* season 1 *
「日吉君はさ…凄く優しいね。」
「俺が、ですが?」
「うん。日吉君が私をマネージャーって認めないって言ったのも、女子が入る事で面倒な事になるかもしれないと思ったんでしょ?」
「は、はい。」
「それを伝えるって、本当は簡単な事じゃないんだよ。」
「え…。」
自分が嫌われ役になってでも
彼は氷帝学園男子テニス部を守りたかった。
それだけあそこは
彼にとって大切な場所。
日吉君だけじゃない。
皆にとっても。
「日吉君は皆の事を、凄く大事に思ってるって事。」
「先輩……はい。」
「ふふっ、日吉君の笑顔可愛い。」
「っ…からかわないで下さいっ!」
「日吉君の笑顔レアだね!」
「あなたという人はっ…。」
ガラッ
「アーン?冴水、やたらと早いじゃねぇか。」
「跡部君、おはよう。」
「日吉?お前、ここで何してやがる。」
「部長に借りた本を返しに来たんですけど、冴水先輩が…。」
「日吉君っ!」
「むぐっ!」
反射的に
日吉君の口を手で塞いでしまった。
だって跡部君に伝えたら
片っ端から火炙りにしそうだし…。
本当はテニス部の皆の事を
純粋に思っている女の子達なんだから。
「お前ら、何やってんだ。」
「日吉君、そろそろ教室行った方が良いんじゃない!?」
「えっ?」
「日吉君、さっきの事は二人の秘密ね。」
「先輩…わかりました。」
「アーン?」
「部長、本ありがとうございました。」
そういうと
日吉君は教室から出て行った。
日吉君には二回も助けられちゃったな。
後で何かお礼しなくちゃ。
「でも、日吉君の笑った顔…レアだったな。」
「花菜。」
「何?」
「お前、何でこんな早くにいるんだ。」
「え……そ、それは……。」
言えない。
絶対に言えない……。
朝練ないの忘れてましたなんて
絶対、跡部君に馬鹿にされる。
「じ、実は……。」
「どうせ、朝練ねぇの忘れてたんだろ?」
「う……。」
「隠し事下手なくせに、らしくねぇ事してんじゃねぇよ。」
「ひ、ひどい…。」
「アーン?褒めてんだよ。」
「どこがよ!」
「ふっ。」
跡部君め…。
歳上を馬鹿にしてー!
いや、今は同い歳だけど…。
まったく…。
殻に篭ってたのが
本当に馬鹿みたい。
最初から信じればよかったのに…。