*season 10* fin



種ヶ島君との関係は
高校二年生の時に始まった。




私は人付き合いが
あんまり得意なタイプではなく
どちらかと言えば一人でいる事が多かった。

別に虐められてる訳じゃないし
クラスの子達と必要なコミュニケーションはとる。
ただ、一人でいる方が楽というだけ。







ある日クラス替えが行われた。
見知った顔もいれば初めましての人もいた。
同じクラスになって喜ぶ人や
前後の席でよろしくと挨拶をする人達。


ぼんやりとその風景を眺め
ふと窓の外に目を移す。
私の席は一番後ろの窓側の席で
隣に席は無いちょうど後ろに飛び出している。
極力目立ちたくない私にとっては理想的な席だ。








「自分、名前何て言うん?」








そう声を掛けてきたのは
前の席の銀髪で褐色の肌をした彼だった。




何かスポーツでもしているのだろうか。

肩幅か広く、逞しいその体は
制服越しでも十分わかる程だった。



ふとそんな事を考えていると
不思議そうな顔をして私を見る彼の顔が
気付けば目の前まで来ていた。






「俺の顔に何かついとる?」


「あ、ごめんなさい…。」


「別にかまへんよ。そんで名前は?」


「蒼井 涼(あおい すず)です。」


「涼ちゃん、可愛ぇ名前やん。」


「あ、ありがとう。」


「俺は種ヶ島修二!よろしゅうな!」





太陽みたいな彼の笑顔。

周囲まで笑顔にしてしまいそうな程
明るく眩しい彼の雰囲気に圧倒される。
きっと友達も多いのだろうと思う。


現に右隣と前の席の子から話しかけらている。
元々面識があるようですぐにそちらに向きを変えた。








その日から
種ヶ島君は事ある毎に
何故か私に絡んでくるようになった。






「なぁ、涼ちゃん。」


「え?」


「教科書忘れたん、見せてくれへん?」


「あ、いいけど…。」


「おおきに!」







それならば隣の人に見せてもらった方が
やりやすいのではないかと思ったが
あえて口にする様な事はしなかった。


私自身、彼とおしゃべりしている時間は
何となく特別な感じがして嬉しかったからだ。




その他にもお弁当を一緒に食べたり
クラスの係決めの時に一緒の係に手を挙げたり
移動教室の時に一緒に行こうと誘ってくれたり
彼の存在が私の高校生活を彩っていった。









いつからだろう。

その特別な存在の彼に
恋愛感情を抱く様になったのは。




不安なんか一つも無いような顔して
眩しい位の光で私を照らしてくれる。
種ヶ島君も私を特別に思ってくれてるって
勝手に思いこんでたんだ。


そんな勘違いさえしなければ
今頃こんなに辛い思いもしなかったのに。
ろくに人付き合いもしてこなかった私には
彼との距離感は全て特別に感じたのだ。







種ヶ島君にとっては
その他大勢の中の一人だったのに。


彼は楽しい事が好きで
色々な人との関わりを大切にしていた。
だから私とも一緒にいてくれただけ。








あの頃の私に
馬鹿だなって言ってあげたい。
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