* season 1 *






花菜

俺はお前が好きだ。





誰かにお前を取られるなんて
考えらねぇ…。





お前の
笑った顔も
困った顔も
泣いてる顔も…


見るのは全部俺でいい。
幸村や日吉には絶対渡さない。





「あとっ……くっ…だめっ……。」


「黙ってろ。」


「んっ……ぁっ……ふぁっ……。」


「花菜…俺は…。」


「っぁ……だめっ……って、言ってるでしょー!?」


「ぐふっ……。」


「やば、もろに入っちゃった。」


「テメー……溝落ちを殴るとは……良い根性してんじゃねぇか、アーン?」




花菜の水着をずらそうとした時
溝落ちに見事なまでのパンチ。


こいつ…
可愛い顔してなんて事しやがる…。




「だ、だって!そういう事はちゃんと好きな子にしなきゃっ!しかもまだ中学生でしょ!」


「お前は馬鹿か!どう考えたってお前がっ……。」


「それに!私は、跡部君に話があって来たの!」


「話?」





急に真面目な顔をする。


こいつの百面相には
本当に恐れ入る。


表情がコロコロ変わって
見てて飽きない。





「さっきね、精市さんとも話したんだけど…。」


「幸村?」


「練習中は、二度とあんな事しないでってお願いしたの。」


「え?」


「私がここにいるのは…この合宿に参加してる皆が、全力でテニスに打ち込める環境をサポートする事。」


「…。」


「皆の邪魔になるような事したくないし、私は私の仕事をきちんとしたいの。だから…。」


「…だから?」


「跡部君も、練習中は私に今みたいな事しないで。」


「…俺は練習中にそんな事はしねぇよ。」


「精市さんと仲直り、してね…。」




不安そうな顔で
俺の顔を覗きこむ。



馬鹿だな。
そんなことまで気を回してたのか。


俺達はそんな事で壊れる程
やわな関係じゃねんだよ。





「心配すんな、俺達はそんな事で仲違いする様な関係じゃねぇ。」


「良かった…。」


「ありがとうな。」


「え……?」


「何でもねーよ。」


「跡部じゃないか。」


「花菜ちゃんもいるじゃん。」


「二人で何やってんすかー!」


「花菜ちゃん水着可愛いー!」


「えーと…仁王君、丸井君、桃城君、菊丸君?」


「お前ら、何やってる。貸切にしてたはずだ。」


「受付に聞いたら、跡部だと言われたんだな。」


「だからいいなって。」


「はぁ…何がいいんだよ。」


「皆で遊びましょー!」


「いいじゃねぇか、何するよ。」


「バレーなんてどう?」


「良いよん!俺は花菜ちゃんと組むー!」


「おい!花菜に触んじゃねぇ!」


「悔しかったら取り返してみ……あ、あれ?跡部?」


「良い根性してんじゃねぇか、逃がさねぇぞ菊丸?」


「き、菊丸君!逃げよ!目が本気だっ!」





バレーと言ったはずが
何故か鬼ごっこが始まった。



ったく……。
花菜の奴も、こいつらも。


俺はダチに恵まれてるな。
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