とある本丸の日常会話 [完結]

小話その31「刀剣男士は一番になりたいようです」


一執務室一
巴形「主。失礼する。就任四周年を祝いに来たぞ」

静形「俺たちで最後だ。ゆっくり語らおうではないか」

赤羽「そう…ありがとう。そこ、座っていいよ」

巴形「ああ」

静形「うむ」

加州「主~。ホントお疲れさま。みんな主を祝いたいって部屋に来るのは良いんだけど、流石に人数が多かったよね」

今剣「あるじさま。おつかれさまです」

赤羽「二人も、大変だったね。みんなを呼んでくれて、ありがとう」

今剣「それはいいんです。なにせぼくらは、あるじさまのさいしょのかたな。ほこらしいかぎりです」

加州「これからも初期刀らしくみんなをまとめてみせるよ。じゃ、あとは二人とゆっくり話しててよ。俺達夕餉の準備手伝ってくるからさ」

今剣「きょうはごちそうですよ~」

巴形「いや待て」

加州「ん?なに?」

今剣「どうしましたか?」

静形「お前たちこそゆっくりしていけ。今日はずっと働き通しではないか」

巴形「満足に主と話しも出来ていないはずだ。この本丸は刀剣男士の数も多い。これは加州も自分で言っていただろう。であれば人足も多い。一人二人いないところで変わらないだろうさ」

静形「お前たちは主の最初の刀であるのだから、大目に見てもらえるだろう」

加州「えっとー・・・」

今剣「あるじさま・・・」

赤羽「いいよ。加州と今剣も、話しをしよう」

加州「主がそう言うなら遠慮なく~」

今剣「しかたないですね。すこしのあいだだけですよ」

巴形「ふ・・・付き合ってくれること、感謝するぞ」

静形「ああ。これも我らの物語となる。語らいを楽しもうではないか」


・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


巴形「一一・・・おや?随分と話し込んでしまったようだ。外はすっかり暗くなっているな」

加州「日が落ちるの早いよねー。ここ、山に囲まれてるから日が隠れんの早いってのもあるけど」

静形「そうだな。ふもとの里の方でまだ日が差している所があるのが見えると、羨ましくなるな」

今剣「そろそろゆうげのじかんですね。いいかげん、歌仙あたりがどなりこんでくるかもしれません。ぼく、ちょっとていさつにいってきます」

加州「あ、今剣。俺も行く」

巴形「ああ、その前に・・・すまないな。最後に主に問いたいことがある」

赤羽「なに?」

加&今「「 ? 」」

巴形「主が本丸に来て四年経った今、主が最も大事に思う刀剣男士は誰だ」

赤羽「・・・」

静形「は・・・?」

加州「え、それ聞いちゃう?」

今剣「でりかしーがないんですか。あなたは」

巴形「俺も静形も逸話がない故、主だけが我らを刀剣男士たらしめる大切な存在なのだ。我らの物語はこの本丸から…その為には主のことを知らねばならぬ」

静形「お、俺もか?いや…確かにそうなんだが、何と言うか、急だな。俺はこの本丸の皆と過ごせればそれでいいし、一番を求めるつもりはないぞ…?」

巴形「俺も一番を求めているわけではない。勿論それが最上ではあるのだが、主の側仕えを狙…コホン。主の為になる行動が出来てこそ刀剣男士というもの。現時点での一番を手本とすれば、それに近づけよう」

加州「いや確実に一番になりたがってるよね。今、「狙ってる」って言いかけたよね」

巴形「かつては長谷部のみが好敵手と思っていたが、それは浅はかであったと気付いたのだ。主の信頼を得る者…それはやはり始まりの刀剣男士ではないか、と。つまり加州と今剣、お前達だ」

加州「もう隠そうともしないし!・・・俺も主の一番になりたいとは思うけどさー、でも多分それは俺じゃないよ?主が頼りとしてるの今剣だし」

巴形「ほう。では、今剣が一番に近い…」

今剣「いつわ・・・でんしょう・・・うっ、あたまが」

加州「い、今剣?!まさか修行を思い出して…!」

静形「な、なんだ?頭が痛むのか?あ、主・・・どうしたら。岩融を呼んでくるか?」

赤羽「今剣…」

今剣「な~んて、ぼくはあるじさまのかたなですよ。いまをいきるとうけんだんしなのです。かこなんかふりかえってやりませんよ!」

加州「て、それ鯰尾の決まり文句!」

今剣「えっへへ~。でも、あるじさまのいちばんはぼくでもありませんよ。というか、あるじさまのこたえなどきまりきっているではないですか。ね、あるじさま」

赤羽「うん。私は、私の刀剣男士を最も大事に思う。この本丸の皆が大切。"一番"で君達を縛れない」

加州「うん。・・・だってさ」

巴形「あいわかった。愚問であったわけだな。では主、明日の近侍は俺を指名するといい」

加州「なんでそうなるの?!」

巴形「主の為に行動出来る臣下となるには一番を手本とするのではなく、近侍としての経験を積むべきだ・・・という結論に今しがたなったであろう。であれば行動あるのみだ」

加州「そんな結論になったかな?!つか結論がどう転んでも近侍の座を狙う口実にしただろ絶対。ずるいずるい。主!明日の近侍は俺で!」

巴形「俺が先に話していただろうに、・・・一一」



今剣「・・・・・・」

静形「今剣?・・・部屋を、出てしまったな。何か心ここに有らずという様子だったが・・・」

赤羽「大丈夫…でも、心配に思うなら、着いていくといい」

静形「主・・・そうか。では、行ってくるぞ」


・・・・・・・・・


一講堂(会場設営中)一
今剣「んむ~~~っ」

藤代「・・・今剣さーん?手伝いに来たんですか、邪魔しに来たんですか、どっちですか」

今剣「じゃまをしにきました」

藤代「このやろう。会場作りがまだ出来てないんです。ひっついてないで座布団運び手伝ってくれませんか」

今剣「いいですよ。では、藤代。しゃがんでください」

藤代「え、なんで。はぁ・・・はい、しゃがみましたが、なに…うわっ!」

今剣「はいごとったり!」

藤代「ふざけてる場合じゃないでしょ!え、ちょ、ちょ!背中にしがみつくな。なに、おんぶ?」

今剣「すこしだけ・・・。すこしだけ、しつもんがあります」

藤代「はい?」

今剣「藤代の、もっともだいじにおもうとうけんだんしは、だれですか?」

藤代「・・・は?何ですか急に」

今剣「こたえなさい」

藤代「えぇー・・・最も大事?それは、」

今剣「・・・」

藤代「赤羽様ですね」

今剣「とうけんだんし、といってるでしょう!(ごんっ)」

藤代「痛い!頭突きすんなよ。な、何に於いても、俺にとっての一番は赤羽様です。だから、赤羽様が大切にしているモノは全てが尊いものであり、あの方の刀である刀剣男士の皆さんも俺にとっては大事な存在です。今剣さんも大切な存在です」

今剣「・・・それがこたえですか。さすがというべきか、おまえもあるじさまとおなじなんですね(小声)」

藤代「ん、なに?」

今剣「でも、わすれないでください。藤代のこえに、さいしょにこたえたのはぼくですからね」

藤代「はい・・・?」

今剣「ありがとうございました。では、おてつだいしますね。ざぶとんをはこべばいいんですか?」

藤代「ん?え?あ、はい。お願いします。・・・え、なんだったんだ」




静形「・・・ふむ。少し、元気になったか?伝承の刀もその存在に不安を覚えるのか。難儀なものだな」


一一一一一一一一一一一一一一一一















一番になりたい刀剣男士の話しでした。
31/50ページ