* season 1 *

―日吉side―





くそ、越前の野郎
負けたらジュース買ってこいとか
何様だって話だ。


つか、あいつ……。
一年のくせに何であんなに偉そうなんだよ。





「木手、またテメーか!」


「亜久津君、また君ですか。しつこいですね。」


「あぁん!?やんのか!!」


「臨むところです。」




あれは
亜久津さんと木手さん?



自販機の前で
何やってんだ、あの人達。




「二人とも、どうかしたの?」


「あぁ?テメーは……。」


「冴水さんですね、こんな所でどうしたんですか。」


「いや、それはこっちのセリフなんだけど…。」



冴水先輩?
こんな所で何して…。



「こいつが、俺が飲みもん買おうとしたのを邪魔しやがったんだ!」


「聞き捨てなりませんねぇ、俺の方が早かったはずです。」


「…………………………。」





冴水先輩
あからさまに呆れてる…。


無理もないよな。
あの二人、やってる事が小学生だ。
毎回顔合してはあんな事やって。


くだらね。





「もうさ、テニスで勝負すれば?」


「……それを早く言え。木手、行くぞ。」


「後悔しても知りませんよ。」


「またな、冴水。」


「冴水さん、また。」


「う、うん。頑張って。」




歩きながらメンチ切ってるし…。




「……さて、私も仕事しなくちゃ。」


「冴水先輩?」


「あ、日吉君。」


「こんな所でどうしたんですか。」


「あ、えっと……。」







先輩は困った顔をする。


俺は知ってる。
先輩に何があったのか。


それに、俺が越前に
マッチポイントを決められた理由はそれだ。


たまたま目に入った
幸村さんが先輩にキスをする姿が
俺の動きを止めた。


その後の部長との言い合いも
俺には全てが腹立たしかった。


何よりも…
先輩を泣かせた事が、許せなかった。







「…何か、あったんですか。」


「……。」


「先輩?」


「ううん、何にもないよ。ありがとう、日吉君。」


「……俺には、言えませんか。」


「えっ…?」


「俺じゃ、頼りになりませんか。」





先輩、もっと俺を頼って。


俺は先輩のそばにいたい。
もう、先輩が泣かなくていいように。


俺じゃ、ダメですか。
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