時を超えて、繋ぐ想い
シャワーを浴びて
乾いたワンピースに着替える。
あれだけ雨に打たれ
びしょ濡れだった筈の洋服が
こんなにも早く乾くのかと感心する。
ふと鏡をみると、首元にも
七海さんに付けられた痕が見える。
ワンピースを着てもその場所は隠れない。
多少恥ずかしさはあるけど
着るものはこれしかないので仕方ない。
今優先すべきは
七海さんが休んでいる内に
この部屋を出るという事。
部屋に戻ると
七海さんは変わらずよく眠っている。
昨日殆ど休まずに私に付き合ってくれたから
疲れはピークだったんだろうと思う。
優し過ぎる程、優しい七海さん。
どうか……幸せになって下さい。
「ありがとう……大好き。」
「すぅ……。」
ずっとずっと、大好きだよ……。
「あれ?ドアが開かない……。」
ドアノブに手をかけるが開く気配がない。
鍵が掛かってるのかとも思ったが
そういった類の物も無い。
部屋の中を見渡すと
ある機会が目に付いた。
精算機……?
お金払わないと出れないのか。
機械とか不思議なホテルだな。
「えっと……あっ!」
チャリ-ン
「っ!!」
財布から小銭が落ち
けたたましく、金属がぶつかる音が響く。
やばい………。
恐る恐る後ろを振り返ると
そこには体を起こし、私を見る七海さん。
「琉璃……?」
「あ、あのっ……。」
「……………。」
眉間に皺を寄せて
怒りに満ちた表情の彼。
腰にバスタオルを巻き
ベットから下りる。
そして私に向かって真っ直ぐ歩く。
私の背中には壁。
後ずさっても逃げ場はどこにも無い。
こうなってしまえば、一人部屋を出る事は不可能だ。
「……琉璃。」
バァァンッ
「きゃっ……七海、さん?」
「どこにいくつもりですか。」
「っ……。」
「一人で、どこに行こうと。」
壁ドンなんて可愛いものじゃない。
壁にめり込みそうな程の力で
私の動きを制止させた。
七海さんの瞳は
私を捉えて離さない。
「ご、ごめんなさっ………。」
「言った筈です、貴方を死なせはしないと。」
「っ……だって………それじゃっ……。」
「何か手がある筈です、一度五条さん達に相談しましょう。」
「七海さんっ……。」
ギュッ
「傍に、いて下さい。」
「え……?」
「私はもう、大切な人を失いたくない。」
「っ……。」
「貴方を愛しています、どこにも行かないで下さい。」
「七海さっ……んっ……ふぁっ……ゃっ……。」
切なそうな表情のまま
七海さんはキスをした。
腰を引き寄せ
彼の名前を呼ぼうとした私の唇を塞ぐ。
”愛しています”
そう言った彼の言葉が
鐘を鳴らしたかのように脳内に反響する。