時を超えて、繋ぐ想い


「はぁっ……はぁっ……。」















小さい頃。



この力を羨んでいる自分がいた。
神子の力を特別だと思った。








その力があれば
周囲に認めて貰える。
皆に必要として貰えると思った。
















馬鹿だな…。

御先祖様達は皆
誰かを救う為に命を落としていたのに
それを羨ましいなんて……。


















だけど

渋谷事変……
あんな事は絶対に止めなくてはいけない。






七海さんが死んで
虎杖君や伏黒君、野薔薇ちゃん…
沢山の人が犠牲になる。












あんな残酷な事
絶対にさせちゃいけない。















「っ……だけどっ………。」


「琉璃さん。」


「あっ……七海さん………。」


「……。」


「ご、ごめんなさいっ…すぐ、戻ります。」


「その涙の意味を、教えて下さい。」


「えっ……?」


「先程、貴方は一瞬ゾーンに入った様な不思議な目をしていました。」


「………。」


「透視能力…元来、貴方のいる千歳家は千里眼の能力を持つと聞きます。」


「どうして、それをっ……。」


「初めて出会った時、貴方は千歳という家を酷く嫌っていました。何がそんなに嫌なのか、少し興味を持ったので調べたんです。」







七海さんは眼鏡を外す。


そして
諭す様な口調で言葉を続けた。







「何か、視えたんですね。」


「っ………。」


「……あまり、良い話ではなさそうですね。」


「……七海さん。」


「何です。」


「お願いを一つだけ、聞いてくれますか…?」


「お願い……内容にもよりますが、善処します。」


「……七海さんと二人で、お出かけしたい。」


「え?」







七海さんは
驚いた様な表情で私を見た。






私はきっと
神子の力のままに、皆に真実を伝えるだろう。




七海さんがいない未来に
私は何の希望も感じ無いから。
大切に思う人達に生きていて欲しいと思うから。






何人もの犠牲を払って作る未来より
私一人の犠牲で守れる未来の方がずっと良い。










だからこそ

一つでも多く、生きていて良かったと
素敵だと思える記憶を抱えて死にたい。
あの世に行っても、寂しくないように。








「私、昨日も言ったけど……七海さんが好きです。」


「琉璃さん……。」


「迷惑、ですよね。七海さん優しいから、嫌だったのに稽古とか私に付き合ってくれて……。」


「……。」


「でも、もう終わりにするからっ……最後にっ……私のお願いを、聞いてくれますかっ?」


「………言いたい事は色々ありますが、それを言うのは今では無い。」


「え…?」


「お出かけ、しましょうか。」


「いいん、ですか……?」


「可愛い愛弟子のお願いですので。」


「っ……。」













今、そんな優しい顔するのずるい……。










もうすぐ終わってしまうのに
これ以上好きにさせないでよ。












七海さん、ずるいよ……。
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