って呼ばれるの嫌がるからね。必ず何か仕掛けてくると思ってたんだ」
藤代『あっはは、読まれてましたか。でもノってくれてありがとうございます。・・・はぁ~、早く本丸に帰りた一一一」
??『・・・シロ』
藤代『ぅえっ!!』
赤羽「?」
水心子「なんだ?」
清麿「誰か来たみたいだ」
??『私用目的での通信機利用は感心しないな』
藤代『は?私用じゃないし…ってかいつからそこに?』
??『今先だ。ノックもしたはずだが、聞こえなかったのか』
藤代『してない』
??『した』
藤代『・・・』
??『・・・』
赤羽「しーちゃん。誰?」
藤代『あ!はい。その、こちらでお世話に・・・ちょっ、押さな一一』
長谷部『(ズイッ)へし切長谷部です。お初にお目にかかります。赤羽、様』
・・・・・・
藤代『近いし・・・』
長谷部『仕方ないだろう。寄らなければ画面に収まらないのだからな』
藤代『・・・』
水心子「(険悪・・・)」
清麿「(ろく太くん露骨に嫌そうだ・・・)」
赤羽「へし切長谷部。しーちゃんの任務に同行する、政府の精鋭部隊の一人」
長谷部『ご存知でしたか。はい、その通りです。あなたの大切な記録役の守護を任されている、そのへし切長谷部です』
赤羽「しーちゃんを守ってくれて、ありがとう」
長谷部『主命ですから』
清麿「(にこにこしてるけど)」
水心子「(どこか、いけ好かないな)」
赤羽「しーちゃんに用事があるのなら、先に済ませてくれて、いい」
長谷部『はい。貴重な時間をいただきまして恐縮です。一一シロ、これを』
藤代『いやそこは遠慮するべきでしょう?!何勝手に押し入ってきて用件済ませようとしてるんですか。後でいいでしょう!後で!」
長谷部『お前の主は先に済ませて良いと言っているが?』
藤代『そこを丁重にお断りして図々しくも会話を中断させたことを平謝りしながら部屋から出ていけと言っているんですよ』
長谷部『政府の通信機を使って世間話をしていただけなら、先に俺の話しを聞け。時間の無駄だ』
藤代『言い方!』
長谷部『そっくりそのまま返す。・・・ほら、さっさと受け取れ』
藤代『はぁ・・・、・・・、・・・これは?』
長谷部『蝋梅だ。先日の、あの本丸が解体された。今は改修工事に入っている。あそこもすぐに次の審神者が着任するだろう』
藤代『その話し今する?…いや、とっとと済ませよう。そうですか。それで、この花は』
長谷部『庭がかなり荒れて酷い有り様だっただろう。庭師が手入れをして、剪定したものだ』
藤代『そうですか。それで、何故ここに』
長谷部『主が捨てるには勿体ないと枝をいくつか貰ったらしい。我らにも与えてくださったのだが、俺達が持っていてもどうしたらいいか分からないからな。お前にくれてやる。本丸にでも飾るといい』
藤代『・・・。・・・赤羽様、どうしましょう』
赤羽「いいよ。本丸に飾ろう」
水心子「我が主。・・・あれは、そう易々と受け入れていいものなのだろうか。解体、の意味を承知の上か」
赤羽「あの花は安全。それに、あの花はそこで、咲こうとしていた。生きようとしている植物に、罪はない」
藤代『・・・!!赤羽様!なんとお優しい!慈悲の心に救われたこの花も喜びで今にも咲き誇りそうです!』
長谷部『・・・お前、本丸ではいつもそんな調子なのか?』
清麿「だいたいいつもそんな感じだよ」
長谷部『・・・』
水心子「(目に見えて呆れている)」
清麿「(知らないんだな)」
藤代『なんですか』
長谷部『いや。それと、もうひとつ。帰還の際には俺たちも同行することとなった』
藤代『え。やだ』
長谷部『主命だ。雪道は危険だと主が判断された』
水心子「確かに、記録役一人では危険すぎる。共の必要性は私も感じるな」
清麿「そうだね。水心子の言う通りだよ。そちらの審神者のご厚意に甘えて送られてきなよろく太くん」
赤羽「しーちゃん、そうしてほしい」
藤代『はい!赤羽様がそうおっしゃるのなら』
水心子「我が主の言葉だけは素直に聞くんだよな…」
赤羽「へし切長谷部。こちらは歓迎する。しーちゃんのこと、お願いする」
長谷部『あなたに言われなくとも、主からの言い付けは守りますよ。・・・では、決まりだな。帰還の許可が出るまでここで大人しく待機するように。通信機の私用はほどほどにな』
藤代『・・・はい、はい』
長谷部『では、失礼する』(バタン)
藤代『はー、やっと出ていった。すみません。通信中に乱入とか何を考えているのやら・・・お騒がせしました』
赤羽「ううん。しーちゃんが、外でも上手くやれてることが分かった。良かった」
水心子「あぁ。どこにいてもその図太さは変わらないようだ」
清麿「そうだね。どこにでも馴染めるって良いことだよね」
水心子「いや、そういうことが言いたいわけでは…」
藤代『どこに行っても、刀剣男士の勝手気ままさには振り回されてきましたからね。図太くもなる』
赤羽「しーちゃん」
藤代『はいっ』
赤羽「蝋梅の花言葉、知ってる?」
藤代『はな、ことば?・・・すみません。詳しくなくて』
赤羽「慈しむ」
藤代『え』
赤羽「私が知ってるのは、それ。他も、悪い言葉はなかったと思う。精鋭部隊はしーちゃんを守ろうとしてるよ。悪いことはない」
藤代『・・・』
水心子「確かに、主命を重んじる"へし切長谷部"が自分の主からいただいた物を他者へ…それも人へ差し出した時は、その違和感から裏があるのではと疑ってしまったが・・・それなら得心がいくな」
清麿「そんなところに気がつくなんて、やっぱり水心子はすごいよ。その花は他の隊員の分も含まれてるそうだし君は本当にどこでも馴染めちゃうんだね」
藤代『いや多分、面倒で押し付けただけ一・・・』
清麿「え。主の言葉を否定するんだ」
藤代『赤羽様の言う通りだと思います!』
清麿「あははっ」
水心子「(清麿は時々、意地が悪いな・・・)」
赤羽「一一・・・足止めも、悪くないね」
一一一一一一一一一一一
北陸の方、雪が酷いですね。
余談ですが、「キヨえもん」「ろく太くん」は小話その20からのあだ名です。
一執務室一
藤代『一一この大雪の影響で山間部は通行止め、本丸への道も閉ざされていて帰還には時間がかかりそうです。市街は除雪されていたので加賀国支部までは雪の影響も少なかったのですが・・・しばらくはこちらで待機せよとのことです。こんな状況とは言え赤羽様の側に居られないことが残念でなりません』
赤羽「しーちゃん、大変だったね。こちらは大丈夫。みんなで雪かきをして、里までの道は確保している。心配しないで、しーちゃんは体を休めてほしい」
藤代『!!…あ、赤羽様の慈悲深いお言葉が、あたたかすぎて、身に染み入りすぎて、・・・ヤバイ、泣きそう』
水心子「大袈裟な・・・」
清麿「でもホントにちょっと泣いてるかも。ろく太くん、心身共に相当まいってるみたいだね」
藤代『・・・、・・・はぁぁ。ろく太くんやめて』
水心子「反論する気力はまだありそうだな」
赤羽「しーちゃん、大丈夫?」
藤代『大丈夫です!今ので元気が出ました!今なら走って本丸まで行けそうな気がしますっ!』
赤羽「ううん。待機して」
藤代『はいっ!』
水心子「記録役はこんな時でも相変わらずなのだな。真面目なのかふざけているのか」
藤代『俺は赤羽様に"だけ"は全力で真面目です』
水心子「だけ、を強調するな記録役!・・・まったく、刀剣の付喪神たる私達も敬うべき相手であろう」
藤代『キヨえも~ん。どこでも行けるドアで迎えにきてよー』
水心子「人の話を聞かないか、記録役!」
清麿「ごめんね、ろく太くん。あれは問題があって回収されてしまったんだ」
水心子「何故すぐ順応出来るのだ、清麿・・・!」
清麿「ははっ、この子は「ろく太くん」って呼ばれるの嫌がるからね。必ず何か仕掛けてくると思ってたんだ」
藤代『あっはは、読まれてましたか。でもノってくれてありがとうございます。・・・はぁ~、早く本丸に帰りた一一一」
??『・・・シロ』
藤代『ぅえっ!!』
赤羽「?」
水心子「なんだ?」
清麿「誰か来たみたいだ」
??『私用目的での通信機利用は感心しないな』
藤代『は?私用じゃないし…ってかいつからそこに?』
??『今先だ。ノックもしたはずだが、聞こえなかったのか』
藤代『してない』
??『した』
藤代『・・・』
??『・・・』
赤羽「しーちゃん。誰?」
藤代『あ!はい。その、こちらでお世話に・・・ちょっ、押さな一一』
長谷部『(ズイッ)へし切長谷部です。お初にお目にかかります。赤羽、様』
・・・・・・
藤代『近いし・・・』
長谷部『仕方ないだろう。寄らなければ画面に収まらないのだからな』
藤代『・・・』
水心子「(険悪・・・)」
清麿「(ろく太くん露骨に嫌そうだ・・・)」
赤羽「へし切長谷部。しーちゃんの任務に同行する、政府の精鋭部隊の一人」
長谷部『ご存知でしたか。はい、その通りです。あなたの大切な記録役の守護を任されている、そのへし切長谷部です』
赤羽「しーちゃんを守ってくれて、ありがとう」
長谷部『主命ですから』
清麿「(にこにこしてるけど)」
水心子「(どこか、いけ好かないな)」
赤羽「しーちゃんに用事があるのなら、先に済ませてくれて、いい」
長谷部『はい。貴重な時間をいただきまして恐縮です。一一シロ、これを』
藤代『いやそこは遠慮するべきでしょう?!何勝手に押し入ってきて用件済ませようとしてるんですか。後でいいでしょう!後で!」
長谷部『お前の主は先に済ませて良いと言っているが?』
藤代『そこを丁重にお断りして図々しくも会話を中断させたことを平謝りしながら部屋から出ていけと言っているんですよ』
長谷部『政府の通信機を使って世間話をしていただけなら、先に俺の話しを聞け。時間の無駄だ』
藤代『言い方!』
長谷部『そっくりそのまま返す。・・・ほら、さっさと受け取れ』
藤代『はぁ・・・、・・・、・・・これは?』
長谷部『蝋梅だ。先日の、あの本丸が解体された。今は改修工事に入っている。あそこもすぐに次の審神者が着任するだろう』
藤代『その話し今する?…いや、とっとと済ませよう。そうですか。それで、この花は』
長谷部『庭がかなり荒れて酷い有り様だっただろう。庭師が手入れをして、剪定したものだ』
藤代『そうですか。それで、何故ここに』
長谷部『主が捨てるには勿体ないと枝をいくつか貰ったらしい。我らにも与えてくださったのだが、俺達が持っていてもどうしたらいいか分からないからな。お前にくれてやる。本丸にでも飾るといい』
藤代『・・・。・・・赤羽様、どうしましょう』
赤羽「いいよ。本丸に飾ろう」
水心子「我が主。・・・あれは、そう易々と受け入れていいものなのだろうか。解体、の意味を承知の上か」
赤羽「あの花は安全。それに、あの花はそこで、咲こうとしていた。生きようとしている植物に、罪はない」
藤代『・・・!!赤羽様!なんとお優しい!慈悲の心に救われたこの花も喜びで今にも咲き誇りそうです!』
長谷部『・・・お前、本丸ではいつもそんな調子なのか?』
清麿「だいたいいつもそんな感じだよ」
長谷部『・・・』
水心子「(目に見えて呆れている)」
清麿「(知らないんだな)」
藤代『なんですか』
長谷部『いや。それと、もうひとつ。帰還の際には俺たちも同行することとなった』
藤代『え。やだ』
長谷部『主命だ。雪道は危険だと主が判断された』
水心子「確かに、記録役一人では危険すぎる。共の必要性は私も感じるな」
清麿「そうだね。水心子の言う通りだよ。そちらの審神者のご厚意に甘えて送られてきなよろく太くん」
赤羽「しーちゃん、そうしてほしい」
藤代『はい!赤羽様がそうおっしゃるのなら』
水心子「我が主の言葉だけは素直に聞くんだよな…」
赤羽「へし切長谷部。こちらは歓迎する。しーちゃんのこと、お願いする」
長谷部『あなたに言われなくとも、主からの言い付けは守りますよ。・・・では、決まりだな。帰還の許可が出るまでここで大人しく待機するように。通信機の私用はほどほどにな』
藤代『・・・はい、はい』
長谷部『では、失礼する』(バタン)
藤代『はー、やっと出ていった。すみません。通信中に乱入とか何を考えているのやら・・・お騒がせしました』
赤羽「ううん。しーちゃんが、外でも上手くやれてることが分かった。良かった」
水心子「あぁ。どこにいてもその図太さは変わらないようだ」
清麿「そうだね。どこにでも馴染めるって良いことだよね」
水心子「いや、そういうことが言いたいわけでは…」
藤代『どこに行っても、刀剣男士の勝手気ままさには振り回されてきましたからね。図太くもなる』
赤羽「しーちゃん」
藤代『はいっ』
赤羽「蝋梅の花言葉、知ってる?」
藤代『はな、ことば?・・・すみません。詳しくなくて』
赤羽「慈しむ」
藤代『え』
赤羽「私が知ってるのは、それ。他も、悪い言葉はなかったと思う。精鋭部隊はしーちゃんを守ろうとしてるよ。悪いことはない」
藤代『・・・』
水心子「確かに、主命を重んじる"へし切長谷部"が自分の主からいただいた物を他者へ…それも人へ差し出した時は、その違和感から裏があるのではと疑ってしまったが・・・それなら得心がいくな」
清麿「そんなところに気がつくなんて、やっぱり水心子はすごいよ。その花は他の隊員の分も含まれてるそうだし君は本当にどこでも馴染めちゃうんだね」
藤代『いや多分、面倒で押し付けただけ一・・・』
清麿「え。主の言葉を否定するんだ」
藤代『赤羽様の言う通りだと思います!』
清麿「あははっ」
水心子「(清麿は時々、意地が悪いな・・・)」
赤羽「一一・・・足止めも、悪くないね」
一一一一一一一一一一一
北陸の方、雪が酷いですね。
余談ですが、「キヨえもん」「ろく太くん」は小話その20からのあだ名です。
