*season 10* fin
次の日。
私は珍しく学校を休んだ。
別に体調が悪いわけでも
何か理由がある訳でもない。
何となく行きたくなかったのだ。
私がいてもいなくても
何の問題も無い。
だからズル休みする事には
何の罪悪感も感じない。
両親は数年前に亡くなった。
父は病死、母は父の死を受け入れられず自殺。
私は若くして家族を失った。
私が学校に行かなくても誰にも迷惑はかけない。
「どこか、出かけようかな。」
おしゃれして、美味しい物食べて
可愛いお店でお買い物して
少しは気分転換になるかな。
お気に入りのワンピースに袖を通して
髪の毛を結って、少しだけメイクもする。
ほんの少しだけ背筋が伸びる。
「よし、行こう。」
ガチャ
「あっ……。」
「え………種ヶ島、君?」
「おはよ、涼。」
玄関のドアを開けると
インターホンを押そうと手を伸ばす
私服姿の種ヶ島君がいた。
ちょうど私が出てきた事に驚いたのか
目を丸くしていたがすぐに笑顔に変わる。
というか彼はここで何をしているのだろうか。
授業はとっくに始まっている時間だ。
「お、おはよう……種ヶ島君何してるの?学校は?」
「涼が休みって、センセー言っとったから俺も休んで来た!」
「え……意味がわからないんだけど。」
「涼おらんとつまらんやろ?だから早退したっちゅー訳や。」
「わ、私なんかいなくたって変わらないでしょ?早く戻りなってば。」
「何でそんな事言うん。」
「だってっ……。」
「俺は、涼と一緒が良ぇ。」
「だって、奈々ちゃんは…?」
「奈々ちゃんは奈々ちゃん、涼は涼やろ?」
何それ…意味がわからない。
種ヶ島君の思考は
いつも人並みを外れている。
それを理解する方が無理なのかもしれない。
こっちの気も知らないで
太陽みたいな笑顔で私を見る。
いつだってキラキラ輝いていて
私の何歩も先を進んでいってしまう。
その内その後ろ姿も見えなくなるんだろう。
「………。」
「出かけるんやろ?一緒行こ。」
「でも……。」
グイッ
「きゃっ!」
「涼、行くで!」
「ちょっ、種ヶ島君!?」
彼は私の手を握り歩き出す。
何故か恋人繋ぎ。
私には彼の行動の意味がわからない。