時を超えて、繋ぐ想い


「ところで……。」


「え?」


「どこか行きたい所はありますか?」


「行きたい所……?」


「”お出かけ”の件です。」


「あ………そうですよね。」


「琉璃さんの行きたい所に行きましょう。」





私の行きたい所……。


七海さんと一緒なら
私はどこでも嬉しいんだけど
任務では山奥に行く事が多いから
あえて、真逆の海とか……?



七海さんは行きたい所とかないのかな。





「私は、海とか行ってみたいかな……。」


「海ですか、いいですね。」


「七海さんは?」


「私はどこでもいいですよ。貴方の希望を優先しましょう。」


「……優しいな、七海さんは。」


「ん?」


「いえ、何でも……ありがとうございます。」


「では、海沿いメインで当日のプランを立てておきます。」


「わがまま言ってすいません。」


「謝らなくて結構ですよ、私は気の乗らない事は引き受けない質ですので。」








七海さんの優しい笑顔。


心臓の脈を打っている音が
彼に聞こえてしまうのではないか。




そう思う位、私の胸は高鳴っている。







頬は自覚出来る程の熱を帯びる。
七海さんにバレない様に視線をずらす。


横から聞こえたのは
七海さんの微かな笑い声。
きっと真っ赤な顔の私を見て笑ったのだろう。







「日程は、任務の進行具合いを見て近日中に設定しますね。」


「は、はい……。」


「あーーーーーーー!!!」


「っ?野薔薇ちゃん??」


「ナナミンが、また琉璃にちょっかい出してる!!」


「はぁ……また貴方ですか、釘崎さん。」


「しゃけしゃけーー!!」


「おや、狗巻君もですか。」


「おーー!!やれやれー!」


「五条さん、はっ倒しますよ。」


「おもれー、野薔薇頑張れー。」


「真希さん、任せて下さい!今日こそナナミンと決着を付けてやる!!」


「ちょっと、野薔薇ちゃん!?」


「表でろや、こらぁ!!!」


「はぁ……。」





七海さんは
””仕方ありませんね””
そう言うと、野薔薇ちゃんその他諸々と
部屋を出ていった。




部屋に残ったのは
私と伏黒君の二人だけ。
伏黒君は黙々とたこ焼きを食べている。




「皆、行っちゃった……。」


「だな。」


「……たこ焼き、食べよ。」


「なぁ、琉璃。」


「何?」


「お前が何を抱えてんのかは知らねーけど、一人で悩んでないで俺達を頼れよな。」


「え……?」


「俺達、仲間だろ。」


「伏黒君……うん、ありがとうっ…。」


「な、泣くなよ…。」


「だってっ……。」






ガラッ






「あーーーー!!」


「っ!?」


「今度は伏黒が琉璃を泣かせてやがる!!」


「ツナマヨ!!めんたいこ!!」


「何でそうなるんだよ!!」


「伏黒ぉぉぉぉ!!」


「野薔薇ちゃん!落ち着いてっ!!」









もうっ……。

皆が騒がしくて
余韻に浸ってる間もないよ。




でも今は
それがとてつもなく有難い。
背負っている荷物も忘れられるから。








皆とずっと
こうやって過ごせたらどんなに幸せか
私にはその方法を知る術は無いから。



どうか皆はずっと、幸せであります様に。
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