とある本丸の日常会話 [完結]

小話その13「続・本丸の住人と少し不思議な話」

一本丸・小道一
鯰尾「ふふんふんふん♪う~まとうば~ん♪」

骨喰「上機嫌だな」

鯰尾「ふふふ~。だってさ、久々の馬当番だぜ?馬はいいよな~馬は~」

骨喰「そうだな。馬はいいな」

鯰尾「・・・もうひと月近くもさ、うまやに近づくことすら禁止された時はさ・・・さみしくて、悲しくて、胸が張り裂けそうで」

骨喰「だがあれは兄弟が悪い」

鯰尾「反省してます。軽口は災いの元」

骨喰「・・・ん、兄弟。キンモクセイだ」

鯰尾「え?・・・ああ、ホントだ。匂いがする。裏庭のが風に乗ってここまで届いたんだな、きっと」

骨喰「ああ。随分離れているはずだが…いい香りだ」

鯰尾「ふふふ」

骨喰「どうした?」

鯰尾「いや?骨喰はキンモクセイが好きなんだなーって思って。匂いがするとよく立ち止まってるし」

骨喰「そうだったのか・・・だが、嫌ではない」

鯰尾「俺も嫌じゃないよ。それにこの匂いはなんとなく主に似てる気がするんだよなー」

骨喰「主殿に?」

鯰尾「そー、なんとなくだけど。ひっそりと佇んでいるのに本丸のどこにいても存在感があって、見守ってくれてるような…安心感のある優しい匂い、だろ?それに気品がある」

骨喰「・・・」

鯰尾「主はさ、お喋りは得意じゃないけど俺達の話をよく聞いてくれて、答えがない時もあるけど不思議とそれでもこっちは満足だし…なんだろうな~…時々人間より花に近いように思えるから、まとめると主はキンモクセイ!」

骨喰「まとめ方が雑だが分からないでもない」

鯰尾「あざっす!」

骨喰「主殿がキンモクセイなら、俺が立ち止まってしまうのも仕方ない」

鯰尾「でしょ?で、逆によく喋るくせに存在感がない藤代はキンモクセイの匂いを遠くまで届かせようとする風だね。主の支援ならバッチリ!でも普段は空気!」

骨喰「なるほど。確かに風がなければ香りは広がらない。いい例えだと思う」

鯰尾「あざっす!!」

藤代「・・・一一やあ。骨喰さん、鯰尾さん」

骨喰「ひ…っ!」

鯰尾「ぅぎゃああああああーーッッ!!」


一厩(うまや)一
藤代「落ち着きましたか?二人共」

骨喰「・・・音もなく来ないでほしい」

鯰尾「後ろからは卑怯だろ?!ていうかいつ帰ってきたんだよ!」

藤代「帰ったのはつい一時間ほど前です。名前が出たので気付いているものだと思いました」

鯰尾「いや、わざとだろ!「空気」って言われてちょっとムカッとしたんだろ!じゃなきゃ一声掛けるはずじゃん!それもなしに後ろから俺達の肩抱いてくるなんて絶対しないだろ?!」

藤代「久しぶりに会えて嬉しくてつい?」

骨・鯰「「ウソだな」」

藤代「ウソです」

骨喰「相変わらず、本音が早い」

藤代「二人に少し聞きたいことがありまして、捕まえに来たんです」

鯰尾「これはヤベーやつだ。骨喰逃げるぞ!」

骨喰「了解した」

藤代「・・・鯰尾さん。馬」

鯰尾「!」

藤代「逃げたら俺が代わりに馬の世話をしますが・・・いいんですか?」

鯰尾「あっ!・・・くっ!人質いや馬質を取るなんて!仕方ない。話しを聞こう」

骨喰「この脅しが効くのは兄弟だけだと思う」

藤代「で、骨喰さんの人質は鯰尾さんですね」

骨喰「兄弟を置いてはいけないからな」

鯰尾「骨喰~」

骨喰「それで、話しというのはなんだ」

藤代「ああ、はい。俺がいないのをいいことに、有ること無いこと吹き込んでる輩を探しているんです」

鯰尾「あること、ないこと?吹き込む?」

骨喰「誰にだ?」

藤代「桑名江さん」

骨・鯰「「ああー・・・」」

藤代「何か知ってますね」

鯰尾「いや、知ってるというか…」

骨喰「むしろ何か知っているのは藤代の方では…」

藤代「ん?」

鯰尾「あいつに会ったんでしょ?」

藤代「はい。赤羽様のところへ行く途中で会いまして、挨拶程度に話しはしました。初対面の人間にも気さくに話す人なんだなーという印象だったんです。・・・ただ、「夢にまで見た」と言われて明らかに俺に対する期待値が高すぎると感じました」

鯰尾「あ・・・」

骨喰「それは・・・」

藤代「一体何を吹き込んだんですか?」

鯰尾「あー・・・」

骨喰「いや、俺達は何もしていない」

藤代「本当ですか?」

骨喰「・・・そうだな。俺が何か余計なことを話していない証明は出来ないが、兄弟は桑名と関わっていない。このひと月の間、彼とはほとんど口を聞いていない。これは主殿も証言してくれるだろう」

藤代「なるほど。赤羽様の口添えもあるのなら確かでしょうね。それではお二人は関わりがない、と」

骨喰「?…俺は、証明出来てないが…」

藤代「骨喰さんは信頼します」

鯰尾「えぇーっ!俺は?」

藤代「鯰尾さんはお喋りが過ぎる・・・あ、でもそんなあなたが新人と話しをしないなんておかしいか。何したんですか?」

鯰尾「すぐ俺がやったって決め付けるー」

藤代「やらかしてないんですか?」

鯰尾「やらかしました」

骨喰「・・・」

鯰尾「桑名と馬当番やった時にさ、馬糞を井戸に投げると何年も使えなくなるらしいよーって話したらすっげー怒られたの。冗談を本気にされたわけ。のんびりしてるようでマジメな奴だったぜ」

藤代「それで、話しもしてないんですか?」

鯰尾「その後もちょこちょことね、色々あって主からも馬当番禁止って言われちゃって。悲しくて新人に絡む元気がなかったわけなのさ」

藤代「絵に描いたような自業自得」

鯰尾「そうだよ!俺が悪いの!でも今日から馬当番解禁だから、元気一杯の鯰尾藤四郎をお送りします」

藤代「張り切りすぎないようにお願いします。じゃあ俺は次をあたりますので、失礼します」

鯰尾「はーい」

骨喰「・・・」

藤代「?…骨喰さん?服を掴まれたら行けないんですけど」

骨喰「あ、いや、その・・・」

藤代「?」

骨喰「その・・・そう。おかえり」

鯰尾「あ!忘れてた。おかえり!」

藤代「・・・。はい。ただいま戻りました」




鯰尾「骨喰どしたー?」

骨喰「え」

鯰尾「まだ話したいことがあるって顔してたけど」

骨喰「・・・ああ。だが、どう話していいのか分からなかった。桑名は藤代と「夢であった」のだろう?だからここに来る前から知っていた。だが、藤代は」

鯰尾「「初対面」って言ってたよねぇ。あはは。これじゃ桑名の片思いだ」

骨喰「どうしたらいいのだろう」

鯰尾「どうにも出来ないね。主でさえ見守ることにしてんだ。何も知らない俺達が余計な口挟んで混乱させるほうが良くないしね。ほら、口は災いの元!」

骨喰「・・・兄弟が好きなことわざだ」

鯰尾「好きじゃねーよ」


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藤代は夢から覚めた時にW山姥切がいたことに驚いて夢のことを忘れているようです。
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