*season 9*
東堂の苦しげで、孤独に満ちた
あの表情は一体何だ。
真田を取られるのが嫌で
妬みの感情のままに動いていると思ったが
それだけではなさそうだな。
東堂建設、か。
少し調べてみる必要がありそうだな。
「お嬢様、難しい顔をしてどうかなさったのですか。」
「………。」
「おい、片桐。朝比奈さんが呼んでいるぞ。」
「ん?何だ。」
「何か考え事か。」
放課後
私は真田と同じ帰宅方向のグループに
朝比奈と二人で護衛についていた。
学校内では特に問題はなく
部活も無事に終わった。
当たり前だが部活には東堂は来なかったらしい。
「……いや、ちょっとな。」
「桜良の事か。」
「お前も気付いたか、真田。」
「……あの涙の裏に、俺達の知らない何かを感じた。」
「……。」
「お嬢様。」
「ん?」
「東堂建設の事、東堂桜良の事が気になっておられるのですね?」
「朝比奈…。」
「彼女の様に、他人に居場所を求め自分の存在価値を見出そうとする人間の中に多いのは…家族から愛情を貰えなかった者です。」
「………。」
””桜良の事なんかっ………結局誰も………””
「朝比奈。」
「はい、私の方で調べておきます。」
「いつもすまないな。」
「前々から思っていたが、お前は何者なんだ。」
「別に何者でもねぇよ。くだらねぇ事気にしてんな。」
「………。」
「よし、私は真田を送ってくる。」
「かしこまりました。お嬢様、お気を付けて。」
「誰に言ってんだよ。」
朝比奈とその他の部員と別れ
私は真田と共に奴の自宅方面に向かった。
東堂が何か仕掛けてくるとしたら
間違いなく私と真田に対してだろう。
そこらのヤクザかチンピラを雇うか。
何の力も持っていない東堂が
考えそうな事だな。