*season 9*
「それで、お嬢様は何の為にこんな事を?」
「咲が屋上から飛び降りたのは知っているな。」
「はい。」
「それには、テニス部が関わっている事がわかった。」
「……身内に、敵がいたのですか?」
「話せば長くなるが……。」
テニス部で起きた事
柳や蓮二の事、東堂の事。
話が進むにつれて
朝比奈の表情が怒りに満ちていく。
朝比奈は理不尽な事が
一番嫌いで許せない人間だ。
だから、汚職まみれの警察を辞めた。
すると、突然私の腕を掴む。
「っ………な、何だよ。」
「この手首の怪我、まさか……。」
「こ、これは……。」
「おかしいとは思っていましたが、手が滑ってというのは……嘘だったのですね。」
「………。」
ギュッ
「あ、朝比奈……?」
「もう、二度と……こんな無茶をしないで下さい。」
「………うん、ごめん。」
朝比奈に抱き締められる。
こんな風に
人の温もりを感じたのは
いつぶりかな………。
ここ最近は海外視察が続いて
両親の顔もまともに見ていない。
この温かさが愛おしく
無くしたくない、そう思う。
「も、もう離せって……。」
「お嬢様は、こういう時素直で可愛いですね。」
「殴るぞ……。」
「はは、冗談ですよ。」
「たくっ……。」
「さて、話は大体わかりました。今回のミッションはその東堂桜良のスマホ及びPCをハッキングし、思しき動画データの削除……という事ですね。」
「名前、住所、携帯番号位しかわからないが平気か?」
「それだけあれば、あの男なら十分です。」
「よろしく頼む。」
「お任せ下さい。」
朝比奈は
早速その相手に連絡した。
一時間もあれば作業は終わるらしい。
とりあえず
明日の東堂の反応を見てから
次の手を考えるか。