時を超えて、繋ぐ想い
その後は
夕方まで買い物をしたり
食べ歩きをしたり海辺で散歩したり
思い思いの時間を過ごして行った。
いつだって楽しい時間というのは
あっという間に過ぎてしまうものだ。
何よりも、大好きな人と過ごした時間だったから。
今日が終わってしまえば
私は”死”に自ら近づいていく事になる。
千歳家は
そうやって繁栄を続けて来た。
私だけ逃げるなど許されはしない。
何よりも
七海さんや皆のあんな姿を
二度と見たくないから…………。
「………。」
「琉璃さん、そろそろ帰りましょう。天気も怪しくなって来ましたし。」
「あ、そうですね……。」
「名残惜しいのはわかります。また、来ましょう。」
「また………そう、ですね。」
「……琉璃さん?」
「今日は、本当にありがとうございました。とても楽しかったです。」
「いえ……私も楽しかったですよ。」
「……あれ?雨だ。」
ザァァァァァ
「っきゃあ!」
「俄雨ですねっ、車まで走りますよ!」
「は、はいっ!」
急に降り出した雨。
帰りたくないと思った私の心情を
表しているかの様だった。
車までは少し距離があり
走った所で七海さんも私もびしょ濡れになった。
五月と言えど雨に濡れた体が冷えるのに
そう時間は掛からなかった。
「くしゅっ……。」
「このタオルを使って下さい。」
「あ、ありがとうございます。」
「………体を温めた方が良さそうですね。」
「大丈夫です、その内乾きますし……。」
「その状態ではいずれ風邪を引きます。」
「で、でも、着替えなんて持ってないです……。」
ふと自身の服に視線を移すと
雨に濡れたワンピースが透けて
下着の色と形がくっきりと浮き上がっている。
それに気付いた私は
咄嗟に貰ったタオルで覆い隠した。
七海さんが
さっきからこっちを見なかったのは
これが原因だったんだ……恥ずかしい。
「っ……。」
「不可抗力です。」
「わ、わかってます……くしゅっ。」
「やはり、そのままではまずいですね。」
「ごめんなさい……。」
「貴方が悪い訳ではありません…………あまり気乗りはしませんが、仕方ありませんね。」
「え?」
そういうと
スマホを取り出して何やら調べ始めた。
五分ほど何も言わずに手を動かす。
と、思ったら
七海さんは車にエンジンを掛け
行先も告げずに走り出した。
来た方向とは真逆に向かってるけど
一体どこにいくんだろう。