*season 9*
あの日
咲が屋上にいたのは
真田と会っていたからだった……。
心から信頼していた奴に
別れを告げられた咲。
どれ程
辛かっただろうか。
どれ程の絶望だったか……。
「それで、全てだ……。」
「………。」
「咲を追い詰めたのは、俺だ……。」
「………話してくれた事、礼を言う。」
「……俺を、責めないのか。」
「お前を責めて、咲が目を覚ますならそうする。」
「……。」
「真田。」
「……何だ。」
「最後まで、咲を想ってくれて……ありがとう。」
「っ……くっ……うぁぁっ……。」
真田は、声にならない様な
嗚咽を漏らしながら涙を流した。
こいつも被害者だった。
守りたいのに
傍にいる事を許されなかった真田は
一番苦しかったのかもしれない。
「今度、咲の顔を見に行ってやってくれ。」
「俺には、咲に会う資格など……。」
「咲はお前を待ってる。」
「…………わかった。」
その時だった。
”裏切り者”
後ろを振り返ると
屋上のドアの前に東堂が立っていた。
真田の顔が一気に強ばる。
「桜良……。」
「真田先輩、桜良の事裏切るんだ。」
「東堂………。」
「知らないよ?どうなっても。」
「っ……。」
「へぇ、どうなるってんだよ。」
「皆が咲先輩に暴力奮ってる動画、学校にバラしてテニス部を潰してあげる。」
「桜良っ、お前……。」
「……。」
「真田先輩は、ずーっと桜良の傍にいるんだよ?」
「くっ……。」
「桜良を裏切るなんて、許さない。」
「………言いたい事はそれだけか。」
「は?何強がってんの?」
「強がる?笑わせんな、強ぇんだよ。」
「あはははっ!何言ってんの!?あんたが強いのは力だけでしょ!?」
「そう思っていればいい。脳の無ぇ奴に何を話しても無駄だ。」
「馬鹿にすんのもっ、いい加減にしなさいよっ!」
「くくっ、ひでー顔。」
「あんたっ……。」
とうとう
化けの皮が剥がれやがったな。
怒りに狂った醜い顔。
いつものぶりっ子ちゃんが台無しだな。
演じるなら最後まで演じきれよな。
だが……。
こいつを叩き潰す為の準備が
ようやく始められる。
「……まぁ、いいよ。」
「開き直ったか。」
「明日の朝、その動画学校に送り付けるから。」
「………。」
「真田先輩、覚悟しといてね。」
バタンッ
「………俺達がして来た事の、報いか。」
「おい、真田。」
「………何だ。」
「心配するな。」
「何を言って……。」
「誰に盾突いたのか、思い知らせてやる。」
「片桐、お前……。」
「その変わり、他のテニス部の奴らの事は……お前が話をつけろ。」
「……。」
「これを使え。」
「何だ、これは。」
「ボイスレコーダー、東堂の猿芝居が録音されてる。」
真田は
再生ボダンを押す。
あの日、東堂が
手をカッターで切る前の所から
音声がハッキリと録音されている。
真田は驚いた様な顔をしている。
「これは……。」
「どこまで役に立つかはわからないが、多少の気付け剤にはなるだろ。」
「……礼を言う。」
「咲を、テニス部の奴らを守るんだろ?気合い入れろ。」
「無論だ。」
「ふん、良い面構えになったな。」
さぁ、東堂。
地獄に落ちるのは、お前だ。