* season 1 *






テラスに着くまで
精市さんは一言も喋らなかった。




静かな時間。




私も伝えたい事があった。


精市さんの事をもっと知りたい。
だからこそこの合宿中の接し方には
ルールが必要だと思う。




「着いたよ。」


「綺麗……キャンドルに火が灯って、とても綺麗。」


「幻想的だね。」





いくつもキャンドルが散りばめられて
とても綺麗な場所。



運が良いのか
私達以外に人はいなかった。




「花菜、こっち座って。」


「はい。」


「……。」


「精市さん…?」


「君を、泣かせるつもりはなった。」


「え…?」


「本当に君に会えるなんて、思わなかったから…
気持ちに歯止めが聞かなかったんだ。すまなかった。」


「精市さん…。」


「お願いだから、俺の事…嫌いにならないでくれ。」




精市さんは
私の手を握りながら
少し寂しげな表情でそう言った。


嫌いになんか
なれるはずないじゃない。


精市さんと食べたフルーツタルト
本当に美味しかった。

あの時の彼の優しさが
本当に嬉しかったから…。




「嫌いになんて、なれるはずないじゃない。」


「え?」


「あなたと食べたフルーツタルト、すっごく美味しかったから。」


「花菜…。」


「私も精市さんにまた会えて、嬉しかった。こんなに早く会えると思ってなかった。」


「君を泣かせた俺を、許してくれるのか。」


「許すも何も、私は怒ってないよ。だけど……。」





私は皆の邪魔を…
合宿の雰囲気を壊すような事は
絶対にしたくない。



あの時みたいに
変に皆の集中を切るような事だけは
絶対にしちゃいけないから。





「練習中は、もうあんな事しないで下さい。」


「……。」


「私は皆のサポートをする為にここに来た。やるべき仕事をちゃんとやりたいの。」


「花菜…うん、そうだね。もう練習中、君には必要以上に関わらないって約束する。」


「精市さん、ありがとう。」


「俺もこの合宿で更に高みを目指す。だから、俺達のサポートも頼むよ。」


「もちろん、任せて!」


「ありがとう、花菜。でも、練習が終わったらまた君に会いに行ってもいいかい?」


「それは、ご自由に!」


「はは、ありがとう。」






良かった。

精市さん、笑ってる。




後は、跡部君に会いに行かないと…。
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