次の日
朝練前の時間に
真田、柳、瀬名、私の四人で
東堂を待ち伏せる。





あの女の事だ。

データが無い事に気付いて
怒り狂って私に会いに来る筈だ。






「お、来た来た。」


「一体何したのよっ！！！」


「おいおい、まずはおはようございます……だろ？」


「ふざけないでっ！」


「あはははっ！やっぱり演技じゃねぇ方がお前らしいな。」


「ねぇ、澪。私達一体何の事かわからないんだけど……。」


「後で真田から聞いとけ。」


「ふざけやがってっ……。」







東堂の奴
可愛い顔が台無しじゃねぇか。
般若みてーな顔しやがって。







だか、まだまだこれからだぜ？











ほぉら……役者のお出ましだ。







「どうした、東堂。そんな顔になるほど悔しいか？」


「黙れっ！お前等もテニス部の奴等も、地獄に落としてやるからっ！」


「………桜良？」


「っ……あっ………。」







そこに現れたのは
切原、仁王、柳生の三人。



真田に言って
朝練に少しばかり早く来る様に仕向けたんだ。
あんなボイスレコーダー要らなかったな。








切原と仁王は目を見開き
柳生に限っては口元を抑えて
信じられないとでも言う様な顔をしている。










さぁ、東堂。
お前ならこの状況どうする。





「桜良……今のは、どういう事だ。」


「仁王先輩っ……これは……。」


「お前、俺達の事っ……騙してたのかよっ！」


「赤也先輩っ！違うの！！」


「桜良さん……どういう事か説明して下さい。」







確かに
元を辿れば全て、東堂が仕組んだ事だ。






だか、奴等
自分のした事は棚に上げて
東堂の事を責めやがって……。




こいつらの根性も
相当ねじ曲がってやがるな。






「………俺達に、桜良を責める事が出来るのか？」


「真田副部長……だってこいつは、今俺達の事も潰すって！」


「咲を追い詰めたのは、桜良だけでは無い。俺達も一緒だろう。」


「弦一郎……あぁ、その通りだ。」


「結局………また咲先輩の事なんだ。」


「桜良さん？」








柳生が東堂の肩に手を置こうとした時
凄まじい勢いでその手を振り払った。










怒り………
いや、憎しみ、絶望。



東堂は苦しげに涙を流し
こちらを睨みつけた。














東堂のこの表情。















………何だ。










こいつ、何を抱えてやがる。








「桜良の事なんかっ………結局誰も………。」


「桜良、お前………。」


「皆大嫌い……桜良を裏切った事、許さないから。」


「……。」


「桜良！待てよ！！」


「やめとけ、切原。」


「てめぇっ………。」


「東堂のあの表情見てわかんねーのか。」


「え……？」


「今のあいつには、誰の声も届かない。」


「っ……。」


「真田。」


「……何だ。」


「テニス部全員、学校以外では極力個人行動は避けろ。」


「理由は何だ。」


「次の標的は俺達、という事だな。」


「柳、その通りだ。」


「蓮二、全部員の帰宅ルートは方向的にいくつあるの？」


「方向別で言えば三方向だ。正門を出て東西に分かれるか、裏門の方から南に向かう部員もいる。」


「なるほど……ならば、各帰宅のグループに護衛を二人ずつ付ける。家に帰るまでは絶対に一人になるな。」


「護衛……片桐、おまん何者じゃ。」


「余計な事考えてねーで、自分の身を案じてな。」


「澪、私は蓮二と同じグループにつくわね。」


「頼む、私は他の方につく。各グループ、なるべく人通りの多い大通りを通って帰れ。」














東堂のあの表情………。











もう少しあいつの事を
調べてみる必要がありそうだ。