* season 1 *
早くドリンク配らなきゃ。
こっちは山吹中かな?
「ドリンクお待たせしました!」
「ありがとー!」
「千石さんがこれ、南さんがこれ…亜久津くんはこれね。」
「悪いね、冴水さん。」
「ううん、これが仕事だから。」
「…。」
「あれ、亜久津くん怪我して…。」
「触んじゃねぇ!」
「亜久津、彼女は怪我を心配してくれてるのにそんな言い方はないだろ。」
「うるせぇ。」
ふっふっふ……
その程度の脅しで
私が引き下がると思うなよ?
ブラック企業時代の
毎日の様に上司から罵詈雑言を浴びせられた
私の精神力を舐めるなよ。
「文句はそれだけ?手当するよ。」
「だから!必要ねぇって言ってっ…!?」
「この程度で文句言ってんじゃないわよ?子供じゃあるまいし。」
「なっ…。」
「おお、亜久津を手懐けてる…。」
私は亜久津君の上に跨り
顔に出来ていた擦り傷を消毒し
絆創膏を貼った。
亜久津君は
バツの悪そうな顔をしている。
こういう子って
突っぱねてるから誤解されやすいけど
ちゃんと練習参加してる分
根は真っ直ぐだったりするのよね。
「はい、終わったよ。」
「……礼は言わねぇぞ。」
「別にいらないよ、そんなの。私の仕事だし。」
「…変な奴。」
「亜久津君には負けるけどね。」
「テ、テメェ!!」
「あはは!亜久津、やられたなぁ!」
「チッ……。」
「女性に馬乗りされるとは、ざまぁ無いですね。」
「木手、テメェ…。」
そこに現れたのは
木手君、平古場君。
木手君と亜久津君
似たもの同士なのに顔合わせる度
喧嘩するんだよね。
「永四郎、こんな奴に構ってないで行くどー。」
「フン、良いざまです。」
「あ、木手君ちょっと待って。」
「何です?」
「あなたも亜久津君と同じ場所怪我してるよ。手当するね。」
「お、俺には必要ありま…。」
「いいから言う事聞きなさい。」
「う……。」
頬を赤らめる木手君。
見た目ヤンキーみたいだけど
こういう初なところは若いよね。
それにしても
本当にこの二人どっちもどっちだわ。
「何赤くなってんだよ、木手。小学生かテメーは。」
「あなた程ではありませんよ。」
「二人共、どっちもどっちだよ。はい、木手君も終わり!」
「あ、ありがとうございます…。」
「二人共、冴水さんに一本取られたね!」
「亜久津君、今日の試合で白黒つけましょう。」
「いい度胸してんじゃねぇか。」
「本当に二人共、仲良しだね。」
「「誰が!」」
「おお、ハモった…。」
この二人、今はこんなんだけど
大人になったら本当の友達になれそうだな。