※カインに気に入られてますが、夢主は酷い目にあってます。
冷たい湯舟【SCP-073】
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「何をされているのです。」
冷たいタイルの上。風呂の湯に腕を浸した女がゆっくりとした動きでこちらを振り向いた。
「あ、カインだ。どぉしたのぉ?」
いつもの彼女とは思えない幼稚な話し方。微笑んでいるが、その瞳は虚ろで眼窩に沿って黒い血液が皮膚の下からそれを薄く縁取っていた。
「もう一度問います。何をしてるんだ、白悪。」
いつもと同じ機械的な声音。
それでも彼女は私の感情に気づいたのか、目を逸らし微笑むのをやめた。
「....何してるって...みればわかるでしょ?」
小さな声。
鉄錆の匂いが湯気と共に鼻腔に入ってくる。湯船から溢れ出る湯の色をみれば、彼女が何をしているのかなんて確かに一目瞭然だ。
カラカラと金属の足がタイルを叩き彼女に近づけば、私はその腕を湯から引き抜いた。
私の握力で白悪の傷口からブワリと血が滴り落ちる。
深い。
「白悪、何てことを。」
掴んだ手首は人とは思えぬ冷たさを放っていた。滴り落ちる血液から温度が一滴ずつ搾り取られているのを感じる。
「何してんの。」
激昂するでもなく、痛みを耐えるでもなく、彼女は静かにしかし攻め立てるような声音で私に語りかけた。
「痛くないんですか。」
「....何してんだ、って聞いてるんだけど。」
若干白悪の口調に怒気が含まれる。
私はポケットからけして肌触りが良いとは言えないハンカチーフを取り出した。
「今から手当をします。」
「.....は?」
「このままだと、相当な量の血が失われますよ。痕も残ってしまいますし。」
パンと音と共に彼女の腕が私の手から離れた。腕を振ったと同時に風呂場のタイルの壁に半円型の綺麗な赤の模様ができる。
「私に攻撃しないでください。」
白悪の反対側の手には、"反射"の痕ができていた。
「余計なことしないで。」
ダラダラと流れ続ける血には目もくれず彼女は私との間に距離をとった。
といっても、狭い浴室の中だ。距離といってもたかが知れている。
私はすぐに彼女の腕をとった。
「触らないで!」
「なぜ。私はなぜ、貴女に触ってはいけないのですか。」
一瞬だけ、彼女の青白い頬に赤みが差したようにみえた。
しかし白悪はすぐに眼だけ私から背け元のように暗い瞳で自身の傷ついた腕をみた。
「放っておいてよ。なんで、私を生かそうとするの?」
「貴女は私の、【削除済み】だからです。」
「.....。」
ほとんど間を空けずに言った答えは彼女のお気の召すものではなかったらしい。さらに深く目線を下げて、完全に私を視界から消し去った。
「なぜ、死のうとしているのかだけは教えてください。」
「.....やだ。」
また、浴室に大きな音が響いた。
それは何かの破裂音のようだった。
「.....痛い。」
片頬を抑えた彼女の瞳に一瞬だけ感情が映る。私への怒り?私への怯え?
白悪の目尻がぐっと緊張したのは確かだ。
「これが痛くてよく手首なんて切れましたね。」
彼女を殴ったのははじめてではない。
そして、毎回白悪は同じような瞳で私をみる。
私は叩いた頬に軽く口づけし、今度こそ手首の手当をし始めた。抵抗もなく無事手当がおわった頃、またしても彼女らしくない小さな声が浴室に響いた。
「....痛いよ。痛いに決まってんじゃん。バカ。」
強がっているが、全身が小刻みに震えている彼女をみて私は胸が締め付けられるような愛しさを感じた。
「でも、"慣れちゃったんだ"。痛みにも恐怖にも、絶望にも。....カインにも。」
胸にすっぽりと入るほど小さくなった彼女を力任せに抱きしめた。
「こんなに痩せて。こんなに窶れて。何がそんなに嫌なんだい。」
私が抱きしめても、なお震えはおさまらない。見下ろした彼女の肌には今までの無数の抵抗の痕があった。
また、ひとつ増えてしまった。
私のコレクションが。
「....やっと、死ねるはずだったのに。」
白悪の暗く闇の底のような瞳から一粒だけ雫が落ちる。
彼女の両下肢を飾った足枷が、じゃラリと鳴いた。
冷たいタイルの上。風呂の湯に腕を浸した女がゆっくりとした動きでこちらを振り向いた。
「あ、カインだ。どぉしたのぉ?」
いつもの彼女とは思えない幼稚な話し方。微笑んでいるが、その瞳は虚ろで眼窩に沿って黒い血液が皮膚の下からそれを薄く縁取っていた。
「もう一度問います。何をしてるんだ、白悪。」
いつもと同じ機械的な声音。
それでも彼女は私の感情に気づいたのか、目を逸らし微笑むのをやめた。
「....何してるって...みればわかるでしょ?」
小さな声。
鉄錆の匂いが湯気と共に鼻腔に入ってくる。湯船から溢れ出る湯の色をみれば、彼女が何をしているのかなんて確かに一目瞭然だ。
カラカラと金属の足がタイルを叩き彼女に近づけば、私はその腕を湯から引き抜いた。
私の握力で白悪の傷口からブワリと血が滴り落ちる。
深い。
「白悪、何てことを。」
掴んだ手首は人とは思えぬ冷たさを放っていた。滴り落ちる血液から温度が一滴ずつ搾り取られているのを感じる。
「何してんの。」
激昂するでもなく、痛みを耐えるでもなく、彼女は静かにしかし攻め立てるような声音で私に語りかけた。
「痛くないんですか。」
「....何してんだ、って聞いてるんだけど。」
若干白悪の口調に怒気が含まれる。
私はポケットからけして肌触りが良いとは言えないハンカチーフを取り出した。
「今から手当をします。」
「.....は?」
「このままだと、相当な量の血が失われますよ。痕も残ってしまいますし。」
パンと音と共に彼女の腕が私の手から離れた。腕を振ったと同時に風呂場のタイルの壁に半円型の綺麗な赤の模様ができる。
「私に攻撃しないでください。」
白悪の反対側の手には、"反射"の痕ができていた。
「余計なことしないで。」
ダラダラと流れ続ける血には目もくれず彼女は私との間に距離をとった。
といっても、狭い浴室の中だ。距離といってもたかが知れている。
私はすぐに彼女の腕をとった。
「触らないで!」
「なぜ。私はなぜ、貴女に触ってはいけないのですか。」
一瞬だけ、彼女の青白い頬に赤みが差したようにみえた。
しかし白悪はすぐに眼だけ私から背け元のように暗い瞳で自身の傷ついた腕をみた。
「放っておいてよ。なんで、私を生かそうとするの?」
「貴女は私の、【削除済み】だからです。」
「.....。」
ほとんど間を空けずに言った答えは彼女のお気の召すものではなかったらしい。さらに深く目線を下げて、完全に私を視界から消し去った。
「なぜ、死のうとしているのかだけは教えてください。」
「.....やだ。」
また、浴室に大きな音が響いた。
それは何かの破裂音のようだった。
「.....痛い。」
片頬を抑えた彼女の瞳に一瞬だけ感情が映る。私への怒り?私への怯え?
白悪の目尻がぐっと緊張したのは確かだ。
「これが痛くてよく手首なんて切れましたね。」
彼女を殴ったのははじめてではない。
そして、毎回白悪は同じような瞳で私をみる。
私は叩いた頬に軽く口づけし、今度こそ手首の手当をし始めた。抵抗もなく無事手当がおわった頃、またしても彼女らしくない小さな声が浴室に響いた。
「....痛いよ。痛いに決まってんじゃん。バカ。」
強がっているが、全身が小刻みに震えている彼女をみて私は胸が締め付けられるような愛しさを感じた。
「でも、"慣れちゃったんだ"。痛みにも恐怖にも、絶望にも。....カインにも。」
胸にすっぽりと入るほど小さくなった彼女を力任せに抱きしめた。
「こんなに痩せて。こんなに窶れて。何がそんなに嫌なんだい。」
私が抱きしめても、なお震えはおさまらない。見下ろした彼女の肌には今までの無数の抵抗の痕があった。
また、ひとつ増えてしまった。
私のコレクションが。
「....やっと、死ねるはずだったのに。」
白悪の暗く闇の底のような瞳から一粒だけ雫が落ちる。
彼女の両下肢を飾った足枷が、じゃラリと鳴いた。
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