* season 1 *


「あんな可愛い子がいるのにっ、何でそんな事……。」


「可愛い子……?」


「白井杏奈ちゃん…あなたの婚約者なんでしょ!?
それなのにっ……何でこんな事するの!!」


「おい、待て。」


「もうっ…私に構わないでっ!」


「っ……話を聞け!」






気付けば
地面に押し倒されていた。


跡部君の瞳は私を捉えて離さない。




どうしてそんな眼で
私を見るの……。






「っ……。」


「杏奈は……男だ。」


「……………………は?」


「あいつは女装が趣味で、ああやってよく一人芝居をやってるんだ。」


「は?それはちょっと無理があるんじゃ……。」


「嘘じゃねぇ。あいつは、俺がオーストラリアに住んでた時の知り合いだ。」





女装が趣味って……
あんな可愛い子が男の子?


本気で言ってるの?
それとも私の事馬鹿にしてる?





「じゃあ、婚約者っていうのも……。」


「あぁ、いつものあいつのシナリオだ。あいつは体が弱くて、しばらく入院していたんだが……。」


「……。」


「……安心したか?」


「べ、別にっ……私は……。」


「素直じゃねぇな……だが、そんなところも……。」


「んっ……ぁっ……あとっ……んぁっ……。」


「可愛いぜ、花菜……。」






熱く舌が絡む。



苦しくて離れようとしても
跡部君は唇を決して離さない。





私…

やっぱり、跡部君が好きなんだ。





俺様なとこも
ちょっと強引なところも
本当は誰よりも仲間思いなところも……。





「んっ……跡部君っ……。」


「お前は俺だけ見てろ、他の男なんか見んじゃねぇ。」


「っ……。」


「好きだぜ、花菜。」


「ひゃっ……跡部君っ……やっ……。」







跡部君は首筋にキスを落とす。





こんな優しい触れ方…
私、本気にしてもいいの?






跡部君が私の事好きだって
本気で思ってもいいの……??
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