* season 1 *


「とはいえ……。」




あからさまに落ち込んでいるね。
彼女もあのケーキが相当食べたかったみたいだ。



やっと手に入れたケーキを
他人に譲れる彼女の優しさに
俺の心は暖かくなった。



あの時
男の子の様子を気に止める人は
誰もいなく、彼女だけだった。


それは彼女が
人を想う事が出来る証拠だ。




「お嬢さん。」


「苺タルト…。」


「そこのお嬢さん。」


「…………ん?私?」


「あはは。そう、君だよ。」




不思議そうな目で
俺を見る。

かと思ったら首を傾げて
何か考え込んでいる。


表情がコロコロ変わって
本当に可愛らしいな。




「あの、私に何か御用ですか?」


「いや、さっき男の子にケーキを譲ってあげてるのを見てね。」


「あはは、恥ずかしい所をお見せしてすいません。」


「恥ずかしくなんかない、君はとても優しいんだね
。」


「いえ、あのケーキはあの子が食べた方がきっと幸せでしたから。」


「…良かったら、これ一緒に食べない?」


「これは……フルーツタルト!あのお店の!」


「俺もたまたま買いに来てたんだ。」


「でも、悪いですよ…。」




この子、わかりやすいな。

すぐに食べると言えば
はしたないと思われるから
とりあえず一度は断っておこうと思ってる顔だ。


本当に、可愛いね。




「俺が君と食べたいんだ、だめかな。」


「喜んで!」


「あはは、素直でいいね。」





俺達は公園のベンチに移動して
一緒に食べる事になった。





参ったな…。

喜ぶ彼女の笑顔に
どうしようもなく胸が高鳴る。
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