時を超えて、繋ぐ想い
―琉璃side―
七海さんは
一人で買い物に行ってしまった。
というか七海さんの家
すっごく広いんですけど……。
こんな所に一人でいるの落ち着かない。
忙しいはずなのに
綺麗に整理整頓された部屋。
お酒が好きなのか
ワインセラーやおしゃれな酒棚が
これでもかと飾られている。
伊地知さんが言っていたけど
七海さんて大人っぽくて
あれで五条先生より歳下とか
考えられないんだけど。
「あれ?七海さん、スマホ置いていってる。」
プルルルッ
「ひゃっ!で、電話っ……。」
何となく彼のスマホに手を伸ばすと
それを見計らったように掛かってきた電話。
呼吸を一旦整えて
ディスプレイを恐る恐る覗き込む。
ディスプレイに映ったのは
”桜乃 麗華” という女性の名前だった。
血の気が引いていくのがわかる。
映し出された名前の女性が
どんな人なのか私には分かるはずもないのに
何故か腕を組んでいたあの人だと想像してしまう。
気付けば、応答ボタンを押していた。
「もしもし、建人?」
「あ、あの……。」
「ん?貴方誰?」
「私、七海さんの弟子です……。」
「弟子?」
「今七海さんは買い物に行ってしまって、いないんです。」
「そうだったの、わざわざ教えてくれてありがとうね。」
上品で優しい声。
顔は見えないけれど話す言葉や口調で
とても育ちの良い人だと容易に想像が出来てしまう。
「もしかして、建人の彼女?」
「えっ!?そ、そんなんじゃ……。」
「あら、違うのね。」
「は、はい……。」
「私、建人の婚約者だったんだけど…この間婚約解消されちゃって。」
「え……?」
「頭を下げるばかりで理由も言ってくれないから、てっきり誰かを妊娠させたか若い子に手を出しちゃったかって思ったんだけど。」
「………。」
「建人って度を超えた大人だから、未成年に手を出したりしたものなら責任とろうとすると思うし。」
「そう、ですね……。」
「上手くいってると思ってたけど、あんなに頭を下げられたら何も言えないもの。」
この人は
七海さんの婚約者だった。
だけど最近婚約を解消した……?
それは未成年の私を抱いたから
責任をとってこの人と別れたって事?
私が七海さんとこの人の
仲を咲いてしまった。
私を情けで抱いてしまったが故に
七海さんはこの人と離れるしか無かった。
頭がグルグルして
言葉が上手く出てこない……。
「貴方と、七海さんは……どこで知り合ったんですか。」
「建人とは職場で出会ったのよ。私が上司で、彼が部下だったの。」
「……。」
「彼、仕事馬鹿でね。二徹三徹は当たり前で、会社に泊まり込んで仕事してた時期もあったな。」
「七海さんは、いつでも仕事には誠実ですもんね。」
「本当にね。そんな彼を見ていて、体が心配になって自宅に招いて食事をしたのが最初だったかな。」
「はは、今でも忙しそうにしてます。」
「やっぱり?それで、勢いで結婚しちゃおうかなんて言ったら”それも、良いかもしれませんね”って言われて…。」
「……。」
「そんな感じかな……二年位の付き合いだったけどね。」
勢いで始まった
婚約生活だったんだろうけど
七海さんの事本当に好きだったんだろうな。
大人のこの人達は
愛している、そう表現する方が
きっと正しいんだと思う。
それを私が奪ってしまったんだ。
自分の事しか考えていなかった。
七海さんにお母様との会話を聞かれなかったら
こんな事にはならなかったのかもしれない。
私は七海さんの
大切な人の幸せを奪ってしまったんだ。
「でも、それで良かったんだ。」
「え……?」
「私ね、好きな……。」
彼女が話終える前に
玄関の扉が開く音がした。
七海さんが
買い物を終えて帰ってきたのだ。
早く電話を終わらせないと。
だけど、彼女にこれだけは伝えないといけない。
このまま何も無かったフリをして
七海さんの隣いる事は私には出来ないから。
「麗華さん。」
「え?」
「諦めなくて大丈夫ですから。」
「どういう……。」
「お話出来て良かったです、それじゃ。」
一方的に電話を切った。
ホーム画面に戻し
元の場所にスマホを戻す。
そうだよね。
よくよく考えると
大人で、格好良くて、優しくて
そんな七海さんが私を好きなんて
上手く出来すぎてるよね。
私は子供で、顔も平凡で
皆みたいに力がある訳でもなくて
いつも皆の足でまといで
任務さえまともに任せて貰えない人間。
神子の力をとったら
私には何も残らないんだ。
七海さんは
一人で買い物に行ってしまった。
というか七海さんの家
すっごく広いんですけど……。
こんな所に一人でいるの落ち着かない。
忙しいはずなのに
綺麗に整理整頓された部屋。
お酒が好きなのか
ワインセラーやおしゃれな酒棚が
これでもかと飾られている。
伊地知さんが言っていたけど
七海さんて大人っぽくて
あれで五条先生より歳下とか
考えられないんだけど。
「あれ?七海さん、スマホ置いていってる。」
プルルルッ
「ひゃっ!で、電話っ……。」
何となく彼のスマホに手を伸ばすと
それを見計らったように掛かってきた電話。
呼吸を一旦整えて
ディスプレイを恐る恐る覗き込む。
ディスプレイに映ったのは
”桜乃 麗華” という女性の名前だった。
血の気が引いていくのがわかる。
映し出された名前の女性が
どんな人なのか私には分かるはずもないのに
何故か腕を組んでいたあの人だと想像してしまう。
気付けば、応答ボタンを押していた。
「もしもし、建人?」
「あ、あの……。」
「ん?貴方誰?」
「私、七海さんの弟子です……。」
「弟子?」
「今七海さんは買い物に行ってしまって、いないんです。」
「そうだったの、わざわざ教えてくれてありがとうね。」
上品で優しい声。
顔は見えないけれど話す言葉や口調で
とても育ちの良い人だと容易に想像が出来てしまう。
「もしかして、建人の彼女?」
「えっ!?そ、そんなんじゃ……。」
「あら、違うのね。」
「は、はい……。」
「私、建人の婚約者だったんだけど…この間婚約解消されちゃって。」
「え……?」
「頭を下げるばかりで理由も言ってくれないから、てっきり誰かを妊娠させたか若い子に手を出しちゃったかって思ったんだけど。」
「………。」
「建人って度を超えた大人だから、未成年に手を出したりしたものなら責任とろうとすると思うし。」
「そう、ですね……。」
「上手くいってると思ってたけど、あんなに頭を下げられたら何も言えないもの。」
この人は
七海さんの婚約者だった。
だけど最近婚約を解消した……?
それは未成年の私を抱いたから
責任をとってこの人と別れたって事?
私が七海さんとこの人の
仲を咲いてしまった。
私を情けで抱いてしまったが故に
七海さんはこの人と離れるしか無かった。
頭がグルグルして
言葉が上手く出てこない……。
「貴方と、七海さんは……どこで知り合ったんですか。」
「建人とは職場で出会ったのよ。私が上司で、彼が部下だったの。」
「……。」
「彼、仕事馬鹿でね。二徹三徹は当たり前で、会社に泊まり込んで仕事してた時期もあったな。」
「七海さんは、いつでも仕事には誠実ですもんね。」
「本当にね。そんな彼を見ていて、体が心配になって自宅に招いて食事をしたのが最初だったかな。」
「はは、今でも忙しそうにしてます。」
「やっぱり?それで、勢いで結婚しちゃおうかなんて言ったら”それも、良いかもしれませんね”って言われて…。」
「……。」
「そんな感じかな……二年位の付き合いだったけどね。」
勢いで始まった
婚約生活だったんだろうけど
七海さんの事本当に好きだったんだろうな。
大人のこの人達は
愛している、そう表現する方が
きっと正しいんだと思う。
それを私が奪ってしまったんだ。
自分の事しか考えていなかった。
七海さんにお母様との会話を聞かれなかったら
こんな事にはならなかったのかもしれない。
私は七海さんの
大切な人の幸せを奪ってしまったんだ。
「でも、それで良かったんだ。」
「え……?」
「私ね、好きな……。」
彼女が話終える前に
玄関の扉が開く音がした。
七海さんが
買い物を終えて帰ってきたのだ。
早く電話を終わらせないと。
だけど、彼女にこれだけは伝えないといけない。
このまま何も無かったフリをして
七海さんの隣いる事は私には出来ないから。
「麗華さん。」
「え?」
「諦めなくて大丈夫ですから。」
「どういう……。」
「お話出来て良かったです、それじゃ。」
一方的に電話を切った。
ホーム画面に戻し
元の場所にスマホを戻す。
そうだよね。
よくよく考えると
大人で、格好良くて、優しくて
そんな七海さんが私を好きなんて
上手く出来すぎてるよね。
私は子供で、顔も平凡で
皆みたいに力がある訳でもなくて
いつも皆の足でまといで
任務さえまともに任せて貰えない人間。
神子の力をとったら
私には何も残らないんだ。