*season 10* fin
「涼ー!」
「あ、種ヶ島君。」
「また上手くいかへんかったー…。」
「そっか…残念だったね。」
放課後の教室。
何をする訳でもない。
図書室で借りた本をペラペラと
一枚、また一枚と捲る。
そろそろ帰ろうか。
そう思っていたところに
同じクラスの種ヶ島君が
私の名前を呼びながら教室に入って来た。
種ヶ島君が私の所に来るのはいつもの事。
彼には好きな子がいる。
隣のクラスでとても綺麗な子だ。
彼はその子の事を ”奈々ちゃん” と呼ぶ。
私は所謂恋愛相談というものを受けている。
「今日こそ一緒に帰ろうと思たんやけど、声かけられへんかったー!」
「また明日もあるし、そんな顔しないで。」
「せやけどー…。」
「種ヶ島君の想いが伝わる日は、きっと来るよ。」
「ほんまにそう思うん?」
「種ヶ島君、格好良いし一緒にいて面白から。」
「涼……自分めっちゃ良ぇ子やなぁ。」
良い子、か。
何気無く言った彼の言葉に
何度胸が苦しくなっただろう。
私があなたを
どれだけ想っているかなんて
そんな事考えた事もないよね。
毎日同じ様に
好きな人から他の女の子の話をされる。
こんなに残酷な事があるだろうか。
私の机に突っ伏して切なそうな彼の姿を
あと何度見ればいいのだろう。
何度耐えたところで彼の心に私はいない。
私はまさに、話を聞いてくれる
都合の”良い子”なのだと思う。