時を超えて、繋ぐ想い

―七海side―








江ノ島に到着。
大体一時間半位で着いたか。


昨日深夜まで仕事をしていたせいか
多少疲れは溜まっている。




だが彼女のキラキラと輝く笑顔を見れば
頑張った甲斐があるというものだ。







「七海さん!見て下さい!海ですよ!」


「見えていますよ。」


「綺麗ですね!!」


「わかりましたから、少し落ち着いて下さい。」


「だってだって!嬉しいんですもん!」









彼女の身に付けている
白のワンピースが風で靡く。

女性らしく華奢な彼女の姿に
僅かばかりの胸の高鳴りを覚える。










無邪気な笑顔。

ここ最近の彼女は
明らかに様子がおかしかった。



急に泣き叫んだり
どこか諦めた表情をしたり
何か思い詰めているのは確かだった。




虎杖君達の事があったからか。
それとも”神子”としての力が目覚めたからか。

透視によって視えたものが
酷く凄惨なものだったからなのか。
彼女はそれを話そうとはしない。












”これで終わりにするから”

涙を流しながら
二人で出掛けたいと言った。






彼女の涙の意味を知りたい。













ただ今は
彼女のこの愛らしい笑顔が
少しでも長く続くように努力しようと思う。








「七海さん!」


「どうしました。」


「見て下さい、たこせんですって!」


「たこせん?」


「タコをおせんべいにしてくれるらしいです!」


「貴方は食べたいんですか?」


「有名らしいので食べてみようかなって……ただ、とても大きいので一緒に食べませんか。」


「ええ、構いませんよ。」


「やったぁっ!」







せんべい一つで
これだけはしゃぐ事の出来る人間も珍しい。






顔が隠れてしまう程の大きさのそれを
彼女と分けて食べていった。
笑顔で楽しそうな彼女に自然と笑みが零れる。







「七海さん。」


「何です。」


「その、写真……撮りませんか。」


「構いませんよ。」


「ありがとうございます!」


「これは私が持ちましょう。」


「ありがとうございます、じゃあ撮りますね。」


「……少し遠いですね。」


「えっ?きゃっ……。」











彼女の腰を支え
自分の方へと引き寄せた。


私の片腕に収まってしまう程
彼女は華奢な体をしている。




頬を赤くして驚く彼女。
それを見て、ついこちらも頬が緩んでしまう。












もう琉璃さんは
私の特別になっているのだと自覚する。
ただ、それを認める事は出来ない。






彼女はまだ子供……
そして、私は大人だからだ。
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