* season 1 *
「頂きます!」
「どうぞ。」
「……美味しー!フルーツが新鮮で美味しいし、下のタルトもサクサクで美味しい!」
「良かった。」
「んー、美味し!」
「本当に幸せそうな顔をして食べるね。」
ケーキを頬張り
幸せそうな顔をする彼女につられて
俺まで笑顔になるよ。
口の周りにクリームをつけて
本当に無邪気だな。
「ご、ごめなさい…みっともないですよね。」
「いや、可愛いよ。」
「またまた、お上手ですね。」
「本心なのに…心外だな。」
ペロッ
「……え?」
「ん、美味い。丸井が言ってたのは本当だったんだ。」
「あ、あの……。」
「ごめん、つい美味しそうで。」
俺は無意識の内に
彼女の口元に付いていたクリームを舐めた。
自分でしたくせに
やたらと鼓動が早くなる。
同時に彼女の頬も
赤く色付いていく。
まったく…。
いちいち可愛らしくて嫌になる。
「ふふっ、顔真っ赤だね。」
「も、もうからかわないで下さいっ……。」
「ごめん、怒らないで。」
「タルトくれたから許してあげます。」
「ありがとう。」
「ご馳走様でした!本当にありがとうございました!」
「こちらこそ、楽しかったよ。」
「もし、また会えたら何かお礼させて下さい!」
もう一度、君と会えたなら
俺は君の事をもっと知りたい。
今、俺達は合同練習試合の為に
東京に来ている身だ。
やるべき事を見失う訳にはいかない。
ただ…
もし君にもう一度会えたなら
俺は君を離しはしないだろう。
「じゃあ…俺とデートしてくれる?」
「デート?そんなので良いんですか?」
「十分すぎるよ。」
「わかりました!また、会えたら必ず!」
「きっと、また会えるよ。」
その後
名前も知らない彼女と別れた。
”また、会えたら必ず!”
彼女の後ろ姿を眺めながら
心の中に感じる微かな予感に胸を踊らせる。
とても可愛らしい子だったな。