* season 1 *
「ありがとう、日吉君。」
「俺……先輩には、笑っていてほしいから。」
「日吉君……うん、そうだね。」
「それじゃ、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
日吉君の背中を見つめる。
誰かを好きになるのも
誰が好きになってくれるのも
全部全部、素敵な事の筈なのに……。
凄く凄く難しくて
こんなにもどかしいなんて……。
「思っても見なかった……。」
「何をだ。」
「あの…………きゃっ!!」
「お前、そろそろ慣れろ。」
私の背後から現れたのは
跡部君だった。
今、私が一番会いたくない相手。
どんな顔して会えばいいのよ……。
「跡部君………。」
「何だよ、その顔は。」
「別に……私に何か用?」
「用がなきゃ、会いに来ちゃいけないのかよ。」
「……今は、会いたくなかった。」
「アーン?」
あからさまに
不機嫌になる跡部君。
でも、知らない。
あんなに可愛い婚約者がいるのに
他の女の子に手を出す跡部君なんて………。
違う……。
本当は…
私だけを見ていなかった事が
酷く寂しかったんだ。
「何拗ねてやがる。」
「拗ねてなんかない、用がないなら私行くから。」
「……おい。」
グイッ
「きゃっ……。」
「逃げんな。」
「は、離してっ……んっ……ぁっ……やっ……。」
「離さねぇ、絶対に。」
フェンスに押さえつけられた私は
彼の力に敵う訳もなく、されるがままだった。
私が拒絶したからか
跡部君のキスはいつも以上に深く
離れる事を許さなかった。
「んんっ……ぁっ……ふぅっ……はっ……。」
「花菜……。」
「んっ……もっ……やだっ!」
「っ!?」
「酷いよっ……。」
「何で、泣いてやがる。」
「私の事っ……からかって楽しいっ?」
「……何だと?」
婚約者がいるくせに
何でこんな事………。
酷いよ、跡部君……。