* season 1 *
日吉君が
私を好き……?
日吉君の腕の力は強くて
押し返してもビクともしなかった。
不思議な位、周りは穏やかで
私達を邪魔するものは一つもなかった。
「んっ……日吉君っ……。」
ギュッ
「先輩、俺……。」
「……。」
「先輩の事、守りたい。俺は先輩の事泣かせたりしない。」
「日吉君……。」
「俺じゃ、だめですか。」
日吉君はまた
まっすぐな瞳で私を見る。
どうして
こんな私を……。
こんなグズグズで
こんな優柔不断で
こんな甘ったれで
一人じゃ何も出来ない
私なんかより
もっと可愛くて、優しくて
日吉君に相応しい人がいるのに。
「……日吉君の気持ち、凄く嬉しい。」
「……。」
「けど、私……。」
「部長が……跡部さんが、好きなんですか。」
「…………。」
「……俺、諦めませんから。」
「日吉君……。」
日吉君はもう一度
私をそっと抱きしめる。
爽やかな夜風が
私達を包む。
私は残酷な事をしている。
気持ちがないのなら
日吉君を突き放すべきなのに。
日吉君はいつも私の傍にいてくれた。
困っていた時、助けてくれたのも
落ち込んでいた時に話しかけてくれたのも
全部全部日吉君だった。
そんな彼を突き放すなんて
私には出来ないっ……。
「っ……。」
「先輩、泣かないで。」
「日吉君っ……。」
「言ったでしょう、俺は諦めないって。」
「っ……。」
「跡部さんから先輩を奪う…まさに、下克上。」
「……ぷっ。」
「先輩…?」
「あははっ、こんな時まで下克上なの?」
「当たり前です。あの人は、俺の目標……超えるべき相手ですから。」
日吉君、凄く良い眼をしてる。
跡部君の事
本気で超えたいんだ。
今私が日吉君にしてあげられるのは
全力で彼をサポートする事。
私のやるべき事を
思い出させてくれるのは
いつも日吉君だった。
しっかり、しなくちゃ……。