時を超えて、繋ぐ想い


「七海さんっ……だめっ……。」


「んっ……何がですか。」


「私っ、お風呂も入ってないから汗臭いですっ!」


「そんな事、私は気にしませんが。」


「私は気にしますっ……。」


「………はぁ。」








恥ずかしいが故に
彼女は時間稼ぎがしたいのだろう。




恥じる彼女も愛らしくも思うが
好物を目の前にして待てを食らわされた事に
酷く言い様のないイラつきを覚える。


これではまるで発情期の獣だ。
これ程までに自欲を制御出来ない人間だという事を
彼女を抱かなれば知る由もなかっただろう。





一つ、意地悪を言ってみる事にした。






「では、こうしましょう。」


「え?」


「私と貴方で、一緒に風呂に入る。」


「え、だ、だめっ!!」


「その理由は。」


「だってっ……恥ずかしいからっ……。」


「……今襲わないだけでも、かなりの譲歩だと思いますが。」


「うぅっ………。」







グゥゥゥ







「あ……。」


「…………ふっ、先に食事にしましょう。」


「うぅっ……恥ずかしい。」


「空腹は恥ずかしい事ではありませんよ。貴方からは想像の出来ない豪快な音ではありましたが。」


「七海さんの意地悪っ………。」






頬を膨らませて
可愛らしく睨んでくる琉璃。
彼女にとっては精一杯の威嚇なんだろうが
それが逆効果だという事に早く気づいて欲しい。







キッチンへ移動し
冷蔵庫の中身を確認する。

しばらく任務続きで外食が多かったせいか
冷蔵庫の中には牛乳位しかめぼしいものがなかった。



これでは何も作れない。






「む……。」


「七海さん?」


「すいません、少し買い物に行ってきます。」


「じゃあ、私も……。」


「いえ、時間は掛かりませんので貴方はここにいて下さい。」


「でも……。」


「留守を頼みます。」


「は、はい……。」








ジャケットを羽織り
夜の街へと足を向かわせる。


彼女と過ごす時間と比べれば
買い物に向かう時間さえも無駄に思ってしまう。




いい歳の大人が
何をやっているんだと自傷しながら
足早に階段を降りていく。
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