*season 10* fin
「ん………。」
霞む視界。
見えたのは私の部屋の天井。
どうやら私は自宅に戻ってきたようだ。
そして何故か下着姿。
思考が上手く回らなくて
とりあえずタオルケットで体を覆う。
私は何故こんな格好を?
そもそもどうやってここまで帰って……
そう考えていると、部屋の扉が開く。
「目、覚めたん?」
「種ヶ島君………。」
「すまん、勝手にシャワー借りたわ。あと乾燥機。」
「あ、うん……それはいいけど……。」
「………そっち、いっても良ぇ?」
服が濡れて乾燥機にかけているのか
彼は上半身に何も身につけていなかった。
真剣な眼差しが相まってやけに色っぽくて
普段の彼からは想像も出来ない雰囲気だった。
鍛え上げられた体は異様な程艶やかだ。
鼓動が聞こえてしまう。
それ程までに私の胸は高まっていた。
「そこじゃ……だめ……?」
「涼の傍に行きたい。」
「っ……。」
「……堪忍な。」
そう言うと彼は私の隣に座り
そっと私を抱き締めた。
体を覆っていた筈のタオルケットは
肩から滑り落ち気付けば下着姿になっていた。
彼の体温がとても心地好くて羞恥心など
どこかに消えてなくなってしまった。
「種ヶ島君……?」
「俺な、ずっと奈々ちゃんが好きや思うてた。」
「……。」
「奈々ちゃんが俺の事好きでおってくれて、嬉しい筈やのに……涼が離れて行ってしまう事の方が悲しくて、苦しかった。」
「え………?」
「さっきの涙も、嬉し涙やあらへんのやろ?」
「っ……。」
「自分が苦しくても、誰かの為に行動出来る涼の優しいところがほんま大好きやった。」
「っ………ふぇっ………。」
「他の男が涼の事可愛いって言ってるって聞いた時も、誰にも渡さへんて思った。」
「種ヶ島君っ………私っ………。」
「好きやで、涼………誰にも渡しとうない。」
私を抱きしめる腕に力が籠る。
今起きている事が信じられなくて
ただただ涙は零れるばかりだった。
流れる涙を手で拭い取り
視線を合わせた彼は
私の唇に自身の唇を重ねる。
軽く触れるだけのキスを何度かした後
彼は舌を滑り込ませて来た。
驚いてビクッと後ずさろうとすると
後頭部を抑えられ彼の愛撫から逃げる事は出来ない。
甘い声と絡む舌の水音が
より二人の気持ちを高めていった。
「んっ……ぁんっ……ふぁっ……。」
「可愛いで、涼…………すまん、抑え効かへんかも。」
「待ってっ………あっ……。」
「涼に触れたい……あかん?」
赤く常軌した体と
瞳を潤ませて欲情した彼の表情が
私が首を横に振る事を許してくれない。
そんな顔で見られたら嫌なんて言える筈ないのに。
彼は私の耳にキスを落とす。
”好き” 何度もそう囁いては
私の唇と重なる。
甘くて蕩けそうで
何度も重なる彼の唇が酷く心地良い。
「ん……ふぅっ……種ヶ島くっ……。」
「涼、可愛過ぎ……。」
「っ……。」
「……なぁ、俺の事好きか?」
「え……?」
「好き?」
「……大好きだよ、初めて会った時からずっと。」
「ほんま?」
「うん、ほんま。」
「……。」
「種ヶ島君……?」
「あかん、どんどん好きになる……。」
今度は私から唇を重ねる。
種ヶ島君が触れられる場所にいる。
もう我慢なんかしない。
誰にも取られたくないし渡さない。
「涼、あかんて……。」
「え?」
「そない可愛ぇ事されたら……。」
「あっ……んっ……。」
「覚悟しぃや?泣いても止められへん。」
これは
私の想いが叶うまでの
甘くて切ない物語。
―完―