とある本丸の日常会話 [完結]

小話その10「本丸の住人が一人、武蔵国へ行ったようです」

ー執務室一
加州「主ー。藤代は?」

赤羽「しーちゃん?いないよ」

加州「え、まさか…もう行っちゃたの?!」

赤羽「うん。朝早くに出たから、いないよ」

加州「マジかー!出立今日だったのかよ。あいつこういう大事なこと主以外に話さなすぎ。ひと月も本丸にいないんだから俺達にも何か言っていけっての」

三日月「加州よ。俺は見送ったぞ」

加州「え、なんで?!」

三日月「じじいは早起きだからな。偶然にもあれが出ていくのを見かけて、主と一緒に見送ることが出来た。早起きは三文の得と言うが本当だな」

加州「いや、あんたの場合狙ってた可能性が」

三日月「はっはっは」

加州「何なのその笑い」

赤羽「加州。しーちゃんに何か用があるの?あるなら連絡する。移動中の今なら見ると思う。あちらに着いたらなかなか連絡が取れなくなるよ」

加州「あ、いや、用と言うほどではないんだけどね。あいつ帰ってくんの来月末でしょ?ハロウィンだから菓子の用意忘れんなよーって・・・去年忘れてひどい目にあってたから、さすがに今年は忘れないだろうけど、一応ね」

赤羽「なるほど。加州は優しい」

三日月「ああ、あれはひどかったな。ひと月などあっという間だが、思う相手がいれば一日すら長く感じる。短刀達の寂しさがあの時一気に吐き出されたようなイタズラには鶴丸すら目を剥いていた」

加州「口に出すのもおぞましい・・・。だからね、一応言っておいてあげて」

赤羽「分かった。忘れたら命はない、と」

加州「・・・間違ってはいないんだけど。ハロウィンってそんな命懸けのイベントだったのかな・・・」

三日月「それはそうと今回の任地はどこなんだ?記録役の者達が各地の本丸を回る、この巡回月間とやらは十月からだろう。今はまだ一週間前だ。本丸を出るには少し早いと思うが?」

赤羽「場所は東京。だけどその前に一度本部に戻るよう言われてる。別件の仕事があるらしい」

加州「あいつ、普段ヘラヘラしてるくせに意外に忙しい奴だよなー」

赤羽「そうだね。しーちゃんは昔から忙しい。でもここに来てから少しずつ心に余裕が出てきたように思えるよ。みんなのおかげ」

三日月「それは、どうだろうな。俺達よりも主の存在が大きいと思うが・・・」

加州「あー・・・そうね。主のこと好きすぎて崇拝してるからね。存在そのものが神!みたいなこと言ってるのよく聞くし」

赤羽「・・・?私は人間だよ」

加州「うん。主は気にしなくていいよ。とりあえずお菓子の件よろしく!・・・って、やっぱ出たその日に帰りのこと言うのは早すぎるかな」

三日月「いや。逆にその約束事があるからあいつは絶対にここへ帰ってこなければならなくなる。言霊やまじないとは違うが、主や俺達とのこの小さな約束が藤代の無事の帰還に繋がるかもしれないぞ」

加州「なるほどね。三日月が言うと妙な説得力があるような、ないような」

三日月「どっちだ」

加州「ははっ。じゃあ主、連絡よろしく」

赤羽「うん」

加州「あ、そうだ。今日から里だよね。仲間が一人増えるかもしれないから気持ち多めにって加えといて」

赤羽「うん。分かった」

三日月「これで忘れて帰ってきたら・・・恐ろしいが見てみたい気もするな」

加州「忠告はしたからね。その時は俺は知らない」


一一一一一一一一一一一一一













記録役は全本丸にいるわけではありません。彼らの有用性を広めるために"記録役お試しキャンペーン"の期間を10月に設け、北の本丸から南の本丸まで記録役達が訪問しています。
あなたの本丸にもやってくるかも…?
10/50ページ