~失いたくない~








サァァァ







「あ、また雨だ……。」






どうしていいかわからなくて

ずっと

海の見えるこの公園にいたの。



私って

とことん駄目だな…。


買い物した食材も

初夏の時期だから

もう傷んじゃってる。



今何時なんだろう。

彼らの事だから

今頃必死に私の事探してる。






「会いたいな……おついちさん……皆…。」






サァァァ






身を隠す場所もなくて

雨をまともに受けた体は

6月と言えど

冷えるのには十分だった。






「くしゅっ……。」






寒い…。

どうしよう…。











「奏っ!」








この声…

私が1番聞きたかった人の声…。





「おついちさっ…。」


「ばっか野郎!!」


「ごめっ……。」





気付けば彼の腕の中に。


いつもよりも強くて

でも優しくて

雨で濡れてるはずなのに

とっても暖かい。





「何で勝手に出てったんだよっ!」


「私、お夕飯の買い出し……行きたかったんだけど
焦って出てきたから…どこから来たか、わかんなくて
っ…。」


「……。」


「おついちさんに電話っ…でも…充電切れちゃって っ…。」


「あ…ごめん、仕事中で気付かなかった。」


「見つけてくれてっ…ありがとうっ…。」


「おついちさん!奏ちゃん!」


「お前らこんな所で何やってんだ!風邪引くぞ!」





弟者さんも兄者さんも

びしょ濡れになって

さがしてくれたんだ……。




「帰ろ、奏。」


「うんっ…。」




今までだったら

ごめんなさいって

謝ってばかりだった。


でも今は

ありがとうって

伝えたい。
5/9ページ
スキ