とある本丸の日常会話 [完結]

小話その33「本丸の住人が新年を迎えたようです」


一食堂一
大般若「おや!なんだなんだ。こんなところにいたのかい。そりゃ見つからないわけだ」

加州「あ。大般若だ。あけおめー」

大和守「ことよろー」

大般若「はいはい、おめでとさん。ああ、先に言っておくがお年玉をねだってくれるなよ、若人たち?・・・短刀達に毟り取られてきたばかりでなぁ」

加州「えー。短刀より俺らの方が若いのにー?」

大和守「僕らもお年玉ほしいなぁ、大先輩ー?」

大般若「だから素寒貧だって言っているだろう。そんなに欲しけりゃ、今現在大金(たいきん)持ちの短刀達にねだってくればいい。特に大先輩の今剣は先輩風吹かせながらくれるかもしれないなぁ」

加州「ちょっ!ははっ!絵面ヤバッ!!」

大和守「見た目小さい子に無心するとか良心が痛むよねー。どうせお菓子に使うだろうからその時に御用改めに行こうかな」

加州「良心どこ行ったよ。てか、ねだりに行くこと「御用改め」って言うなよ!」

赤羽「…それで、大般若。どうしたの」

大般若「ああ、そうそう。あんたを探してたのさ。あちこち探し回って、クタクタになったから食堂で一休み~・・・と思ったら」

加州「食堂に居たってわけ」

大和守「僕らもさっき来たばかりだから、あちこちで入れ違いになってたのかもね」

大般若「それじゃあ大人しくここで待ってりゃ良かったんだなぁ。外はひどく雪が積もっていたから、これじゃあ出陣どころじゃなさそうだし…働きもんのあんたも今日くらいはゆっくり過ごすのかい?」

赤羽「そうだね…お昼まではそうする」

大般若「って、もうそろそろ昼時じゃないか。ゆっくり過ごせたのかい?」

赤羽「うん。遅れていた火入れを頼みに行きたいから、午後は鍛錬所まで雪かきするよ。だから、用件は今聞く」

大般若「そうかい。ギリギリ間に合ったようで良かった。実はあんたに一つ頼みがあってね。新年を祝うめでたい日に着飾ったその姿を、こいつに納めさせちゃくれないかい?」

赤羽「・・・」

大和守「あー、それってカメラだよね。陸奥守がヒマになると本丸内をゲリラ撮影するのに使ってるやつ。あいつ変な写真ばっか集めてんだよ。あと毛利が小さい短刀隠し撮りするために幾つか持ってた。たまに一期一振も噛んでる」

加州「ロクな使い方してる奴いないのな・・・。あんたが首から下げてんのずっと気になってたけど、写真撮る趣味があったなんてね。知らなかったなー」

大般若「まあ、俺は美しい物に目がないからな。こいつは絵にも描けない美しさ、そんな美しい物を美しいまま残しておけるんだ。スゴいだろう?俺が興味を引くのも納得な文明の利器さまさま!ってわけだ」

加州「真っ当な使い方してるようで安心したよ。でもあんたの興味って、壺とか皿とか、芸術品って言うの?そーゆーのだよね。主がキレイなのは超分かるけど、被写体が人間ってのは対象外じゃないの?」

大般若「美しいものはそれだけで琴線に触れるね。あんたは熱を感じさせない雪のように白い肌をしているが、それとは対照的に燃え盛る炎のような真っ赤な髪には目を引かれるな。そして感情のない人形のように整った相貌に嵌め込まれた生命を感じさせる血の色の双眸。そんな正反対の美が両立している存在などそうお目にかかれるものじゃあない。しかしあんたは移り変わりが早い人の子だ。今あるこの一瞬の美を納めたいと思うのは当然のことだと思わないか?・・・ってなわけで撮影おーけい?」

赤羽「・・・」

大和守「・・・」

加州「・・・はっ!待って。待って待って待って!」

大般若「うん?」

加州「あんたさー!芸術品を愛でるように主のこと口説くのやめてくんない?!」

大和守「突然のことで主の思考止まったから!主こうゆうの慣れてないから!」

加州「てかその言い方だとあんた普段から主のこと狙ってたんじゃないの?!ま、まさかそのカメラで主の隠し撮りしてたとか、あったり・・・?」

大般若「え」

大和守「おにいさ~ん?ちょっとカメラ貸してもらえるかな。撮影したもの見せてくれるだけでいいから」

大般若「おや!おやおやおや。なんだい俺を疑うのかい?大丈夫、安心しな。こいつには俺が美しいと思ったものしか写っちゃいないさ」

加州「そう言って自分の性癖に突っ走って変なもんしか撮らねー奴らがいるから安心出来ないんだよ!」

大和守「ほらほら。中を確認してみて何もなければ大般若に対する疑惑もなくなるわけだからさ、やましい気持ちがないなら見せられるでしょ?」

大般若「いやいや~、でもこれってアレだろ?ぷらいばしーの侵害って言うかさ、」

赤羽「本丸は治外法権…」

大般若「は?」

加州&大和「「 御用改めである!!! 」」

大般若「はああ~っ!?そんなご無体な~!!」


(間)


加州「なんだ。主の隠し撮りないじゃん」

大和守「たくさん撮ってあるけど、男士(ぼくら)の写真ばかりだね。・・・カメラ目線一つもないから隠し撮りなことは変わりないけど」

加州「あ、ホントだ。これとか俺と安定が手合わせしてるやつじゃん。いつ撮ったんだよ」

大般若「・・・だから、それが俺の思う「美」なんだ(ごにょごょ)」

大和守「え?」

加州「なんて?」

大般若「陸奥守や毛利に写真を見せてもらったことがあるんだ。撮られると意識した写真よりずっと生き生きとしたありのままの姿がそこにあることに感動したんだ」

大和守「隠し撮りだけどね?」

大般若「ははっ。それを言われたらなあ・・・まぁ、本来の俺達は刀で、そのほとんどが実際には振るわれたことの少ない美術品だ。その美しさはつまりは、撮られることを意識した美しさだ。それはそれで好ましく思う。だが、俺達はせっかく動ける刀になったんだ。動いてる姿こそ、今の俺達の本来の姿なんじゃないかって思ったわけで・・・それがその集大成ってわけさ」

加州「要するにこの本丸に盗撮魔が増えたってことね」

大般若「要約するとそうなるのかい?!おかしいな。今すごく真面目な話しをしたつもりだったんだけどなぁ・・・」

大和守「ところでさ、撮ったのホントにこれで全部?清光も言ってたけど主の隠し撮り一枚もないね。て言うか主の写真が一枚もないんだよね。一枚くらい写りこんでも良さそうなのに」

大般若「ああ、それなぁ。流石に俺達の主を無断で撮影するのは気が引けてしまってね。撮るなら許可を得てからにしようと思っていたのさ」

加州「そーゆーとこはちゃんとしてるんだ。それ陸奥守にも聞いてほしかったなー」

大和守「どうする?主、写真撮ってもらう?せっかく清光と篭手切が今年も綺麗に着付けてくれたわけだし。記念に」

赤羽「そうだね。・・・加州と大和守、二人も一緒なら、いいよ」

加州「お、やった!もちろんオーケイ!」

大和守「僕もいいよ。嬉しいな」

大般若「有り難き幸せ!・・・ってな。へへっ」




大般若「それじゃあ、いいかい?はい、チーズ」

三人「・・・」(ピタッ)

大般若「・・・って言ったら撮るから、そうしたら動かないでくれよ?」

加州「紛らわしい!!」

大和守「あはははっ」

赤羽「・・・」

大般若「悪い悪い。じゃあ次こそ本番」

三人「・・・」

大般若「はい、カマンベール」

大和守「っく、はは!なにそれーっ!」

加州「親父ギャグかよっ!」

大般若「(カシャッ)おー。いいねぇ!その表情。良いのが撮れたよ」

大和守「撮ったんだ!」

加州「えーっヤダヤダ!今の絶対変な顔してるヤツじゃん。撮り直しを要求しますっ」

大般若「そうでもないさ。いい顔してる」

加州「そんなテキトーなこと言って、動いちゃったからまともなの撮れるわけないじゃん。ちょっと見せて」

大和守「あ、僕も見たい・・・」

大般若「はいはい。そら」

加州&大和「「 あ! 」」

大般若「ほらな、いい顔してるだろ?」

加州「・・・うん」

大和守「・・・そうだね」

大般若「我らが主の、こんなにも愛らしい笑顔を写すことが出来るとはね。珍しいものが見れた」

赤羽「・・・?」

加州「うん。主が笑ってるとこなんてレアすぎ」

大和守「表情が変わること自体珍しいからね」

赤羽「・・・そう」

大般若「初笑いを拝めたなんてな、新年早々縁起がいいかもしれないな」

加州「でも」

大和守「うん」

加州&大和「「俺(僕)らブレてるからやっぱ撮り直して」」



一一一一一一一一一一

















この後しばらく、二人(主に加州)の満足がいくまで撮り続けたそうです。

(追記)
ちょっと細かい解説を挟みます(汗)
赤羽の言う「治外法権」は本来の意味は持たず、「本丸内では法律が機能していない」という、某世紀末的比喩ですが一一もちろん本丸が無法状態なわけがなく赤羽の冗談です。
ここの主は時折、嘘か本当か分からない冗談を口にします。
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