時を超えて、繋ぐ想い


「琉璃さん。」


「あっ……さっきのはっ……その……。」


「……まずは、その涙を拭いましょう。」








そういうと
私を落ち着かせるために
親指で頬を伝う涙を払ってくれた。



それなのに、何度拭っても
次から次へと涙は溢れてくる。








そんな私を見てか
私の横に座り、七海さんは私を抱き締めた。
私が落ち着くまで優しく抱き締めてくれた。









「っ……ふぇっ……。」


「大丈夫、落ち着いて……ゆっくり呼吸をして下さい。」


「うっ……ふぅっ……。」


「………。」









私が泣き止むまで
ずっと抱き締めていてくれた。






さっきみたいな恥ずかしさは無い。

それよりも
七海さんの温もりが心地良くて
心が解れていくのがわかった。








「ごめん、なさい………。」


「……落ち着きましたか。」


「………。」


「電話のお相手は、親御さんですか。」


「……お母様です。」


「………貴方が死ぬというのは、どういう事ですか。」


「……。」


「……琉璃さん。」


「七海さんは、千歳家の神子の話は……ご存知ですよね。」


「はい、大方は。」


「神子の力は、千里眼。未来に起こりうる災厄や人の心の底を見通す能力。」


「えぇ………過去紡いで来たその力で、千歳家は今最盛を極めている。」


「私の御先祖様達……神子に選ばれた女の子達はね、皆十代で亡くなってるの。」


「え………?」


「視えたものを言葉にする、言霊……みたいな感じかな。そして、視えた事象が深刻であればある程に……。」


「………。」


「神子自身に返って来る力の反動は、大きくなるの……。」


「それは……。」


「私が視てしまったものはっ……それ位、酷い未来だったっ……。」










ギュッ









「あっ………。」


「もう、話さなくていい。」


「ふっ……うわぁっ……。」












優しい七海さん。




彼の腕から伝わる温もり。
















こんな話。

七海さんには聞かせたくなかった。
優しい彼は、要らない責任を背負うから。
















そんな七海さんだから
守りたいと思う。




大好きで愛おしくて
命をかけても守りたい人。















「琉璃さん。」


「っ……?」


「貴方が視たものがどれ程深刻なものであれ、貴方がそれを背負う必要ない。」


「だ、だけどっ……それじゃっ……。」


「それが自然の摂理……。」


「っ………。」


「呪術師は、誰かを守る為に命を投げ出さす覚悟……時としてそれを、他人に強要しなくてはならない。」


「……。」


「だから私は、呪術師をやめた。」


「………でも、七海さんは今呪術師をしています。」


「………。」













七海さんはわかってる。




この世は
誰かの犠牲の対価によって
成り立っている事を。
















そうせざるを得ない事も………。
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