時を超えて、繋ぐ想い
「私、今日何しようかな……。」
倒れた時以来
私には任務を振られる事が少なくなった。
それは
またあの様な状況になれば
皆の足でまといになりかねない。
自分でも理解はしているつもりだ。
ただ、結局自分は役立たずなのだと
この現実が再確認させる。
「ここにいたんですね、千歳さん。」
「あ、伊知地さん。」
「今日お時間ありますか?」
「はい、私は今日任務も無いので。」
「では、一緒に街の見回りに行きませんか?」
「はい、よろしくお願いします。」
「ありがとうございます、一人では時間が掛かりそうだったので助かります。」
という事で
伊知地さんと街の見回りに。
伊知地さんて
いつも五条先生にこき使われて
その他にも色々な仕事を任されていて
きっと凄く信用されてるんだろうな。
目の下の隈が日を追う事に
酷くなっている気がするのは
私だけなんだろうか。
移動の車内で
ふと聞いてみる事にした。
「あの、伊知地さん…。」
「何でしょう。」
「ちゃんと、眠れていますか?」
「え?」
「何だか疲れている様に見えたので……。」
「心配して下さったんですね、ありがとうございます。この優しさが五条さんにもあれば……。」
「お察しします、だけど……。」
「え?」
「以前、五条先生が言っていました。」
””伊知地は誠実に仕事をする””
””あいつは人を思う事の出来る男””
””信用しているからこその関わりだ””
今日だって、一人残された私を気にかけて
伊知地さんだけでも済むような仕事を
わざわざ私に声をかけてくれた。
伊知地さんは苦労人。
この人こそ幸せになるべき人だと思う。
「五条さんがそんな事を……。」
「はい。五条先生って、プライド高いから伊知地さんには絶対言わないと思いますけどね。」
「ふふ、プライドの高さはエベレスト級ですからね。」
「伊知地さん、いつも本当にありがとうございます。」
「え?急にどうしました?」
「私達の事、見守ってくれて。」
「千歳さん……それが私達の仕事ですから、心配位させて下さい。」
優しく微笑む伊知地さん。
照れ隠しなのか
アクセルを踏み込み少しスピードを上げる。
窓から入り込む山の澄んだ空気は
市街に近づくに連れて少し淀んだ空気に変わった。
人が集まる場所には
思念や淀みが集まりやすくなる。
呪術師なんて名乗ってはいるものの
私は昔からそういう場所が苦手だ。
呪術師の人手不足は深刻だ。
だからこそ私も一呪術師として
戦わなくてはいけないのに
私には皆の様な力は無い。
だったら神子としての役目くらい……
結局その答えに辿り着いてしまう。