* season 1 *

―跡部side―





「クソが…。」




あの時
あいつは俺を怖がっていた。


花菜は何も悪くねぇのに
俺はあいつを怖がらせちまった。



幸村が花菜にキスをした時。
全身の血が煮えたぎるような怒りを覚えた。


”俺のモノに触んじゃねぇ!”
そう思った。


別に、俺のモノじゃねぇのに……。




「何やってんだ、俺……。」


「跡部君、見つけた。」


「っ!?」


「何よ、その顔は…。」


「お前、何でここに…貸切にしてあるはずだぞ。」




俺は今、スパを貸切にしている。
どうして花菜がここにいる。

花菜は白いビキニを着ている。
彼女のしなやかな体のラインに
一瞬視線を奪われる。




「受付の人に聞いたら、ここだって言うから来たよ。」


「……何の用だ。」


「よいしょ…。」


「…。」


「跡部君、ごめんね。」


「…アーン?何でお前が謝る。」


「私が隙を見せて、あんな事になって……結果的に皆の邪魔しちゃったから。」


「花菜…。」




こいつは
どこまでお人好しなんだよ…。


普通怒るだろ。
花菜は悪くねぇんだから。




本当は、花菜は俺達より大人だ。
だからこそ…自分の未熟さが嫌になる。




「…大人の余裕かよ。」


「え?」


「お前は悪くねーだろ!少しは責めろよ!」


「跡部君……。」


「惨めになるだろっ……。」


「……。」


「お前を泣かせるつもりなんかなかっ……。」


「わかってるよ。」


「え…?」





花菜は俺の頬を両手で包み
笑顔で言った。



俺はあの時
自分でも信じられないくらいの力で
こいつの手を掴んだ。


本当なら俺に近づくのでさえ
怖いはずなのに……。





「跡部君は私を守ろうとしてくれただけでしょ?跡部君は俺様ナルシストだけど、本当は誰よりも優しくて仲間思いだって知ってるもの。」


「……。」


「いつも私の事見てくれて、ありがとう。」


「…ナルシストは余計だ。」


「俺様はいいのね…ぷっ…あははっ……。」





グイッ





「んっ……ぁっ……ふっ………っべくっ……。」


「っ…お前は誰にもっ……。」




俺は花菜を床に押さえつけ
キスをした。


絡む舌。
荒くなる息遣い。
紅潮する頬。
背中に回される腕。


花菜の全てが
俺の理性をぶっ壊す。




「跡部くっ……待ってっ……。」


「だから、待たねぇって言ってんだろ。」


「だって誰か来たらっ……んっ……っあ……。」


「俺以外に、そんな顔すんじゃねー…。」


「んっ……。」









こいつが
花菜が欲しくて堪らねぇ。


花菜の全てを
俺のものにしたい。
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