時を超えて、繋ぐ想い
「うわぁ………何だか、お姫様の部屋みたい。」
車で十分程走った場所にあった
ホテルの様な個室になっている施設。
ホテルとは書いてあったけど
スタッフの人達はいないのか
受付もせずに自分達で部屋に入った。
そういうホテルもあるのか。
「こんなに可愛いホテル初めてです!」
「そうでしょうね、極力使いたくなかった場所ですので。」
「え?」
「貴方が情報に疎くて良かったです。」
「………今、私の事貶しました?」
「違いますよ。さ、シャワーを浴びて来て下さい。」
「でも、七海さんも体冷えて……。」
「遠慮せずに行って下さい、貴方の後にすぐ入りますので。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「着替えは脱衣所に置いてあるはずです。服が乾くまではそれを着ていて下さい。」
「はい。」
浴室に向かうと
一人では大きすぎる程の浴槽があり
早速お湯を張り始めた。
その間に体を洗ってしまおう。
それにしても
極力使いたくなかった場所って
どういう意味なんだろう。
昔事件が起きた
いわく付きの施設とか?
何にせよ
体を温める事が出来て助かった。
「七海さん……お、お待たせしました。」
「ん?どうかしましたか。」
「あ、あの……下着も濡れてしまったので……その……。」
「それ以上は言わなくて結構です。私も同じ状況ですので、服諸々乾くまではバスローブを纏っていて下さい。」
「は、はい………。」
「では、私も行ってきます。」
着替えって
このバスローブの事だったんだ…。
仕方がないのはわかるんだけど
下着付けてない状態でこれは
見えて無くても、凄まじく恥ずかしい。
七海さん
こんな時でも冷静だな。
さすが大人って感じだった。
それに比べて私は
少しの事で慌てたり、動揺したりして
七海さんから見たら子供も同然。
まぁ、歳もまだ十七歳だけど……。
七海さんは
美人で、頭が良くて、胸も大きくて
何が起きてもあたふたしない
そんな大人な女性がタイプなんだろうな。
「私とは、真逆だな……。」
プルルルルッ
「電話だ……お母様から?」
ピッ
「はい、琉璃です。」
「琉璃?今大丈夫?」
「はい、何かありましたか?」
「大ばば様から、貴方に神子の力が宿ったとお告げがあったらしいのだけど本当なの?」
「っ!」
「琉璃?聞いてるの?」
昔から私の両親は
千歳家の跡取りとしてしか
私を見てこなかった。
顔を合わせる度に
”まだ神子の力は宿らないのか”
”何も視えないのか”
”お前は出来損ないだ”
そう言われ続けてきた。
普段連絡なんかしない癖に
私に神子の力が宿ったと聞いて
こうやって掌を返したように近づいてくる。