※死ネタです。彼の為なら死んでもいいという方はアベルに名前を教えてください。
お気に入り【SCP-076】
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目覚めてから、体感で2ヶ月ほど経った。
不思議なことにいつもの身を焦がすような怒りは誰を殺めることなく静かに引いた。
いつだって先にたっていた感情よりも空になった部分は気力を削げ落としていた。
奴をはじめてみつけたのはいつだったのだろう。
目を覚ませばいつもみる光景。
無数の銃口
無数の目
無数の殺意
それらが私に向けられているのだ。
その中で1人。明らかに異質がいた。
恵まれた体躯の男たちに混じり、比べて小柄な人物は殺意ではなく怯えを含む目と不慣れな手つきで必死に銃口を向けてくる。
その姿はあまりにも滑稽だった。
何故こんな奴が出迎えたのかとかえって怒りを覚え、いつも以上に長く暴れたのを記憶している。
そんな中で奴は、他のガタイだけの者達を蹴落し何故か生き残っていた。
それを繰り返えして何故か運良く生き残ってる奴の手捌きが目覚めるたびに上達しているのが、密かな楽しみになっていた。あのエージェント以来の静かな興奮だ。
手慣れた様子で無駄な動きはなく、誰よりも素早く射撃体制に入るようになった。
相変わらず殺意では無い異質な瞳でこちらを見据えていた。その異質さの理由を私は知らない。
そして、私はやっとその者の手で塵滓に返ったのだ。
手を抜いたわけではない。
唐突な攻撃ではあったもののそれは賞賛に値した。
鼻水を垂れ流して命乞いをする馬鹿を仕留めようとした時、私に衝突する様に懐に入ってきて真下から頭上にかけて数百発の衝撃を受けた。
今度会ったらまず最初に手合わせてやろう。
いや、話を少ししてみよう。戦士としての成長は素晴らしいものだろうと説いてやろう。
だが、今回の目覚めではその姿がみえなかった。
私は過去の経験よりそれが意味することを察した。またこの感情かと。
「アレは....死んだのか。」
一番近くで銃口を向ける人間に声をかける。
「....アレとはなんだ。」
そいつはこちらから視線を外すことなく震える声で問いかけ返してきた。
私は言葉を詰まらせる。
奴の名前を知らないのだ。
今思えば、何度か名前を聞いたような気がする。
奴を見かけた最初の頃。私が人間達を屠る中、さまざまな怒号を飛び交わせる肉塊達は奴の名前を何度も呼び、未熟なその姿に対し恨み辛みを叫んで事切れるのだ。
「.........なんでもない。....今回はもういい。首に装置をつけろ。」
その言葉に一同はざわめきたつが、それも私の眼光が飛ぶまでの一瞬のことだった。
先程と同じ奴に首輪が渡され、慎重にそれは私の首にまわされた。
数日経った頃だ。
いつもなら少しおとなしくしてるだけで、紅い石の首飾りをつけた馬鹿が何かしら殺されに来る頃だが、それも無く私は自室で剣を振り回してばかりいた。
「あー、飽きてしまったな。
最近はあのイカれブライトも来ないからな。」
おそらく新しいオモチャでも手に入れそちらにご執心なのだろう。
奴以外は基本私に近づこうとせず、ただただ静かで無機質な瞬間を過ごしていた。
「はー。....私はどうしたいんだ。」
硬いマットの上に寝転がり、目を閉じる。
すると、瞼の裏に小柄な人間の姿が浮かんだ。
会うたびに、絶望、怯え、狼狽、諦観と変化していつしかそれは酷く冷静な瞳に変わっていた。
その変化を見つけるたびにゾクリと獲物を仕留めたときに近い悦びが駆け上がるのだ。
ーーーたかが、人間如きに..。
「そろそろ殺しに行くか。」
なんの変化もない毎日に嫌気がさし、空間から刃を取り出した時だった。
「......誰だ。」
私を閉じ込めるための機械仕掛けの厚い扉が開く音がした。
私はマットから動かず横目に一線の光が空間に変化する様を見遣った。そして、そこに現れた影の持ち主へと視線を移動させる。
「...お前」
その動揺を上手く隠せたか私は正直自信がなかった。その人間は私が殺したかったその者だったからだ。
「アベル。まだ生きていた。」
初めてそれが言葉を発するのを聞いた。
....少し高い。少年...いや、もしかすると女か。
見知ったその瞳を前に不思議と胸に中の霧が晴れるような、妙な感覚を覚える。
「お前こそ、生きていたのか。何しに来たんだ。」
「わかってるだろ?」
今まで見たことのない表情を浮かべてそいつはゆっくりと私に近寄った。
「クロステストをしよう。」
ヘルメットをとり
ゴーグルをとり
服を脱ぎ始める
私は正直戸惑い、ただ次々と見慣れた戦闘服が剥がれていくのを傍観していた。
その様子に私は得体の知れない胸のざわつきを覚える。
しかし、そのざわつきはすぐにおさまることとなった。
「.....そういうことか。本当に胸糞が悪い。」
下着姿となったその首元には見覚えのある首飾りがぶら下がっていた。
何度こいつを破壊してやろうと思ったことか。
「本当に大変だったんだよ。」
目を三日月のように細め嘲笑うかのように口角をあげるその顔は、忌々しいほど見飽きたもので私の知る戦士のものではなかった。
「この子【削除済み】って名前なんだけど、運良くここまで生き延びておいてメンタルやられちゃってさ、自殺しようとしたんだよ。もったいなくて咄嗟に首飾りをかけちゃったよね。」
初めて耳にした名前よりも、私は他の言葉に耳を疑う。
「【削除済み】...。自ら死のうとした..?せっかくあそこまで技力を得たのに」
やっと知れた名前。
しかし、それは自死を選んでいた。
「みんながみんな人を殺す技術を得て喜ぶ訳じゃないんだ、アベル。」
【削除済み】と同じ瞳でブライトは私を見下ろした。その瞳には呆れと憐れみを感じさせ、私を苛つかせる。
「....わからない。それは結局私を仕留める力量をやっと得た。....全てが備わったのにも関わらず逃げたのか?」
ブライトは私の言葉を無視し「その癖に私の上書きしようとするとかなり抵抗しちゃってさ」と続けた。
「上書きするのに二月半だよ!最高記録だよ。ここまで本人の意識が保たれていたのは。」
大きくため息をついて、最後に残っていた下着も肌から落とした。
その肌には数え切れぬほどの傷が残されていた。
「不意に死にたいってなるから大変だったよ。...それで今日やっとこの子の意識が消滅したから、君に直々に会いにきたんだ。正直私も気乗りしないけど、ちょっと君の生殖能力が気になるからさ!....顔見知りなんだから、いいだろう?」
横になっている私に覆いかぶさるようにブライトは顔を近づけ、私の唇に口付けた。
その侵入した肉感に大きく身震いする。奴の頬を手で包み、目の前を真っ赤に染めた。
「.....良いわけ、ないか。」
血が噴き出し、横線に繋がった両眼に臆することなくブライトは嗤う。
奴の感情表現の道具に成り下がった【削除済み】の惨めな姿に、失望に近い感情が襲った。
「私はなんて無駄な時間を過ごしてしまったのだろう。...あんな弱い肉虫を悼れんでいたとは。」
黒い刃をとり、【削除済み】の肺に突き立てた。
これ以上刻む必要はない。苦しみながらじきに死ぬだろう。
「ひ、どい。お気に入り、ちゃんのはずなのに。」
扉の破壊に向かった私の背に、奴は息絶え絶えに軽口をいう。
「【削除済み】、は逃げた。」
「ああ、私が期待していたものより呆気なく、な。」
ゴボゴボと水疱音が途切れ途切れの笑い声と一緒に聞こえる。
いくら何度も死を経験してるとはいえ、こんな状況でも笑うなど薄気味悪い。
扉を前に刃を握る拳を振り上げる。
微かな水疱音と、声とは言えない小さな笛のような音が言語となった。
「逃げた、の、は“君を、護ること”、から。」
扉に振り上げた手が無意識に止まる。
振り返った時には【削除済み】の身体は呼吸を止めていた。
ーーー私を守るだと。
そして【削除済み】の鼓動が止まると同時に首に巻かれた装置も弾けた。
「いい加減にしたらどうだ。」
「アベルも楽しんでる癖に〜」
懲りもせず、ブライトはまた私に会いにきた。
前回何事もなかったかのように私に近寄ってくるが、私は意識的に距離をとる。
今回は何故か毛むくじゃらの筋肉質な黒い猿で来ている。これであの時のように襲われたくない。
「あの時の最期の言葉はどういう意味だ。」
「....えー、なんか言ってたっけー?」
あれから、あの時の言葉が妙に引っかかった。
何故殺すべき私を守ると言ったのか。
実際に私は殺されているし。
私はあの一件以前にも殺されようとしている。
「んー、私は捨てた身体については引き摺らないたちだからな。」
やはりこいつは教えようとはしないだろう。
私自身も、余計なことは考えず忘れるのが一番だろう。
「ただ、ね。アベル。彼女は財団に就いた時から優秀であったし、とても強かった。過去については教えられないけど、ここ数年前までそこらへんで転がってるただの一般人だった。」
思わずハハっと笑い声をあげてしまう。
そんな私を物珍しそうにブライトがみてくる。
「そんなわけないだろう。初めて見た時、【削除済み】はかなり腑抜けだった。そんな奴が元から強い?...優秀だったのは認めるが、数年前までそこらのゴミだったとは。」
私の声は次第に大きくなった。ブライトも私の笑い声につられて雄叫びのような笑い声をあげはじめる。
「ハハハ、お前がそんなに笑うなんて珍しい。あー、あと彼女はな、お前のファンだったみたいだぞ。」
「は?ファンってなんだ。」
聞き慣れない言葉を反芻するとブライトの口角が大きく吊り上がる。
「お前にも春が訪れていたんだよ。」
お馴染みのニンマリとした表情を猿でもできるとは驚きだった。
不思議なことにいつもの身を焦がすような怒りは誰を殺めることなく静かに引いた。
いつだって先にたっていた感情よりも空になった部分は気力を削げ落としていた。
奴をはじめてみつけたのはいつだったのだろう。
目を覚ませばいつもみる光景。
無数の銃口
無数の目
無数の殺意
それらが私に向けられているのだ。
その中で1人。明らかに異質がいた。
恵まれた体躯の男たちに混じり、比べて小柄な人物は殺意ではなく怯えを含む目と不慣れな手つきで必死に銃口を向けてくる。
その姿はあまりにも滑稽だった。
何故こんな奴が出迎えたのかとかえって怒りを覚え、いつも以上に長く暴れたのを記憶している。
そんな中で奴は、他のガタイだけの者達を蹴落し何故か生き残っていた。
それを繰り返えして何故か運良く生き残ってる奴の手捌きが目覚めるたびに上達しているのが、密かな楽しみになっていた。あのエージェント以来の静かな興奮だ。
手慣れた様子で無駄な動きはなく、誰よりも素早く射撃体制に入るようになった。
相変わらず殺意では無い異質な瞳でこちらを見据えていた。その異質さの理由を私は知らない。
そして、私はやっとその者の手で塵滓に返ったのだ。
手を抜いたわけではない。
唐突な攻撃ではあったもののそれは賞賛に値した。
鼻水を垂れ流して命乞いをする馬鹿を仕留めようとした時、私に衝突する様に懐に入ってきて真下から頭上にかけて数百発の衝撃を受けた。
今度会ったらまず最初に手合わせてやろう。
いや、話を少ししてみよう。戦士としての成長は素晴らしいものだろうと説いてやろう。
だが、今回の目覚めではその姿がみえなかった。
私は過去の経験よりそれが意味することを察した。またこの感情かと。
「アレは....死んだのか。」
一番近くで銃口を向ける人間に声をかける。
「....アレとはなんだ。」
そいつはこちらから視線を外すことなく震える声で問いかけ返してきた。
私は言葉を詰まらせる。
奴の名前を知らないのだ。
今思えば、何度か名前を聞いたような気がする。
奴を見かけた最初の頃。私が人間達を屠る中、さまざまな怒号を飛び交わせる肉塊達は奴の名前を何度も呼び、未熟なその姿に対し恨み辛みを叫んで事切れるのだ。
「.........なんでもない。....今回はもういい。首に装置をつけろ。」
その言葉に一同はざわめきたつが、それも私の眼光が飛ぶまでの一瞬のことだった。
先程と同じ奴に首輪が渡され、慎重にそれは私の首にまわされた。
数日経った頃だ。
いつもなら少しおとなしくしてるだけで、紅い石の首飾りをつけた馬鹿が何かしら殺されに来る頃だが、それも無く私は自室で剣を振り回してばかりいた。
「あー、飽きてしまったな。
最近はあのイカれブライトも来ないからな。」
おそらく新しいオモチャでも手に入れそちらにご執心なのだろう。
奴以外は基本私に近づこうとせず、ただただ静かで無機質な瞬間を過ごしていた。
「はー。....私はどうしたいんだ。」
硬いマットの上に寝転がり、目を閉じる。
すると、瞼の裏に小柄な人間の姿が浮かんだ。
会うたびに、絶望、怯え、狼狽、諦観と変化していつしかそれは酷く冷静な瞳に変わっていた。
その変化を見つけるたびにゾクリと獲物を仕留めたときに近い悦びが駆け上がるのだ。
ーーーたかが、人間如きに..。
「そろそろ殺しに行くか。」
なんの変化もない毎日に嫌気がさし、空間から刃を取り出した時だった。
「......誰だ。」
私を閉じ込めるための機械仕掛けの厚い扉が開く音がした。
私はマットから動かず横目に一線の光が空間に変化する様を見遣った。そして、そこに現れた影の持ち主へと視線を移動させる。
「...お前」
その動揺を上手く隠せたか私は正直自信がなかった。その人間は私が殺したかったその者だったからだ。
「アベル。まだ生きていた。」
初めてそれが言葉を発するのを聞いた。
....少し高い。少年...いや、もしかすると女か。
見知ったその瞳を前に不思議と胸に中の霧が晴れるような、妙な感覚を覚える。
「お前こそ、生きていたのか。何しに来たんだ。」
「わかってるだろ?」
今まで見たことのない表情を浮かべてそいつはゆっくりと私に近寄った。
「クロステストをしよう。」
ヘルメットをとり
ゴーグルをとり
服を脱ぎ始める
私は正直戸惑い、ただ次々と見慣れた戦闘服が剥がれていくのを傍観していた。
その様子に私は得体の知れない胸のざわつきを覚える。
しかし、そのざわつきはすぐにおさまることとなった。
「.....そういうことか。本当に胸糞が悪い。」
下着姿となったその首元には見覚えのある首飾りがぶら下がっていた。
何度こいつを破壊してやろうと思ったことか。
「本当に大変だったんだよ。」
目を三日月のように細め嘲笑うかのように口角をあげるその顔は、忌々しいほど見飽きたもので私の知る戦士のものではなかった。
「この子【削除済み】って名前なんだけど、運良くここまで生き延びておいてメンタルやられちゃってさ、自殺しようとしたんだよ。もったいなくて咄嗟に首飾りをかけちゃったよね。」
初めて耳にした名前よりも、私は他の言葉に耳を疑う。
「【削除済み】...。自ら死のうとした..?せっかくあそこまで技力を得たのに」
やっと知れた名前。
しかし、それは自死を選んでいた。
「みんながみんな人を殺す技術を得て喜ぶ訳じゃないんだ、アベル。」
【削除済み】と同じ瞳でブライトは私を見下ろした。その瞳には呆れと憐れみを感じさせ、私を苛つかせる。
「....わからない。それは結局私を仕留める力量をやっと得た。....全てが備わったのにも関わらず逃げたのか?」
ブライトは私の言葉を無視し「その癖に私の上書きしようとするとかなり抵抗しちゃってさ」と続けた。
「上書きするのに二月半だよ!最高記録だよ。ここまで本人の意識が保たれていたのは。」
大きくため息をついて、最後に残っていた下着も肌から落とした。
その肌には数え切れぬほどの傷が残されていた。
「不意に死にたいってなるから大変だったよ。...それで今日やっとこの子の意識が消滅したから、君に直々に会いにきたんだ。正直私も気乗りしないけど、ちょっと君の生殖能力が気になるからさ!....顔見知りなんだから、いいだろう?」
横になっている私に覆いかぶさるようにブライトは顔を近づけ、私の唇に口付けた。
その侵入した肉感に大きく身震いする。奴の頬を手で包み、目の前を真っ赤に染めた。
「.....良いわけ、ないか。」
血が噴き出し、横線に繋がった両眼に臆することなくブライトは嗤う。
奴の感情表現の道具に成り下がった【削除済み】の惨めな姿に、失望に近い感情が襲った。
「私はなんて無駄な時間を過ごしてしまったのだろう。...あんな弱い肉虫を悼れんでいたとは。」
黒い刃をとり、【削除済み】の肺に突き立てた。
これ以上刻む必要はない。苦しみながらじきに死ぬだろう。
「ひ、どい。お気に入り、ちゃんのはずなのに。」
扉の破壊に向かった私の背に、奴は息絶え絶えに軽口をいう。
「【削除済み】、は逃げた。」
「ああ、私が期待していたものより呆気なく、な。」
ゴボゴボと水疱音が途切れ途切れの笑い声と一緒に聞こえる。
いくら何度も死を経験してるとはいえ、こんな状況でも笑うなど薄気味悪い。
扉を前に刃を握る拳を振り上げる。
微かな水疱音と、声とは言えない小さな笛のような音が言語となった。
「逃げた、の、は“君を、護ること”、から。」
扉に振り上げた手が無意識に止まる。
振り返った時には【削除済み】の身体は呼吸を止めていた。
ーーー私を守るだと。
そして【削除済み】の鼓動が止まると同時に首に巻かれた装置も弾けた。
「いい加減にしたらどうだ。」
「アベルも楽しんでる癖に〜」
懲りもせず、ブライトはまた私に会いにきた。
前回何事もなかったかのように私に近寄ってくるが、私は意識的に距離をとる。
今回は何故か毛むくじゃらの筋肉質な黒い猿で来ている。これであの時のように襲われたくない。
「あの時の最期の言葉はどういう意味だ。」
「....えー、なんか言ってたっけー?」
あれから、あの時の言葉が妙に引っかかった。
何故殺すべき私を守ると言ったのか。
実際に私は殺されているし。
私はあの一件以前にも殺されようとしている。
「んー、私は捨てた身体については引き摺らないたちだからな。」
やはりこいつは教えようとはしないだろう。
私自身も、余計なことは考えず忘れるのが一番だろう。
「ただ、ね。アベル。彼女は財団に就いた時から優秀であったし、とても強かった。過去については教えられないけど、ここ数年前までそこらへんで転がってるただの一般人だった。」
思わずハハっと笑い声をあげてしまう。
そんな私を物珍しそうにブライトがみてくる。
「そんなわけないだろう。初めて見た時、【削除済み】はかなり腑抜けだった。そんな奴が元から強い?...優秀だったのは認めるが、数年前までそこらのゴミだったとは。」
私の声は次第に大きくなった。ブライトも私の笑い声につられて雄叫びのような笑い声をあげはじめる。
「ハハハ、お前がそんなに笑うなんて珍しい。あー、あと彼女はな、お前のファンだったみたいだぞ。」
「は?ファンってなんだ。」
聞き慣れない言葉を反芻するとブライトの口角が大きく吊り上がる。
「お前にも春が訪れていたんだよ。」
お馴染みのニンマリとした表情を猿でもできるとは驚きだった。
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