~想い~








水族館のチケットを

俺に差し出した奏。



私は大丈夫?

今にも泣きそうな顔して

一生懸命作り笑いして……。






「奏。」


「は、はい……。」


「座って。」





俺はベンチに

奏と一緒に腰掛けた。





「……。」


「おついちさん……?」


「俺は、お前の事…。」


「わかってるよ。その事はもう……。」


「奏、ちゃんと聞いて。」


「えっ?」





俺があの時

奏に伝えたかった事。


それは……。






「俺は、お前の事が一番大切だ。」


「……?」


「今も、これからも、ずっと奏を守りたい。」


「え……?」


「奏に触れたくて触れたくて、これでも我慢した方な
んだぞ。」


「っ…。」


「抱きしめたのも、キスしたのも遊びじゃない。」


「じゃあ、どうして……?」


「………。」






俺の中に残っているモヤモヤ。

それは美咲だ。


美咲なんだけど

何に対して心のつっかえがあるのか

わからないんだ。





「美咲と会ってから、何かわからないけどすげぇ
モヤモヤしてて……。」


「おついちさん……。」


「こんな中途半端な気持ちじゃ、奏の想いに応えて
やれないって。」


「……。」


「だから……。」


「……待ってます。」


「奏…。」


「私、おついちさんを待ってますから。おついちさん
がどっちを選んでも私は……。」


「奏…。」







思わず奏を抱きしめた。








瞳を潤ませながら

不安な気持ちを押し殺して

待ってると言ってくれた。





俺は奏が好きだ。

凄く凄く愛おしい。





無くしたくない。

失いたくない。









だからこそ

俺は

自分の過去と美咲を

決別しなきゃいけない。
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