*season 9*
その日は
真田を車で自宅まで送り
私自身も家に帰った。
やっと臨戦態勢に入れる。
まずは
東堂の携帯をハッキングして
あのデータを削除させないとか。
「お嬢様、お呼びでしょうか。」
「朝比奈、急に呼び出してすまない。」
「いえ、ご要件は。」
「お前の知り合いに、ハッキングに詳しい奴がいたよな?」
「………は?」
「そいつに頼みたい事がある、連絡をとってくれ。」
「お嬢様、それは何の為にでしょうか。」
「お前に言うつもりはない。」
「……。」
「これはお願いじゃない、命令だ。」
「………それは、聞けません。」
「だから、命令だと言った筈だ。」
「………。」
「お前が思っている様な事は無い、安心しろ。」
朝比奈は眉間にシワを寄せて
私の顔を見ている。
そりゃそうだよな。
朝比奈は元々警察の人間だ。
ハッキングなんて犯罪用語聞いたら
そういう顔になるのは当たり前だ。
だが……
ここで私が引く訳にはいかない。
「しかし、お嬢様……。」
「お前が私を守るように、私にも守らなければいけない奴等がいる。」
「………。」
「朝比奈、力を貸してくれ。」
「………まったく、お嬢様には敵いませんね。」
「ありがと、朝比奈。」
「ただし、条件があります。」
「条件?」
「連絡は私がします。」
「……。」
「そして、お嬢様がしようとしている事をきちんと説明して下さい。」
「それは……。」
「出来ぬのなら、私は従いません。」
「………。」
「お嬢様を守る事が私の使命です。」
朝比奈の目、本気だ。
諭す様な口調だけど
貫く様な視線から目を逸らす事が出来ない。
朝比奈はいつだって
私の傍にいて、怖いものから守ってくれた。
小さい頃から
実家が財閥だからというだけで
皆一歩下がって腫れ物を扱う様な態度だった。
それが嫌で、立海大附属中に転校して来た時
片桐財閥の人間だと言う事を隠したんだ。
正直、うんざりだった。
困っている時に
助けに来てくれる様な友達もいなかった。
そんな私の傍にいてくれたのは
いつだって朝比奈だった。
昔から両親は仕事が忙しくて
大概行事には来なかった。
だけど
幼稚園の運動会もお遊戯会も
小学校の遠足も授業参観も
来てくれたのは全部、朝比奈だった。
家族以上に
朝比奈は私を大切にしてくれた。
「………わかった。」
「お嬢様……。」
「私の我儘に付き合わせて、すまない。」
「お嬢様の目を見れば、遊びでは無い事はわかります。だからこそ、いつでも貴方を守れる様に傍にいたいのです。」
「ああ、わかってるよ。」
「ありがとうございます、お嬢様。」
まったく
こいつには嘘つけないな。